証券会社で上場株式の取引を行っていた方が、お亡くなりになったと仮定します。もちろんですがその場合、相続人の方は被相続人が取引していた証券会社に対して相続手続きを行うことになりますが、四苦八苦しながら相続手続きを終え、金銭や配当金の受取りもすべて確認し、被相続人の取引口座を廃止します。

 

しかし・・・細心の注意を払って被相続人の取引口座を廃止したにも関わらず、後日なぜか証券会社から電話がかかってきて「被相続人のお金がまだ残っています」と言われることがあるのです。「えっ?そんな・・・残金はゼロだと確認したのに・・・」と不思議に思っても、実際にそのようなことが稀に起こるのです。

 

以前に当コラムでは「証券会社に預けてある少額の金銭もきちんと相続手続きしないと・・・」という表題で、相続手続き完了後に被相続人の配当金が振り込まれてくるケースをご紹介しました。

 

しかし今回は配当金の受取りもすべて確認しているので、そのようなことは起こらないはずなのです。しかしそれでもやはり被相続人の取引口座が廃止されてから後、たまにお金が湧いて出てくるケースがあるのです。

 

そしてもちろんですが、その湧いて出てきたお金を相続人が受取るためには、証券会社に対して相続人全員の相続手続きが必要になります。現実問題として、湧いて出てきた金額が高額なら嬉しいですが、ほとんどの場合は少額なので、相続人全員が「また相続手続きを行うのか・・・」とがっかりすることになります。

 

実はこのようなお金が湧き出る現象は、以下の要件が全部揃った時に発生します。

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  • ➀ 被相続人が特定口座を開設していた
  • ➁ 被相続人が年間の株式取引で損をしていた
  • ➂ 被相続人が株式数比例配分方式で配当金を受取っていた
  • ④ 被相続人の取引口座を廃止した

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ではなぜこのような現象が発生するのかというと、特定口座を開設している場合には「株式取引の譲渡損失」と「配当金」の損益通算が行われるからです。

 

実は「株式取引の譲渡損失」と「配当金」の損益通算は、株式の売却や配当金が支払われる都度行われるわけではなく、その年の年末にまとめて行われます。そして年末の損益通算を受けて、配当課税の還付が発生した場合、翌年に証券取引口座に入金されるのです。

 

ただし先の被相続人の例のように、特定口座を年内に廃止してしまった場合は、年末を待たずにその特定口座廃止日に損益通算が行われることになり、その結果として配当課税の還付が発生した場合に、還付金が被相続人の口座に入金されることになるのです。そういう意味では④の要件が無くても①②③の要件が揃えば、翌年1月に還付金が入金されることになります。

 

まあ・・・死亡した方の証券取引口座は廃止しなければなりませんから、このようなことが起こっても仕方ない面はあるのですが、少額の還付金のために相続人全員が、また相続手続きをしなければならないというのは、ちょっと酷ですよね。特に遺産分割協議で揉めた場合などはなおさらです。

 

この特定口座に関する還付金が湧き出てくるケースは、被相続人の1年間の取引内容までチェックしなければ、相続人が気付くことができないため、相続人の立場からすれば注意することさえ難しいのですが、このようなことが起こっても不思議ではないことは知っておかれても良いかもしれませんね。

 

※監修 廣田証券 https://www.hirota-sec.co.jp

 

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