皆様方は実際に相続が起こった場合、相続財産の中に「上場株式が含まれている」ということを、どうやって認識するでしょうか?例えば「親父はよく〇〇証券で株を買って損をしたと言っていた(泣)」というように、被相続人との会話でそれを認識している場合もあるでしょうし、証券会社から送られた大量の書類を見つけて、それに気づくこともあるでしょう。また証券会社の社名入りのカレンダーや粗品を被相続人の自宅で見かけたといったこともあると思います。
このように、被相続人が取引している証券会社が判明している場合の相続手続きは、基本的にはその証券会社に電話して担当者(担当部署)につないでもらい、相続が発生した旨を知らせれば、被相続人の取引口座をロックしてくれるので、その後に相続手続きを行うことになります。もちろんですが、被相続人が複数の証券会社と取引していた場合には、被相続人の上場株式や投資信託、現金等が残っている証券会社にはすべて同様の相続手続きを行うことになります。
しかし今後の相続で間違いなく増えていくのは、「被相続人がどこの証券会社で上場株式の売買をしていたのか相続人がわからなかった」といったケースです。当然ながら、このようなことが起こってしまうと、相続財産から上場株式等が漏れてしまうので、遺産分割協議書の作成や相続税の計算に大きな影響を与えてしまいます。
ではなぜこのようなケースが今後増えると予想されるのでしょうか。実は対面営業型(お客様と担当者が電話でやり取りするスタイル)の証券会社で取引をすると、取引報告書や取引残高報告書など様々な書類が、取引している証券会社から「郵便」で送られてきます。これなら相続人も取引証券会社を簡単に見つけることができます。
しかし最近はネット証券会社(お客様とインターネットでやり取りする証券会社)で株式取引をする人が増えてきました。そしてネット証券は、基本的に取引報告書などの書類を郵送せずに「Web交付(電子交付)」してしまうのです。そうなるとネット証券から被相続人の家に送られてくる郵送物がほとんどないため、被相続人と離れてくらしている相続人などは、証券会社と取引していることをとても把握しにくくなるのです。
またネット証券との取引はパソコンやスマートフォンを使って行われることから、中身を確認せずにそれらを解約・廃棄してしまった場合などは、なおさら被相続人の株式取引を発見することが難しくなってしまいます。現時点で発生している相続ケースでは、まだまだ対面営業型証券会社と取引している場合が多いのですが、今後は徐々にネット証券での相続手続きが増えていくと思われるため、相続の際には証券会社のステルス化に注意が必要です。
では被相続人が取引している証券会社がどうしてもわからない場合はどうしたら良いでしょうか?そのような場合は慌てずに一度、当センターにご相談なさってください。ケースによっては取引証券会社を探すお手伝いができるかもしれません。
※監修 廣田証券 https://www.hirota-sec.co.jp