「疎遠だった親戚から突然『あなたが相続人になりました』と手紙が届いた」

「会ったこともない叔父の相続について、弁護士から連絡が来た」

近年このようなご相談を数多く受けるようになりました。

突然、見知らぬ弁護士などから連絡があると、誰もが驚かれることです。

弁護士や司法書士などの士業からの突然の通知だけでもビックリするのに、まさか自分が遠い親戚の相続人になっていたと知らされると、当事者にしか分かり得ない複雑なお気持ちになられることと思います。借金を背負わされるのではないか?面倒なことに巻き込まれたりしないか?と恐怖心をお持ちになる方も多くいらっしゃいます。

そのようなことがあった場合、まずは慌てず冷静に確認・対応をすることが大切です。

急いで返事をするようにと連絡があったとしても、言われたままにすぐに手続きをしてしまうのは避けましょう。一呼吸おいて、まずは相続の専門家に相談してみることをおすすめします。

本コラムでは、落ち着いて手続きができるためになぜあなたに連絡がきたのか?そして、今後どのようなステップが待ち構えているのか、その対応と注意点をご案内します。

まず最初に何をしたらいい?

手紙や電話が来たからといって、すぐその場で相手の提案に同意したり、書類に印鑑を押したりしてはいけません。まずは、落ち着いて事実確認をすることが大切です。

事実確認のポイント

相続人の確定 本当に自分が相続人なのか確認しましょう。

戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)を取得することで、亡くなられた方(被相続人)とあなたの関係性を調べることができます。被相続人の生まれた時から死亡時までの連続した戸籍を集めることで、あなた自身がどの順位で相続人になったのかを確認することができます。

戸籍は、役所で取得が可能です。ご自分が相続人になった旨を窓口でお伝えいただき、故人の生まれた時から死亡時までの戸籍を取得したいとご相談ください。事前に行政のHP等で必要な書類を確認の上、窓口に行っていただくことをおすすめします。

財産の範囲の調査

相続が発生した場合、被相続人からの遺産は何か、不動産はあるのか、負債はないのかなどを把握する必要があります。

相手が被相続人と近しい関係だったり、身の回りのお世話をしていた場合などは、「遺産一覧」や「財産目録」が提示される場合もあります。しかし、提示された内容を鵜呑みにするのも危険です。相手に悪意がなくとも、財産をすべて把握しきれていないケースもあるからです。

被相続人と一緒に生活をしていた家族でさえも把握していない財産があるケースも実務では多々あります。同様に、把握していない負債があるケースもあるため、慎重に調査をすることが重要と言えます。

特にお子さんのいらっしゃらない方が亡くなられた場合には、被相続人のご兄弟のお子様が相続人になるケースが昨今増えております。相続人の皆様が被相続人の方とは疎遠であられ、財産把握自体が難儀することも多いのです。

相続人の確定・財産の調査については、弁護士や司法書士、税理士など相続専門の士業がそのお手続きのサポートをすることもできますので、ご本人での調査が難しい場合には、専門家にお任せするのも一つの手です。さいたま幸せ相続相談センターでは、ご自身で調査が難しい部分についてのサポートなど柔軟に対応をさせて頂いておりますのでお気軽にご相談ください。

財産を把握した後にすべきこと

財産の調査によって、遺産の全体像を把握することができたら、次に相続をするか否か、またその場合どの財産を相続するのか?を検討します。

1 マイナスの財産が多い場合

借金やマイナスの資産が多いことが分かった場合は、「相続放棄」が一つの選択肢となり得ます。相続放棄とは、被相続人の財産や借金などの権利・義務をすべて引き継がないために行う手続きです。負債などのマイナスの財産だけでなく、プラスの資産(不動産・現金など)も含めてすべての財産を放棄することになります。

被相続人の子供など第一順位の相続人が相続放棄をしており、相続順位が回ってきた場合なども該当します。(例:被相続人の子供たちが相続放棄をした場合、第二順位の親、第三順位の兄弟に相続権が移ります。)

相続放棄をする場合には、後から「やっぱり財産をもらいたい」と思っても絶対に撤回できないため、慎重に判断をしてください。

相続放棄をする場合の注意点
熟慮期間に注意

相続放棄をする場合、原則「相続があったことを知ってから3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申立を行う必要があります。期限が短いため、急いで手続きをしていただく必要があります。

疎遠だった被相続人の財産を把握するための調査には時間を要し財産の把握ができず、放棄すべきか判断できない場合もあります。そのような場合、法的な救済措置として、正当な理由がある場合には、熟慮期間の伸長を申し立てることができます。適切と判断されれば熟慮期間が1か月~3ヶ月程度延長されます。但し、家庭裁判所の判断によるもので、必ず認められるものではないので注意が必要です。また、必ず熟慮期間中に伸長の申し立てをする必要がありますので、期日にはご注意ください。

相続放棄できないリスクに注意

相続財産に手を付けてしまうと単純承認したとみなされ相続放棄ができなくなってしまう場合があります。例えば、預貯金を解約したり引き出したり、不動産の名義を変更するなどです。また、良かれと思って病院の費用等の負債を、被相続人の口座から支払うなどした場合も該当します。

遺産の整理を行った結果、負債が多い場合には、上記のような流れでお手続きを頂くと安心です。また、遺産分割協議で他の親族ともめたくない場合にも、相続放棄を選択される方もいらっしゃいます。その場合には、最初から相続人ではなかったことになるため、話し合いから完全に離脱することができます。但し、前述の通り一度相続放棄をすると撤回ができませんので、慎重に判断をしてください。

相続放棄の手続きについては、ご自身で家庭裁判所へ申立もできますし、不安なことがあれば、専門家へ相談していただくと手続きのサポートが可能ですので安心です。

2 プラスの財産が多い場合

相続放棄をしない場合には、他の相続人の方と協力し合って「遺産分割協議」を行う必要があります。

遺産分割協議の中で、財産をどのように分けるのか他の相続人と協議を行っていきます。

場合によっては、相手から「このような内容で遺産を分けたい」という提案を受ける場合もあります。

相手の提案をそのまま受けてもいい?

ステップ1で調査して分かった財産や法定相続分と照らし合わせ、納得のいく内容であるかを精査してください。遺産分割協議自体は、納得できない部分があるようでしたら、他の相続人の方と相談をしながら全員が納得できる分け方を模索する必要があります。

特に相続財産に不動産がある場合などは、簡単に分けることができないため遺産分割協議はより複雑化します。また、疎遠な親族の相続ということで、被相続人とのこれまでの関係性を踏まえての感情面での認識の差異がでやすいという点も難しいポイントです。被相続人の生活の面倒や介護をしてきたという気持ちや、逆に自分だけが疎遠にされていたといった気持ちなど感情面での不公平感を生みやすいとも言えます。

法定相続分通りでなくてもいいの?

遺産の分け方は、相続人の全員の合意があれば法定相続分通りである必要はありません。

相続人全員が納得していれば、どのような分け方であっても法的に認められます。その為、ご自身と相手の相続人が合意すれば、分け方は自由に決めることができます。これまでの経緯や関係性などを踏まえて、ご自身の納得できる分け方を決めていただければと思います。

相手の事情・背景を想像してみる

疎遠な親戚などから連絡が来ると、相手がどのような人柄の人物なのか分からないため、不安に思われたり警戒される方も多いと思います。ましてや、弁護士や司法書士といった士業から連絡がきているとすればなおさらです。

ご家族のご事情によりますが、連絡をしてきた親戚もいじわるで連絡をしてきた訳ではありません。ご相続手続きを進めるためには、必ず相続人全員の同意を得て遺産分割協議書を作成する必要がある為、やむにやまれぬ事情で連絡をしてきているとも言えます。相手の方も、突然の相続があった混乱の中、専門家に相談し、必死に戸籍を追って不安な気持ちの中あなたに連絡をしてきている方が大半です。

私どもコンサルタントは日々、そのような方の相談も受けていますので、双方の立場の気持ちを想像することができます。このように、相手もあなたと同じように不安な気持ちでいると思うと少し気持ちに余裕が生まれるかと思います。

当然、相手の言い分をすべて真に受けてしまうことは危険ですが、少し引いた視点で相手側の立場を想像してみることも、遺産分割をスムーズに進めるためのポイントの一つと言えます。

一人で決めるのは難しい場合には・・・誰に相談したらいい?

相手から提案された分け方が適切か判断したい、こちらの要望を伝えたい、といった形でもし遺産分割協議で悩まれた場合には、相続の専門家にご相談いただくと、第三者的な視点からアドバイスを受けることができます。また、ご自身で手続きを進める場合には、状況に応じて実際のお手続きについても依頼することが可能です。

主な相談先

・弁護士・・・遺産分割協議で揉めそう、交渉したいことがある場合には、代理人になれる弁護士に相談するとスムーズです。知らない相手に対する連絡などを一任できるので、煩わしい手間や相手と対峙する負担を軽減できる点が大きなメリットです。

一方で実際に弁護士が介入する場合には、弁護士費用が発生しますので、受け取られる遺産の額などを考慮して費用対効果を考慮していただくことが必要です。

・司法書士・・・相続人調査や財産の調査などを依頼することができます。司法書士は相手に対して交渉をすることはできませんが、法律的な知識や相続の経験をもって適切なアドバイスをすることができます。円満に書類の作成や名義変更をしたい場合には、司法書士の先生に依頼するのもよい選択肢ですが、相手とのやりとりはご自身で進めて頂く必要があります。

・相続コンサルタント・・・さいたま幸せ相続相談センターのように相続専門のコンサルタントに相談することも選択肢の一つです。また、さいたま幸せ相続相談センターのような相続専門の団体を最初のご相談先にしていただくと、事実確認の整理の段階からサポートが可能で、かつお悩みに合わせて弁護士や司法書士、税理士など適切な専門士業と連携して相談・解決に向けて協力できるので、なんども複数の方に相談をすることなくワンストップで対応ができる点でメリットがあります。

感情的にならず、冷静になることが大切

遺産分割と聞くと、骨肉の争いや遺産を巡って相続人と揉めるということを真っ先に想像してしまう方も多いと思います。会ったこともない方と遺産のことで関わるのは誰しもが不安だと思います。残念ながら揉めてしまう場合もありますが、実務の現場ではスムーズにお手続きが完了する場合も多くございました。

また、会ったこともない方の相続人になられた場合、多くの方が非常に複雑なお気持ちになられます。「会ったこともないので関わりたくない」「負債があったら怖い」「もしお金を受け取ることができるならありがたいけど、、、少し後ろめたい」「あまり関わりのない親戚とお金のことでやりとりするのは、憚られる」

遺産を受け取ることができるとすれば、当然期待をする部分はある一方で、関わりたくないと思うような複雑な心境になられるのは当然のことと思います。

それぞれの方にとってご家族の事情もことなり、さまざまな感情をお持ちになることでしょう。本音やモヤモヤを相談できる相続の専門家を見つけて、後悔のない最適な解決方法を見つけて頂ければと思います。


執筆:馬渕かなみ
監修:おがわ司法書士事務所 小川直孝 司法書士