「長男の嫁として長年義父母の介護を頑張ってきたのに、相続では何ももらえないと聞いた」
「長女である自分と、弟の嫁との間で、将来どちらがどれだけ財産を受け取るのか分からない」
相続の相談窓口には、こうした「長女」と「息子の嫁」の関係にまつわる相続時の不安の声が数多く寄せられています。本記事では長女と息子の嫁、それぞれの相続権の違いと、トラブルを防ぐための具体的な対策を2026年最新版として解説します。

「長女」と「息子の嫁」、相続人になれるのはどちら?
結論から言うと、実父や実母が亡くなられた場合、子である長女は法定相続人になれますが、息子の嫁はなれません。この違いを理解するために、まず法定相続人の範囲をあらためて整理しましょう。
法定相続人の範囲をおさらい
民法では、亡くなった方(被相続人)の財産を誰が相続できるかが明確に定められています。以下、法定相続人のルールについて改めて解説します。
- 婚姻関係にある配偶者は常に法定相続人になります。ただし、内縁や同性パートナーの方は法定相続人にはなれません。
- 法定相続人には順位があり、第1順位は子(子が亡くなっている場合は孫などが代襲相続)、第2順位は父母などの直系尊属、第3順位は兄弟姉妹です。上位の順位の人がいる場合、下位の人は相続人にはなりません。
- 長女は被相続人と血縁関係にある「子」のため、第1順位の法定相続人になります。結婚して姓が変わっていても実の子である以上、相続権は失われません。
- 息子の嫁(長男や次男などの配偶者)は、義父母とは血縁関係がありません。そのため、法定相続人の順位には含まれず、義父母が亡くなっても遺産分割協議に参加できません。
つまり「長年義父母と同居し、介護に尽くした息子の嫁」であっても、義父母の死去に伴う相続では財産をもらえないのです。
息子の嫁が財産を受け取るための4つの方法
日本の民法では、息子の嫁(子の配偶者)は法定相続人には含まれません。しかし、息子の嫁にしっかりと財産を遺す方法は決してゼロではありません。以下の4つの方法を活用することで、財産を渡すことが可能です。本章で詳しく解説します。
遺言書(遺贈)
義父母が生前に「遺言書」を作成し、その中で息子の嫁に財産を渡す旨を明記する方法です。これを「遺贈(いぞう)」と言います。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」などの形式があり、要件を満たさないと無効になる可能性があるため注意が必要です。形式不備が起きにくい公正証書遺言が安全とされています。
作成時には他の相続人の遺留分(いりゅうぶん)に配慮する必要があり、専門家と相談しながら作成することがおすすめです。
生前贈与
義父母から生前に、財産を息子の嫁へ贈与しておく方法も検討できるでしょう。
- 年間110万円までは贈与税の基礎控除内で贈与可能です(暦年贈与)。
- 高額な財産を一度に贈与する場合は贈与税が発生するなどの注意点があるため税理士に相談しながら計画的に行うことがおすすめです。
養子縁組
義父母と息子の嫁が「養子縁組」をすることで、嫁を法律上の子(法定相続人)にする方法です。
- 養子縁組が成立すると、実子と同等の相続権を持つこととなり、法定相続人が増えるため相続時には基礎控除額や生命保険金の非課税枠も増加します。相続税の2割加算も対象外です。
- 一方で、他の相続人との関係性や、相続分が変わることによる家族間のトラブルの可能性もあるため、慎重な検討が必要です。
- 節税目的だけの養子縁組は税務上否認されるリスクもあるため注意が必要です。
- 息子と息子の嫁が離婚したとしても、養子縁組は自動的に解消されません。
養子縁組は相続税の節税効果もありますが、被相続人がお亡くなりになる直前に結ばれた養子縁組は税務署が調査をするケースもあるため、注意が必要です。
特別寄与分の請求
上記1~3は生前に行う必要があるものですが、特別寄与分の請求は相続開始後に行うものです。
2019年の民法改正により、特別寄与分の請求が新設されています。相続人以外の親族(息子の嫁など)が、無償で被相続人の療養看護などを行い、その結果として被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした場合、相続人に対して特別寄与者として金銭(特別寄与料)を請求できるものです。
- 請求先は相続人であり、遺産分割協議に参加できるしくみではありません。
- 特別寄与料を認められるには、一定以上の労力や継続性が必要とされ、単なる同居や通常の家事手伝い程度では認められにくい傾向があります。
- 特別寄与分の請求には期限があり、相続の開始および相続人を知った時から6か月以内、または相続開始から1年以内に請求する必要があるため、期限に注意が必要です。
特別寄与分を求めるためには複雑なルールや請求金額の計算などが必要となるため、早めの準備がおすすめです。
長女と息子の嫁の相続で特に気をつけたい2つのケース
長女と息子の嫁は、相続権の有無などを発端に相続時に揉めてしまうケースが少なくありません。しかし、家族間の感情的な対立は相続手続き後にも長期にわたって不満が残ってしまいやすく、できる限り避けることがおすすめです。そこで、本章では「特に気をつけたい2つのケース」について紹介します。
被相続人の介護を息子の嫁が担っていたケース
「介護は長男の嫁がしていたのに、財産は長女や長男が受け取る」という状況は、家族間の感情的な対立を招きやすいため注意が必要です。長女自身も同居や介護に関わっていた場合は、長女の「寄与分」(相続人としての取り分の上乗せ)と、嫁の「特別寄与料」(相続人以外への金銭請求)は法律上まったく別の制度であることを理解し、それぞれの貢献度を切り分けて整理する必要があります。
こうしたケースへの対策については書籍「長女と嫁が相続でやるべき5つのこと」から家族信託についてまとめたコラムで詳しく紹介していますので、あわせてご参照ください。
遺留分と遺言書のトラブルケース
義父母が「お世話になった嫁に多めに残したい(遺贈)」と遺言書を作成しても、長女や他の子がいる場合は遺留分に注意が必要です。
遺贈の内容が遺留分を侵害していると、嫁が受け取った財産に対して遺留分侵害額請求がなされる可能性があり、結果的に長女と嫁の間で新たな争いが生まれてしまうおそれがあります。遺言書を作成する段階で、どのような考慮が必要か十分に検討する必要があるでしょう。
以下記事もぜひご参考ください。
トラブルを防ぐための相続対策
相続時のトラブルを避けるためには、生前からしっかりと相続対策を行うことがおすすめです。本章では知っておきたい相続対策のヒントをわかりやすく紹介します。気軽に始められる対策もありますので、ぜひご参考ください。
義父母自身が元気なうちに、財産の分け方について家族で話し合っておく
家族で集まり、財産分けの方針を気軽に相談することがおすすめです。特に同居や介護の貢献度(寄与分)をどう評価するか、思い入れのある実家や土地を誰が引き継ぐのかを事前に共有しておきましょう。
元気なうちに本人の意向を確かめ、親族間で理解を深めておくことは、将来の相続争いを防ぐ高い効果があります。
トラブルが起きにくい遺言書を作成する
生前における家族間の話し合いが難しい場合でも、長女や息子の嫁に配慮した遺言書を残しておくことで相続対策を行っておくこともおすすめです。
遺言書は付言事項に「なぜこのような遺言書にしたのか」を書き添えることもでき、円満な相続につなげることができます。遺留分に配慮し、不動産などもめやすい財産を誰に渡すか書き残しておけば、遺言書に沿って相続をスムーズに進めることが可能です。
贈与を活用する
生前贈与を活用することで、将来の相続財産そのものを減らしつつ、残したい人に確実に財産を渡すことができます。相続人ではない息子の嫁への生前贈与は、原則として民法上の「特別受益の持ち戻し(相続人間の公平を図る制度)」の対象にはなりません。
また、相続税の計算上には別のルールもあり、死亡前7年以内(2024年の税制改正で3年から段階的に延長)の暦年贈与は「生前贈与加算(生前贈与の持ち戻し)」として相続税の課税対象ですが、こちらも相続人以外の贈与は対象外です。ただし、遺言書があり遺贈によって財産を取得した場合には対象となるため注意が必要です。
生前から相続の専門家へ相談する
相続手続きや対策は、親族間の感情も複雑に絡むため、当事者同士だけでは冷静な話し合いが進まないことも少なくありません。そこで、生前から相続の専門家に相談することがおすすめです。
知っておきたい遺留分や特別寄与料、税負担の軽減など法律・税務の観点から最適なプランを助言してもらえます。また、第三者の立場から客観的なアドバイスをもらうことで、冷静に話し合えるケースも少なくありません。
長女と嫁の相続に関するよくある質問
長女と息子の嫁との間では、よく相続に関する悩みが発生するものです。そこで、本章ではよくある質問をピックアップし、わかりやすくお答えします。
また、お悩みや知っておきたい対策については数多くの事例に対応してきた経験をもとに、弊社佐藤が【長女と嫁が相続でやるべき5つのこと】という本も執筆していますので、ぜひご参考ください。
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嫁に行った長女に相続権はありますか?
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あります。 婚姻によって苗字が変わっていたり、実家を出て他家に嫁いでいたりしても、被相続人(亡くなった親)の実子であることに変わりはありません。法律上、未婚の子供や同居している子供とまったく同じ順位・割合で法定相続権を有します。
また、遺言書などで「長女には一切財産を渡さない」と残されていた場合でも、長女には法律上最低限保障された遺産の取り分である「遺留分」を請求する権利(遺留分侵害額請求権)が認められています。
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相続前ですが長女と息子の嫁の距離感に悩んでいます
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介護の分担や将来の相続への関わり方について、お互いの役割や気持ちを早めに言葉にしておくことが、誤解や不公平感を防ぐ第一歩です。第三者である専門家を交えて話し合う場を設けてみることもおすすめです。
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私は嫁いだ長女ですが親の財産は相続放棄が必要ですか?
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嫁いだことは相続放棄をする理由にはならず、ご両親が亡くなられた際には財産を受け取れます。財産よりも借金などの負債が多い場合や、実家の財産分割に関わりたくない事情がある場合、遺産分割協議に参加したくない場合は、家庭裁判所への相続放棄の申述を検討することになります。
まとめ
「長女と嫁、それぞれにどう財産を残せばいいか分からない」「今のうちに家族で何を話し合っておくべきか知りたい」という方は、ぜひ「さいたま幸せ相続相談センター」へご相談ください。相続相談実績2,000件超のノウハウをもとに、弁護士・税理士・司法書士などの専門家がワンストップで、丁寧にサポートいたします。無料相談も受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
執筆:岩田いく実
監修:司法書士NK法務事務所 中嶋英憲 司法書士






