皆さんこんにちは。
相続コンサルタントの久保田です。

以前「令和8年度税制改正大綱で相続対策はどう変わるか?」で紹介した令和8年度税制改正大綱が2026年3月31日に成立しました。


詳しくはこちらのコラムをご一読ください。


今回の税制改正によって、令和9年1月1日以降に相続・贈与で取得する財産の評価は改正後のルールに沿って相続税評価を行うことになります。

昨年12月に令和8年度税制改正大綱が公表されてから、税理士の見解を伺う機会が増え、具体的な状況が見えてきましたので、今回はケースごとの対応策を考えてみようと思います。




ケース1:収益不動産(貸付用不動産)を購入する場合

収益不動産購入は、これまで相続対策としてよく利用されてきた方法ですが、令和8年度税制改正によって、今後はやや利用しにくくなってしまいました。

一般的に、収益不動産を購入した場合、相続税評価は購入価格の40%ほどまで減少するので、大幅に相続税評価を減少させたい方にとっては、大きな効果が得られる相続対策として利用されてきました。

税制改正以降は、購入後5年以内に相続が発生した場合に、時価(取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額)の80%で相続税評価をする、いわゆる5年ルールが適用されることになります。

また、令和8年度税制改正大綱では、貸家建付地評価(第三者へ貸している建物が建っている土地の評価を80%前後に減額できます。)や貸家評価(第三者に貸している建物の評価を70%に減額できます。)については記載がないので、引き続き適用できると時価の65%ほどまで減額できることになります。

従来より相続税評価の減少幅が減ってしまうものの、それでも時価の20%は相続税評価が減少し、貸家建付地評価・貸家評価が適用できれば更に評価減になりますので、相続対策で購入される他の資産と比較すれば、まだまだ相続対策効果は大きい資産かと思います。


ケース2:収益不動産を建築するケース

所有している土地にアパートやマンションといった収益不動産を建築するケースでも5年ルールが適用されることになります。

新たに土地を購入して建物を建築するケースでは、収益不動産を購入するケースと同様に、土地の購入や収益不動産建築から5年間は、時価の80%で相続税評価を行うことになります。

一方で、5年以上所有している土地に収益不動産を建築するケースでは、土地は従来のルール(路線価)で評価され、建物は5年ルールで評価されることになります。

※新築した建物については、「当該改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用しない。」とされています。

5年以上所有している遊休地への収益不動産の建築は、ある程度有効な相続対策といえるかと思いますが、これまで遊休地であり続けた理由があると思います。

収益不動産を建築すれば相続税が減るのは事実ですが、それ以上にこれまで遊休地に建築をしなかった理由を冷静にご判断いただきたいと思います。


ケース3:不動産小口化商品を購入するケース

以前のコラムでも記載しましたが、不動産小口化商品を利用した相続税対策は封じ込められてしまったといえます。


詳しくはこちらのコラムをご一読ください。


5年ルールからも対象外となり、取得時期に限らず時価評価を行うことになりましたので、株や投資信託といった他の金融資産と同様の取り扱いになったと考えています。

税制改正によって相続税対策としての利用が封じ込められたとネガティブになってしまいますが、不動産小口化商品自体が悪いものというわけではなく、資産価値の高い高額な不動産の細分化した権利を購入できる投資商品としては有用な資産かと考えていますので、相続税対策以外の目的での購入であれば、引き続き検討する価値のある投資商品だと思います。


具体的な対応策の3つのポイント

3つのケースに分けて令和8年度の税制改正をおさらいしましたが、具体的な対応策を3つのポイントで考えてみようと思います。


早期から相続対策を始める

相続発生前の駆け込みを抑制するために5年ルールが設けられましたが、相続の5年前から所有している収益不動産は、従来通りのルール(土地:路線価、建物:固定資産税評価)で評価されますので、早期から相続対策を始めることがシンプルかつ効果的な対策になります。

これまで、相続対策といえば80代や90代の方が行うものといったイメージが強かったかもしれませんが、相続対策が必要になりそうな方は60代・70代でも他人事と考えず、お元気なうちからご家族のことを考えて相続対策を行っていただくことをお勧めします。

60代・70代の方ですとお子様が若い方も多いかと思いますので、相続税対策だけでなく、ご自身の財産をどのようにお子様方に残していくかを考え始めていただく良いきっかけになるかと思います。

また、相続対策全般にいえることですが、早期に相続対策を始めていただくことで、利用可能な対策が増えることも事実です。

わかりやすい例では、若くお元気なうちに生命保険に加入すると、一時払い以外の保険料の支払いも可能ですし、投資も兼ねた生命保険であれば資産形成にも役立ちます。

お元気なうちからご自身の相続について考えるのは違和感があるかもしれませんが、今回の税制改正で、皆様の相続対策の考え方も変わるかもしれません。


収益不動産以外を購入・建築する

今回の税制改正の相続・贈与で触れられた不動産は、収益不動産に限られています。

裏返せば、収益不動産以外は従来通りのルールを継続できることになります。

そのため、自宅を建て替える・ご自身の自宅を買い替える・お子様の自宅を購入する・お子様の自宅を建築するといった不動産の購入・建築は5年ルールに縛られず、従来通りの相続対策効果が得られます。

並行してお子様への遺産分割も検討いただきたいものの、相続対策の一環として二世帯住宅を建築して同居すると、土地は路線価評価に加えて、小規模宅地等の特例で大幅に評価を減少できることになります。

遊休地や収益性の低い不動産を所有している場合は、相続後にお子様方が苦労する場合もあるので、そのような不動産を売却してお子様の自宅を購入することも検討しても良いと思います。

注意点としては、収益不動産以外は従来のルールで相続税評価を行えるため、空き家や空き地でも同様の効果が得られるのですが、維持管理コストがかかり続けるため、将来間違いなく価値が上がる!(そのような不動産はほとんどありませんが…)と判断できる空き家や空き地以外は、紹介されても購入しないようにしてください。


相続時精算課税制度を利用する

冒頭で記載したとおり、今回の税制改正は令和9年1月1日以降の相続・贈与から適用されます。

そのため、本当にお急ぎであれば、すぐに収益不動産を購入して、相続時精算課税制度を利用した贈与を行えば、従来通りのルールで収益不動産を評価して、相続税を計算することができます。

ここでの注意点としては、焦って『負』動産を購入しないことに尽きます。

これまでも、収益不動産業界では、消費税増税・融資の締付・海外不動産の減価償却の税制改正といった様々な駆け込み需要を要因として、冷静な状況では『負』動産になることが目に見えている不動産を購入してしまった方が大勢いると耳にします。

購入する収益不動産を間違えてしまうと、削減できる相続税よりも持ち続けるコストのほうが大きくなったり、お子様が売却しようとした際に購入金額よりも大幅に減額しないと売れない不動産だということが発覚したりと、結果的に購入しないほうが良い不動産だったと後悔することになりかねません。

今回も「収益不動産を購入して、すぐに相続時精算課税制度を利用した贈与が相続税対策になるので今すぐ収益不動産を買いましょう!」といった営業を受ける方が出てくるかもしれませんが、まずは冷静になり、その収益不動産の購入がお子様方の足かせにならないかをご判断いただきたいと思います。

さいたま幸せ相続相談センターでは、相続税に関するご相談を随時承っておりますので、ご興味をお持ちいただけましたら、まずは一度お気軽にご相談ください。


監修:税理士法人ブライト相続 戸﨑貴之 税理士