皆さんこんにちは。相続スタッフの成田です。
以前こちらのコラムで、相続した実家が空き家になった場合の固定資産税についてお話ししました。
今回は兄弟で実家を相続し、共有名義にした際の固定資産税についてお話ししようと思います。
「実家を兄弟で相続したが、固定資産税のことで揉めている」という話は少なくありません。
- とりあえず兄弟で共有名義にした
- 実家が空き家になっている
- 毎年、固定資産税を支払い続けている
上記のような状況の中で、固定資産税をきっかけに兄弟仲がぎくしゃくしてしまうケースも見受けられます。
このコラムでは、兄弟で相続した共有名義の家で起こりやすい固定資産税トラブルについてわかりやすくお話ししようと思います。
なぜトラブルが起きやすいのか、そしてもめないために知っておきたいポイントを解説します。

人が住んでいる家と住んでいない家で固定資産税は変わるの?
結論から言うと、人が住んでいる家と人が住んでいない家(空き家)の固定資産税が変わることはありません。
固定資産税は「実際に人が住んでいるかどうか」ではなく、土地や建物に対して課税されます。
そのため、相続した実家が空き家であっても、固定資産税は原則としてかかり続けます。
共有名義にすると固定資産税は安くなる?よくある誤解
勘違いされている方が多いのですが「兄弟で共有名義にすれば、固定資産税は安くなる」と思っている方が一定数いらっしゃいます。
結論から言うと、共有名義にしただけで固定資産税が安くなることはありません。
固定資産税は【誰が所有しているか】や【何人で所有しているか】ではなく【土地や建物そのものの評価額】に基づいて課税されます。
そのため、単独名義でも、兄弟2人・3人の共有名義でも、不動産が同じであれば固定資産税の総額は同じです。
例えば、固定資産税が年間10万円かかる家があるとします。
これを兄弟2人で相続し、それぞれ5万円ずつ負担すると「自分が支払う金額が減った=固定資産税が安くなった」と感じてしまうかもしれません。
しかし実際には、固定資産税そのものが安くなったわけではありません。
あくまで、10万円という固定資産税を兄弟で分けて負担しているだけであり、家そのものに課せられる固定資産税の金額は、単独名義でも共有名義でも変わらないのです。
相続した共有名義の実家の固定資産税の負担割合はどう決める?
固定資産税の負担を決める方法は2つ
相続によって実家を共有名義で引き継いだ場合、固定資産税を誰が、いくら負担するのかを決める必要があります。
この負担割合の決め方には、主に次の2つの方法があります。
- 共有持分の割合に応じて負担する方法
- 共有者同士で話し合って決める方法
もっとも分かりやすく、一般的なのは「共有持分に応じて負担する方法」です。
ただし、たとえば「長男が実家に住み続けているのに、次男も固定資産税を払っている」といったケースでは、実際に使っていない側が不公平に感じることも少なくありません。
こうした不満が積み重なると、将来的に兄弟間のトラブルにつながることもあります。
そのため、共有者全員が納得できる形で負担割合を決めておくことが、円満な相続後の関係を保つうえで大切です。
原則は「共有持分の割合に応じて負担する」
先ほどお話ししたとおり、固定資産税の負担割合については、まず共有持分の割合に応じて負担するというのが原則です。
共有持分とは、共有名義となっている不動産について、それぞれがどのくらいの割合で所有しているかを示すものです。
民法第253条では、「各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。」と定められています。
固定資産税も、民法253条の『共有物に関する負担』に含まれると解釈されています。
たとえば、年間の固定資産税が40万円で、兄弟3人が次の持分で共有している場合、負担額は次のようになります。
- 長男(負担割合50%):20万円
- 次男(負担割合40%):16万円
- 三男(負担割合10%):4万円
ここで注意したいのは、実際に誰が住んでいるか、どれだけ使っているかは関係ないという点です。
たとえ長男だけが実家に住んでいたとしても、持分を持つ次男や三男の固定資産税の支払義務がなくなるわけではありません。
このような場合「使っていないのに税金を払っている」「使っている人の負担が少ない」といった不満から、兄弟関係が悪化してしまうケースも珍しくありません。
こちらのコラムでは、具体的な事例を交えながら「子ども2人、遺産は自宅のみ」の相続で起こりうるトラブルやその解決方法についてご紹介いたします。ぜひご一読ください。
全員の合意があれば負担割合を見直すこともできる
共有不動産の管理では、「自分だけが実家に住んでいるので、固定資産税は多めに負担したい」と考える方もいます。
このような場合、共有者全員の合意があれば、原則とは異なる負担割合を設定することが可能です。
そのため、たとえば、
- 実家を主に使っている人の負担を多くする
- 一時的に収入が少ない人の負担を軽くする
といった、事情に応じた柔軟な調整も認められます。
実際の使用状況に合ったルールをあらかじめ決めておくことで、後から揉めるリスクは大きく下がります。
話し合って決めた内容は、覚書などの形で書面に残しておくことをおすすめします。
ただし注意点として、「子どもが住んでいる家の固定資産税を親がすべて負担する」といったケースでは、負担分がみなし贈与と判断され、贈与税がかかる可能性もあります。
税金面の影響については、事前に専門家へ相談しておくとよいでしょう。
共有名義でも、納税通知書は「代表者」に届く
ここで知っておきたい、実務上とても大切なポイントがあります。
それは、不動産が共有名義であっても、固定資産税の納税通知書は共有者全員に届くわけではないという点です。
実際には、納税通知書は共有名義の代表者として届出している1人にだけ送付されます。
たとえば、兄弟で実家を相続し共有名義にした場合でも、代表者になっている兄のもとにだけ納税通知書が届きます。
その結果、通知書を受け取った人が、いったん固定資産税を全額立て替えて支払うという状況になりやすいのです。
さいたま市でも、共有資産については共有者の一人を代表として納税通知書を送付しています。もし、代表者を変更したい場合は、市町村に所定の届出すると変更可能です。
※参考 さいたま市 固定資産税に関するよくあるお問い合わせ
「通知書が届く人=全額負担」ではない
納税通知書が代表者に届いているからといって、その人が固定資産税を全額負担しなければならないわけではありません。
あくまで、固定資産税の負担義務は共有者全員にあり、持分割合に応じて負担するというのが原則です。
しかし、「納税通知書が自分に届く=自分が払うもの」と誤解したまま支払いを続けてしまい、あとから兄弟に請求しづらくなってしまうケースも少なくありません。
共有名義×固定資産税×兄弟トラブルの典型例
【ケース1】空き家なのに、なぜ自分も固定資産税を払うの?
相続した実家は空き家で、誰も住んでいない。
それでも固定資産税は毎年かかります。
すると、
「使っていないのに払うのはおかしい」
「管理している人が払えばいいのでは?」
といった不満を兄弟の一人が言い出すことがあります。
一方、草刈りや管理をしている方の兄弟は、「何もしないのに固定資産税の負担まで拒否される」と感じ、関係が悪化してしまいます。
【ケース2】兄だけが実家に住んでいる場合の固定資産税
共有名義の実家に、兄弟のうち一人だけが住み続けているケースもトラブルになりやすいです。
- 名義は兄弟共有
- 住んでいるのは一人
上記の場合、固定資産税を「全員で払うべきか」「住んでいる人が多く負担すべきか」で意見が分かれ、揉めてしまうケースが多いです。
【ケース3】固定資産税を理由に、兄弟の同意なく動いてしまった
「固定資産税がもったいないから」という理由で、他の兄弟の同意を得ないまま、
- 売却
- 解体
- 活用の話を進める
といった行動を取ってしまうケースもあります。
共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ処分できません。善意であっても、結果として大きな兄弟トラブルにつながることがあります。
共有名義の家は、固定資産税以外の問題も抱えやすい
共有名義の不動産は、
- 売却できない
- 活用できない
- 話し合いが進まない
といった問題を抱えやすく、結果として空き家のまま放置されてしまうケースが少なくありません。
放置が続くと、固定資産税だけでなく、近隣トラブルや行政指導といった別のリスクも生じます。
こちらのコラムでは、空き家を放置した場合、特定空き家に指定されると固定資産税が6倍になってしまったケースについて詳しくお話ししています。
ご興味のある方は、ご一読ください。
兄弟でもめないために、早めに整理しておきたいこと
共有名義を選択する場合でも、次の点を早めに整理しておくことをおすすめしています。
- 固定資産税を誰が、どの割合で負担するのか
- 立て替えた場合の精算方法
- 将来、売却や共有解消をどう考えるのか
これらを曖昧にしたままにすると、時間が経つほど兄弟関係の修復が難しくなります。
こちらのコラムでは、介護していない兄弟が相続権を主張したケースについての対処方法をご紹介しております。ぜひ一読ください。
まとめ
共有名義にすれば固定資産税の負担が軽くなる、と考えてしまいがちですが、実際には名義を分けても不動産に課される固定資産税の総額が下がることはありません。あくまで負担を分け合っているだけで、固定資産税の金額そのものは変わらないのです。
また、固定資産税の納税通知書は代表者一人にまとめて届くため、「誰がいくら払うのか」「立て替えた分をどう精算するのか」といった点で、兄弟間の行き違いや不満が生じやすくなります。最初は些細な違和感でも、時間が経つにつれて大きなトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。
だからこそ、共有名義にした不動産については、できるだけ早い段階で話し合い、負担や今後の方針を整理しておくことが、家族関係を守るうえで大切です。
共有名義・固定資産税・兄弟間の問題で悩んだときこそ、一人で抱え込まず、専門家に相談することが解決への近道になります。
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執筆:成田春奈
監修:税理士法人ブライト相続 戸﨑貴之 税理士







