皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

 

相続財産のうち、不動産がある場合、相続人様のどなたが相続するか、相続した後にどの様に利用してくか、相続手続きの中でも悩むことが多いことかと思います。

不動産の価値は高額なものが多く、相続人様のどなたかお一人が単独で相続してしまうと、他の相続財産とのバランスが悪くなり、相続人様間において不公平感が発生する原因になってしまうことがあります。

そのため、今回は相続不動産の分け方について説明したいと思います。

 

1.どなたかが単独で相続する

一番わかりやすい分け方ですが、上記の通り、他の相続人様とのバランスが取りにくく、不公平感が出やすい分け方かもしれません。

相続不動産と他の相続財産とでバランスが取れる財産構成であれば、Aさんは不動産を、Bさんは金融資産をといったように公平な分け方もできるのですが、なかなかうまく行く方は少ないのではないのでしょうか?

加えて、不動産の価値にも人によって考え方の差が出てきます。

不動産の価格といっても、一物四価(固定資産税評価額、相続税評価額、地価公示価格、実勢価格)といわれるほど、状況によって価値が異なります。

実勢価格も。買主様や売買条件によっても大きく異なり、一概に「この不動産の価値は〇〇万円です」とは言い切れないため、他の相続財産とのバランスが取りにくい一因だと思います。

一方で、不動産を相続する方にとってはプラスばかりではなく、不動産を維持するためのコストや手間もかかることで、相続の中での不動産の価値の幅が大きくなっていると思います。

どなたかが単独で相続する場合、相続人様の間で不動産の価値を統一できるか、もしくは不動産をほしい方がお一人でその他の相続人様も公平な分割を希望していないといった限定的な状況であれば、後々揉めることが少ないかと思います。

 

2.不動産の権利を共有して相続する

不動産の権利は分割して相続することもできます。

法定相続分で共有持分を設定して分割することで公平な分割ができる方法の一つです。

ただ、基本的に当センターでは不動産の共有はお勧めしていません。

相続の中では公平な分割ができるものの、相続が終わった後、不動産の維持管理をする中で、都度、共有者皆様で不動産の方針をまとめる必要があり、トータルで見ると、実は手間がかかってしまう方法です。

例えば不動産を売却するときに、共有者の中でどなたかお一人でも売却に反対する方がいる場合は売却が難しくなりますし、どなたかお一人が不動産に住む(利用する)場合には、他の共有者様がご自身で利用できない不公平感を賃料等での調整が必要になることもあります。

また、ご兄弟での共有であれば、皆様の意見を統一しやすいのですが、世代が進み甥姪やいとこ同士でのお話し合いとなると、より相続不動産に関する考え方が多様になり意見の統一が難しくなることが多いと思います。

そうなってしまうと、「不動産はあるけど何もできない」「不動産の権利を誰が持っているかわからない」といったような負動産になることも多いので、よほどの事情がない限り不動産の共有は避けていただくと良いと思います。

 

3.遺産分割協議で代償分割する

遺産分割協議の中では、『代償分割』と『換価分割』という分け方があります。

まず『代償分割』は、相続財産のうち、分けにくいものの価値を相続人様の中で統一して、その相続財産を受け取る相続人様が、受け取らない相続人様に対して、固有の財産から現金等の代償金を支払い、相続人様ごとに受け取る相続財産の価値を調整する分け方です。

代償分割を行うことで相続財産を受け取る方はその相続財産を自由にできますし、相続財産を受け取らない方もご納得行く金額をもらうことで公平感を保てる分け方のため、相続不動産の遺産分割協議でよく利用される分け方です。

ただし、上記の通り基本的には代償分割の対象の相続財産を受け取る方の固有財産から、その価値に見合う代償金を支払う必要があるため、対象の相続財産の価値をいくらで統一するかを調整するとともに、固有財産で支払いをするための資金繰りが必要になります。

相続人様の間で代償分割の対象の相続財産の価値を統一するため、相続財産を受け取る方は価値を低く・受け取らない方は価値を高くとそれぞれ相反する意見になりやすい分け方になりますので、相続人様間で揉めてしまっている状況では避けた方が良い分け方かもしれません。

とはいえ、代償分割は分けにくい相続財産を公平に分ける方法ですので、諦めずご検討いただきたいと思います。

 

4.遺産分割協議で換価分割する

次に『換価分割』は対象の相続財産を売却して、お手元に残った現金を相続人様で分ける方法です。

こちらも相続人様間で相続財産を公平に分けるための方法ですが、『代償分割』とは対象の相続財産を売却する違いがあります。

相続不動産でいえば、相続財産の中に不動産があるけれど、相続人様全員が相続不動産をいらないと考えている場合に利用しやすい分け方です。

第三者に売却するため、相続人様間での価値の捉え方の違いも起こりにくいですし、現金を法定相続分等の分割割合で分けることで不公平感も出にくいのではないでしょうか。

一方で『換価分割』のデメリットは、対象の相続財産を売却してしまうことがあります。そのため、相続不動産を利用したい相続人様がいる場合には利用できない分け方になります。

また、換価分割を行う場合は、売却した現金を一定以上受け取る相続人様全員が譲渡所得税申告を行う必要があります。

相続人様が大人数の場合は、譲渡所得税申告費用の総額が高額になり、思ったよりも手元に現金が残らない状況も出てくるかと思いますので、ここにも注意していただきたいと思います。

 

5.まとめ

今回は相続不動産の分け方について説明をしてみました。

状況や相続人様の考え方にあった分け方をお選びいただきたいと思いますが、やはり不動産の共有はお勧めできません。

遺産分割協議でお話し合いが進まない・揉めてしまったというご相談をお受けすることもありますが、遺産分割協議が成立するまでは相続財産が共有になっていることから起こるお悩みだと思います。

相続不動産を共有にする場合、遺産分割協議は成立するかもしれませんが、その後共有にした相続不動産を手放すまで、遺産分割協議と同様に共有者様全員で話し合い意見を調整する必要が出てきます。

相続不動産の分け方として『代償分割』『換価分割』をご紹介しましたが、それぞれの分け方の中でも詳しく検討する内容が多いので、相続不動産の分け方でお困りの際は当センターまでお気軽にご相談ください。

 

監修:税理士法人トゥモローズ 高畑光伸 税理士

 

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