皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

 

 相続対策を考えていく中で、遊休土地の活用や既存賃貸物件の建替え・リノベーションといった不動産の有効活用が、相続対策として有効になるケースがあります。賃貸物件を所有することで、相続税の節税対策になったり、『負動産』を魅力のある不動産に改善することで、次世代への承継がスムーズになったり、分割対策になったりと、一石三鳥・四鳥にもなる対策なので、相続対策の一つとしてご検討いただくことをお勧めしています。

『不動産有効活用』と言われても、何をどのように進めたら良いか、なかなかイメージがわきにくい方もいらっしゃると思います。そこで、不動産有効活用について、全体像を確認しながら、その考え方を数回に分けてご説明したいと思います。

 

1.不動産有効活用の目的

 まずは、不動産有効活用の目的を考えてみましょう。大きな目的として、収益性を改善させる(収益を得る)ことが挙げられます。加えて、既存の賃貸物件をご所有の場合は、建物の老朽化の改善や、遊休地をご所有の場合は、節税対策も目的になります。

また、収益には繋がりませんが、遊休地にお子様のご自宅を建築することも不動産の有効活用となります。ご家族やご資産の状況で不動産有効活用の目的は異なりますが、賃貸物件を建築する場合は、その土地・建物・エリアの特性を充分に把握していただき、収益性を得られる賃貸物件を建築することが最重要課題になるかと思います。

 確かに、遊休地にアパートやマンションを建築することで、相続税対策にはなりますが、賃貸需要が無いエリアに賃貸物件を建築してしまうと、節税できた相続税以上に建築費や建築後の維持管理費といったコストがかかってしまうこともありますので、賃貸物件を建築する場合は、相続税節税効果だけでなく、しっかりと収益を得られる物件になるかを検討してください。

 

2.不動産有効活用の方法

 目的がはっきりした後は、その目的を叶えられる方法を探していきます。上でもおおまかに記載しましたが、不動産の有効活用は大きく分けて『①ご自身で使う』『②第三者に貸す』『③売却する』の3つになります。

 

  • ①ご自身で使う

 こちらはイメージがしやすいかと思います。ご自身やご家族のご自宅として利用する、お仕事で利用する、その他にも物置・駐車スペース・家庭菜園といった利用方法が考えられます。収益は得られないものの、ご自身やご家族の状況を見て、不動産有効活用の一つとしてご検討いただくと良いと思います。

 

  • ②第三者に貸す

 第三者に貸す方法として、アパート・マンション、駐車場・駐輪場、トランクルーム…と様々な方法があります。第三者に貸して収益を得る以上、その不動産やエリアの特性を充分に理解していただき、最善の活用方法をお選びいただくことをお勧めします。

 

  • ③売却する

 ①も②も難しい場合は、売却することもご検討ください。その場合も、まずはご家族皆様にご相談いただき、本当に活用が出来ないかをご確認ください。また、ご売却することになった場合は、金額はもちろん、不利な売買条件になっていないか、どの様なリスクがあるかもしっかりとご確認ください。

 

3.不動産有効活用の予算・スケジュールの立て方

 不動産有効活用の目的と方法が決まったら、予算と完了までのスケジュールを立てていきましょう。特に収益性を得る場合は、有効活用後の収益性と予算のバランスが取れるかは、重要なポイントになります。また、完了までのスケジュールをしっかり立てておかないと、途中で建築費が高騰したり、融資条件が悪化したりとせっかく検討した有効活用の収支が悪化する・計画が頓挫してしまうこともあります。

昨年のウッドショックは、やや落ち着きを見せているものの、ロシア産の材料の輸入が難しいことから、まだまだ木材の確保が難しいとのお話を聞くことがあります。また、木材以外にも現在は鉄材の高騰が目立っています。材料以外にも人件費の高騰もあり、当面建築費は高止まりを続けるかと考えています。

 不動産の有効活用だけではありませんが、将来に向けて計画を立てる際は、『少し待てば良くなるだろう』といった考え方よりも、『今以上に悪い状況になっても耐えられるようにしよう』という考え方が大事だと思います。ただ、あまりにも悲観的になりすぎてしまうと、不動産有効活用を考えること自体がご負担になってしまいかねませんので、不動産有効活用の結果ご状況が良くなることを中心に考えながら、リスクも並行してお考えいただくと良いと思います。

 色々と書きましたが、予算やスケジュールを考える際は、まずは数社お見積りを取ってみてください。お見積り先ごとに、ご提案内容・費用・スケジュールに差が出てくるかと思いますので、ご自身の目的にあった業者様をご検討ください。

 

4.まとめ

 今回は、不動産有効活用の全体像の考え方を大まかにご説明してみました。不動産有効活用といっても、言われるがまま無闇に進めてしまうと、結果として失敗してしまうケースもたくさんあると思います。考えていただくこと・実行していただくことは多くなりますが、せっかくの不動産有効活用をより良いものにしていただくために、まずは全体像を把握していただき、充分に検討した上で進めていただきたいと考えていますので、少し長くなりますが引き続きお付き合いいただけますと嬉しく思います。

 

 次回以降はより詳しく書いてみたいと思います。

 

■こちらの記事もおすすめです。

 次世代に築古アパートをどう承継していくか(前編)【相続コラム】

 次世代に築古アパートをどう承継していくか(後編)【相続コラム】