皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

 

相続の生前対策の中で、既にご所有のアパートやマンションが古くなり、何かしたいけど何をしたら良いかがわからないといったご相談をお受けすることがあります。その多くは、お子様たちへできるだけ良い状況でアパートやマンションを引き継ぎたいとのご要望がある一方で、年々収益性が下がり、必要な修繕も増え、改善の糸口が見えていないように感じます。

相続の生前対策と同様に、アパートやマンションも『何もしない』現状維持で自然に問題が改善されることはありませんので、大切なアパートやマンションを良い状態でお子様に引き継げるよう、お時間や費用をかけてでも対策していただくことをお勧めします。

 

1.現状の確認

アパートやマンションの改善の第一歩は、現状の確認です。ご所有のアパートやマンションを改善するにしても、どのような問題点があり、その問題点を解決するためにかかる時間や費用と解決後に得られる効果が明確でないと、全く見当違いな対策を実施してしまうこともあります。時間や費用には限りがありますので、その物件が持つ問題点を明確にして、緊急性が高いもの・対策で得られる効果が大きいものから優先順位をつけて実施していただくと良いかと思います。

現状の確認では、まずは下記の内容を確認してみてください。

・できる限り過去まで遡った収支の確認

・現在修繕が必要な箇所の洗い出し

・過去の修繕履歴やクレーム対応履歴の確認

・現在の入居者様の状況(属性)の確認、過去の入居者様との比較

この様に確認を進めていただき、その物件の収支が悪くなった原因を探ります。また、入居者様からのクレーム履歴を見直すことで、改善策が見つかることもよくあります。大変な思いをした嫌な過去を思い出すこともあるかもしれませんが、実際にお住まいの方のご意見として、前向きに捉えていただけたらと思います。

この段階では問題点の優先順位は付けず、箇条書きで問題点をまとめてみてください。

 

2.周辺との比較① 周辺環境の確認

ご所有のアパートやマンション自体の問題点が見えてきたら、次はその物件の周囲に目を向けて見てください。その物件の周辺エリアにはどんな強み・弱みがあるか、どんな人が住んでいるか、人口動態の推移はどの様に変化しているか、どのような商業施設・企業が出店・撤退してきたか…周辺環境の確認は突き詰めればいくらでもできますが、ここでの目的は、その物件の周辺エリアの賃貸需要を探ることにあります。徒歩で最寄り駅に行けないエリアに、駐車場が無い単身者用のアパートやマンションがあっても、入居者様の確保は難しいですし、一方で人気の駅から徒歩5分以内の物件は、さほど苦労せずに入居者様を確保できると思います。周辺環境を確認することで、そのエリアに賃貸物件を求めるターゲットが見えてきますので、その賃貸需要にどの様に答えていくかの目安になります。

人口動態はイメージがつきにくいかもしれませんが、各行政団体のHPでデータを公表しているので、人口、世帯数、性別構成、年齢構成、人口異動理由(出生・死亡、転入・転出)等を確認して、どんな方が賃貸物件を求めてそのエリアに転入してくるかをイメージしてみてください。また、外国籍の人口も公表している行政団体もありますので、こちらも見ていただくと環境の変化がわかりやすいと思います。

 

3.周辺との比較② 競合物件の確認

次に、周辺にあるターゲットが近い競合物件の確認をします。そのエリアのその時点で賃貸物件を探す方の人数には限りがありますので、周辺エリアの中で入居者様獲得を競い合う物件と比較して、ご自身の物件のどこが優れているか・劣っているかを比較していきます。

比較する物件はSUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトを利用して、下記の事項を確認します。

 ・築年数

 ・構造

 ・間取り

 ・面積

 ・設備

 ・賃料

 ・その他賃貸条件(敷金、礼金、ペット飼育、その他条件となるサービス等)

ご自身が賃貸物件を探す際の気持ちになって、ご自身の物件も含めて客観的にそれぞれの物件の良い点や悪い点を考えてみてください。エリアによって異なりますが、設備や賃貸条件によってある程度賃料に反映される金額の相場が見えてくると思います。ここでは、競合物件と比較してご自身の物件には無い設備や賃貸条件を箇条書きでまとめてみてください。

また、余裕があれば、ターゲットが異なる間取りや面積の周辺物件も確認して、エリア全体としてどのようなタイプの物件が足りていないか・余っているかを大まかに把握していただくと、その後の対策の幅が広がるかもしれません。

 

4.現状のまとめ

ここまで確認したことを一旦まとめてみましょう。

  • ①ご自身の物件の確認
  • ②周辺環境の確認
  • ③競合物件の確認

大きくこの3つを確認することで、現在の問題点や解決策が見えてくると思います。アパート・マンション経営のお悩みは、空室がなかなか埋まらない、修繕が多くなってきている、昔と比べて賃料が減少している、入居者様のトラブルがよく発生する等…様々ですが、その多くは何かしらの原因があるはずです。

ここまで確認してきた内容を基に、なぜ空室が埋まらないか、修繕の頻度を減らせないか、何が原因で賃料が減少しているか、なぜ入居者様トラブルが発生してしまうのか、といったように、それぞれのお悩みの原因を考えてみてください。原因が見つかったら、その原因を解決する対策を考えていくことになります。

本日のところは一旦ここまでにして、また次回問題解決方法の考え方を書いてみたいと思います。