皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

 

少し間が空いてしまいましたが、前回に引き続き今回は次世代に築古アパートをより良い状況で承継していくための現状の問題解決の考え方を書いていきます。前回、現状の確認方法を書きましたが、現状確認した内容と現在のお悩みを照らし合わせて解決策を検討することになります。そのため、現在のアパート・マンション経営のお悩みを箇条書きで書き出してみましょう。今までご相談をお受けした中でも良く伺うお悩みごとに解決方法の考え方をまとめてみます。

 

1.空室が埋まらない

築古収益物件に限りませんが、アパート・マンション経営では賃借人様からいただく賃料が目的なので、最重要課題になるかと思います。一番簡単な解決策は、賃料を下げる等で競合物件よりお得感を出すことですが、一旦賃料を下げてしまうと契約途中での賃料増額や契約条件の変更は非常に難しくなりますので、周辺相場通りの賃料で募集している物件では、賃料の減額は最後の手段と考えていただきたいと思います。

空室対策を考える中では、なぜ空室が埋まらないかの原因を探ることが一番の近道だと思います。空室の原因を探る方法は前回の現状確認結果が役に立ちます。賃貸需要がどれだけあるか、どの様な物件が競合になっているか・どの様な物件の空室が埋まっていくのか…もちろん相場通りの賃料設定になっていない場合は賃料を減額する必要がありますが、競合物件の中でも人気の物件とご自身の物件との違いを見つけてみてください。間取りや設備、リフォーム状況、ペット飼育の可否といった違いがあった場合は、ご自身の物件でその違いを解消するための費用や現在の入居者様と調整が可能かを検討してみて、費用対効果が大きいようであれば、リフォームや賃貸条件の変更を実施していただくと良いと思います。

また、一つの競合物件の真似をするだけでなく、様々な競合物件の良い部分を取り入れて、競合物件に勝てるような物件を作り上げていただくと、その後も空室に困りにくい物件になると思います。

 

2.賃料が減少している

賃料が減少している原因としては、長期間入居している入居者様から建物の経年劣化を理由に賃料減額請求があったり、上記の「空室が埋まらない」の解決策として賃料を減額して募集した場合や、減額した募集賃料を知った既存の入居者様から募集賃料に合わせた賃料減額請求等が考えられます。先程も記載しましたが、契約期間中に賃料を増額することは難しいケースが多いかと思います。賃貸借契約では、借地借家法によって借主様側が保護されているため、よほどの事情が無ければ契約期間中の賃料の増額は出来ないと考えていただいた方が良いと思います。そのため、できる限り賃料を下げずに経営していく予防策が必要になります。

適切な修繕を行うことや、空室が埋まらないからといって安易に募集賃料を減額しないこと、競合物件の動向を探ることなどを行ってみてください。また、入居者様から賃料減額請求があった場合も、そのまま受け入れてしまうのではなく、入居者様が納得するように設備を入れ替える・契約条件を変更する等で賃料を維持できる可能性もあります。ここでも、費用対効果を考えて、賃料の減額幅と対策費用とでどれだけ費用対効果が得られるかを確認しながらできる範囲を探っていただければと思います。

 

3.修繕が多い・費用がかさんでいる

建物はどうしても経年劣化が発生してしまいますので、定期的に適切な修繕を行う必要があります。物件をより良い状態で維持するためにも修繕は必要ですが、闇雲に修繕費をかければ良いというものでもありません。過去の修繕履歴を利用して、現時点でどの修繕が必要か、どの修繕が不要かをしっかりと検討していきましょう。現在までの修繕履歴が残っていない場合は、数社に相見積もりを依頼して、すべての修繕項目を洗い出して必要な修繕と不要な修繕を判断していくことになります。

また、給湯器やエアコンといった設備は製造から10年を超えると急激に故障率が高くなります。ご所有の物件で同時期に設備の故障が発生してしまった方もいらっしゃるかもしれません。2020年4月1日から施行された改正民法第611条によって、賃貸物件の設備等が故障した場合に修繕が遅れてしまうと、設備の種類や修繕までの日数によって賃料が減額されることになりましたので、設備の故障・修繕は早急に行う必要があります。故障してしまった場合は別として、不具合が無い設備についてもできる限り製造年やメーカー、型番を把握し、故障してしまった場合に備えて準備しておくことで、修繕費用や賃料減額を抑えられる可能性があります。

前回の大規模修繕から長期間経過している場合は、大規模修繕と同時に古くなった設備の入れ替えを行うことで、単品で交換するよりも費用を抑えられることもありますので、予防として古くなった設備の入れ替えを実施することも有効かと思います。

 

4.入居者様のトラブル・クレームが多い

入居者様ごとに生活リズムや騒音に対する考え方が異なるので、賃貸経営の中でも難しい問題です。賃貸借契約書の中では、「入居者様間のトラブルは当事者同士で解決する」といった内容が記載されることもありますが、どうしてもオーナー様や管理会社様にクレームとして報告され、問題を放置してしまうと良質な入居者様の退去や物件の価値や賃料下落に繋がってしまう大きな問題でもあります。

また、ゴミ捨て場の利用方法が悪いといったクレームも良く出てくる問題かと思います。この様な問題の解決方法の第1段階として、管理会社様と相談しながら物件の使い方を定めた管理規約や使用細則のようなルールを作成して、入居者様に守っていただけるような働きかけが良いと思います。管理規約や使用細則といった指標を作成することで、各入居者様が騒音やゴミの出し方について再確認していただくきっかけになります。

この様なルールを決めても改善されず、注意をしても改善されない入居者様がいる場合は、費用をかけてでも退去していただくような働きかけが必要になります。上記の通り、ルールを守れない・他の入居者様や近隣の居住者様に迷惑をかける入居者様がいると、良質な入居者様の退去に繋がるばかりか、近隣の仲介業者様からの物件への評判が落ちてしまい良いお客様をご紹介していただけなくなる可能性もあります。退去していただくためには時間も費用もかかってしまいますが、長期的な視点では物件の価値を高められる対策でもありますので、対策を講じる価値はあると思います。

また、できる限り物件に足を運んでいただき、入居者様との良好なご関係を築くことも有効な対策になります。入居者様と良好なご関係性のオーナー様の物件は、入居者様自身も物件を大切に利用していただける傾向が強くなると思いますので、定期的に物件の掃除をしながら入居者様にご挨拶をしていただくと自然に良いご関係性が築けると思います。

 

5.まとめ

前回確認した内容を基に、賃貸経営でよく出てくる問題の解決策を書いてみましたが、いかがでしょうか?お子様やお孫様に大切な物件を承継するためとはいえ、なかなか一筋縄ではいかない問題もあると思います。賃貸経営の問題解決は時間がかかることが多いので、まずはできることから少しずつ始めていただき、一つずつ解決していただくと良いと思います。その際に、お子様やお孫様に相談していただきながら問題解決を進めることで、お子様やお孫様も物件の詳細を把握して承継がスムーズになります。

ただ、問題が山積みで解決の目処が立たない場合は、思い切って売却して他のアパートやマンションを買い替えていただくことも検討してみてください。その場合にも物件への思い入れを大切にしていただきながら、本当に問題解決が難しいのか・問題解決の費用対効果がどれくらい得られるのかといった判断材料をもとにご決断いただければと思います。

 

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