皆さんこんにちは。
相続コンサルタントの久保田です。
前回、不動産有効活用の全体像を大まかに書いてみましたが、今回は実際の不動産有効活用についてもう少し詳しく書いてみたいと思います。不動産有効活用の中で、『ご自身で使用する』『売却する』については、比較的わかりやすいかと思いますので、『第三者に貸す』に焦点を当ててみます。
1.有効活用に適した土地(建物)なのか?
前回も軽く触れましたが、不動産有効活用で第三者に貸す不動産を建築する場合、そもそもそのエリアに賃貸需要があるかどうかの確認が最優先になります。賃貸需要が全くないエリアにアパートやマンションを建築しても、賃料収入が得られず、建築費の返済を預貯金や他の収入から充当せざるを得ない状況になる可能性が高いので、建築を検討する以前に賃貸需要があるかどうかをお調べください。賃貸需要があるかどうかは、不動産ポータルサイト等でも大まかに把握できます。
LIFULL HOME’S 見える賃貸経営 (https://toushi.homes.co.jp/owner/)では、掲載されている賃貸物件の空室率や人口動態、物件閲覧回数の多い・少ないといった大まかな情報がまとめられていますので、有効活用を検討している土地があるエリアにはどれだけ空室物件(競合物件)があるか、閲覧回数が多いのか・少ないのか(賃貸需要の強弱)を確認して有効活用に適した土地かどうかに当たりをつけていただくと良いと思います。
また、既に建物がある場合は、①壊して第三者に貸すための建物を建築する、②建物をリフォーム(リノベーション)して貸し出す、の2パターンのどちらが良いかもご検討いただきたいと思います。リフォームやリノベーションでは、解体・建築よりコストは抑えやすい傾向がありますが、建物の躯体(柱や基礎等の骨組みの部分)は手を加えないことが多いので、表面はきれいになりますが、建物全体の安全性は改善されない場合があります。耐震補強等で躯体部分まで手を加えると、解体・建築と近いコストになる場合もありますので、既にある建物の有効活用を考える際は耐震診断等で建物の安全性をご確認いただくことをお勧めします。
一方で、賃貸需要が見込めない土地・建物であることがわかった場合は、第三者に貸すための有効活用ではなく、ご自身で使用する有効活用に舵取りを変更していただくこともお勧めしています。
何度も言いますが、不動産有効活用によって相続税が減ったとしても、それ以上にマイナスが発生してしまっては全く意味が無い活用となってしまいますので、この点は冷静にご判断いただきたいと思います。有効活用に適した土地・建物であることがわかったら、具体的にどのような活用を実施するかを検討していきます。
2.どんな建築・リフォームをすればいいか?
賃貸需要があることがわかったら、次にどのような建物を建築するか・既にある建物をどのようにリフォームするかを具体的に考えていきます。ここでも賃貸需要や競合物件をベースにして、間取りや面積を検討していきます。1Kや1Rの単身者用の空室が目立つエリアでは、新築直後から入居者確保に苦労してしまうケースもありますので、理想は賃貸需要が強い間取り(面積)だけど供給(空室)が少ない建物を建築していただくと、将来築年数が経過しても安定した賃貸経営を行いやすい建物になると思います。
また、ここでは不動産有効活用の目的を思い出してみてください。収益性の改善・相続対策・建物の老朽化…様々な目的があるかと思いますが、その目的に沿った建物を建築していただくことも重要です。
一般的に、満室であれば単身者用の物件の方が収益性は高くなるものの、入居期間が短くなるといったメリット・デメリットがありますので、収益性を重視するのか、安定性を重視するのかでもどのような建物を建てれば良いかが見えてくると思います。
リフォーム(リノベーション)では、既にある建物を綺麗にするだけでいいか、間取りや用途の変更が必要かを考えていきます。法令等の制限の範囲内で比較的自由にできる建築とは違い、既にある建物をベースにリフォーム(リノベーション)を行うため、より制限されますが、コストだけでなく思い入れのある大切な建物が綺麗に生まれ変わるため、ご満足いただけることが多いように感じています。
3.不動産有効活用に必要な期間は?
相続対策の中で不動産の有効活用を行う場合、悪い言い方にはなりますが期間が長くなればなるほど万が一のリスクが高まります。遊休地に小規模なアパートを建築する場合は、建築業者との打ち合わせも含め1年ほどでお引渡しになりますが、建築する規模や現在の状況によっても必要期間は大きく異なります。建築やリフォームの期間は物件の規模で大まかに想定できますが、現在、既に第三者に貸している建物や土地がある場合は、賃借人様に不動産を明け渡していただく必要があるため、数年単位で計画を立てていただく必要があります。特に、建物を第三者に貸している場合は、賃借人様は借地借家法という法律で強く保護されているため、よほどの事情がなければ貸主様から賃貸借契約を解除することが難しいため、明渡し完了までの期間は多めにご検討いただくと良いと思います。
また、賃借人様との明渡しのお話は、基本的に貸主ご本人様でしか対応ができないことにも注意が必要です。ご自身で直接賃借人様とお話ができない場合は、弁護士に依頼する方法もありますが、その場合は、弁護士にお支払いいただく着手金や報酬も事前に確認してご予算に組み入れていただくと、不動産有効活用全体の予算が不足することなく進められると思います。
4.まとめ
不動産の規模やエリアによってどのような有効活用が最適なのかが異なるため、明確な説明ができないのですが、第三者に貸すことを目的とした有効活用について少し詳しくまとめてみました。建築業者に相談する際に市場調査結果の報告もあるかと思いますが、後悔がないようにご自身でもお調べいただき、ご納得された上で不動産の有効活用を進めるようにしていただきたいと思います。
次回は、今回に引き続き、有効活用後の維持管理の考え方を書いてみたいと思います。
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