皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

 

前回までご所有の土地への建築を中心に不動産有効活用の説明をしてきましたが、

今回は既にある建物をリノベーションする考え方を説明したいと思います。

リノベーションと近い言葉でリフォームがあり、

リノベーションは現在の建物に付加価値を付けるもの、

リフォームは現在の建物を新築時に近づける修繕といったイメージです。

他にも住居を事務所に変更するコンバージョンもありますが、

ここではざっくりとリノベーションで統一したいと思います。

 

1.リノベーションのメリット・デメリット

建替えと比較するとリノベーションは以下のようなメリット・デメリットがあります。

<リノベーションのメリット>

・比較的費用が安い

・工期が短い

・再建築不可の建物を綺麗にできる

・お住まいになりながら施工できる可能性がある

 

<リノベーションのデメリット>

・建物構造の改善は難しい

・構造・法律で制限がかかる

 

賃貸併用住宅のようにいくつか区画が分かれている建物の場合は、

施工する順番を調整することで外部にご自宅を用意しなくても

建物内で移動して工事を完了できる場合があることは大きなメリットになるかと思います。

ただ、やはり耐震性といった建物自体の安心感の改善が難しいため、

旧耐震基準の建物や、シロアリの害がある建物はできる限り建替えをお勧めします。

 

2.建替えにするか、リノベーションにするか

出鼻を挫くようで申し訳ないのですが、できれば建替えの方が良いと思います。

というのも、リノベーションでは建物の柱や基礎を施工することはあまり多くなく、

建物自体の安心感に疑問が残るケースがあるからです。

 

旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に建築確認が行われた建物です。)の建物で、

耐震診断や耐震補強を行い、新耐震基準に適合させる施工を行うこともありますが、

数千万円の費用がかかることも多いので、場合によっては、費用の面でも建替えの方がメリットがあります。

ただ、何でも建替えを行えばいいということでもなく、

例えば、建替えでは、現在の建物より規模が小さくなってしまう場合や、

建物の造りと賃貸需要とのギャップが原因で空室が目立ってしまっている様な場合は

リノベーションをご検討いただくと良いと思います。

 

ちなみに、現在の建物が事務所仕様で住居仕様に変更したい場合は、

事務所と住居では採光面積(床面積に対する窓等採光部の面積の割合)の規定が異なりますので、

違法建築とならないよう注意が必要です。

また、経済面だけでは無く、建物に対する思い入れも重要な観点だと思います。

相続にも共通しますが、経済面だけでなく感情面も大切にしていただきながら、

どの方針がご自身にとって最善かをご検討いただけますと幸いです。

 

3.リノベーションの注意点

リノベーションを実施する上でいくつかご注意いただきたい点がありますので、

それぞれ注意点を説明していきます。

 

  • ①リノベーション費用の確保

リノベーションを実施する際の一番の注意点として、

リノベーション費用をどの様に捻出するかがポイントになります。

融資を受けない場合は無理のない範囲で自由にできるのですが、融資を受ける場合は注意が必要です。

ご自宅で融資を受けてのリノベーションでは、

各金融機関でリノベーション(リフォーム)ローンといった商品があるので間口が広いのですが、

賃貸物件のリノベーションでは、そもそもリノベーション用の融資を受け付けていないという金融機関もあります。

また、取り扱いがある場合も金利や融資期間の条件が厳しく、

リノベーション後の収支のバランスが取れなくなってしまう可能性もあります。

 

  • ②工事期間中の仮住まいの確保

リノベーションの内容にもよりますが、工事期間が数ヶ月に及ぶこともあります。

建物の外部だけであれば、お住まいになりながら工事を進めることもできますが、

室内も工事を行う場合は、基本的に工事期間中は賃貸等で仮住まいを確保して頂く必要があります。

ここもリノベーションでは気をつけていただきたいのですが、

数カ月間だけ借りられる賃貸物件は少なく、工事期間中の仮住まいの確保で躓いてしまうこともあります。

また、ご自身のお住まいであれば若干のご不満は我慢できる方も多いかと思いますが、

入居者様がいる中で賃貸物件をリノベーションする場合、入居者様の仮住まいを確保する必要があります。

入居者様にとってはお引越しをするご負担をかけてしまいますので、

その様な場合は、ご協力いただけるよう事前にしっかりとお話をする必要があります。

 

ご自身のものでも、入居者様のものでも、どちらも費用がかかってしまいますので、

リノベーション工事費用だけではなく、

仮住まいの費用もリノベーション工事全体のご予算に組み入れていただくことをお勧めします。

 

施工業者をどう選ぶか

今回一口にリノベーションと統一していますが、施工業者ごとに得意分野があります。

例えば、構造にはまったく問題ない建物であれば

デザインや機能性を重視したリノベーションを得意とする施工業者をお選びいただきたいですし、

屋上防水や外壁塗装といった大規模修繕を中心としたリノベーションであれば

デザインより構造を重視する施工業者が目的を叶えやすいと思います。

 

得意分野以外の工事ができないということはありませんが、

リノベーションの目的に沿って得意分野を活かせる施工業者をお選びいただくと、より良い結果に繋がると思います。

それぞれの得意分野は施工業者のホームページをご覧頂くとわかりやすいと思います。

ホームページもデザインが優れていたり、技術的な記載が多かったりと、

その施工業者が何を得意とするかがわかりやすくなっていますので、

そういった観点でお選びいただくとわかりやすいと思います。

 

また、よほどの事情がある場合を除いて、1社だけに絞らず複数社で相見積もりを取っていただき、

より条件の良い施工業者をお選びいただくことも重要なポイントです。

金額はもちろんですが、打ち合わせの中で担当者様がしっかりと対応していただける方なのか、

知識や経験が豊富か、相性が良いかといった点も施工業者を選ぶポイントなると思います。

 

4.まとめ

不動産有効活用の一つとしてリノベーションは有効な方法ですが、

実は建替えよりも難易度が高いと思っています。

建物の構造や、法律によって建替え以上に制限がかかる場合もありますので、

建替え以上に施工業者との綿密な打ち合わせをして、

イメージする建物と完成した建物のギャップが出ないように注意する必要があります。

 

予算をかければ良いリノベーションになることは間違いありませんが、

そうなると建替えとほとんど金額が変わらないこともあります。

建替えではなくリノベーションをおすすめする場合の理由も書きましたが、

建替えでは得られないリノベーションのメリットがあるかどうかをしっかりと検討した上で

工事を進めていただきたいと思います。

 

見返してみると、建替えをお勧めしているコラムになってしまいましたが、

リノベーションも非常に有効な方法の一つだと考えていますし、

思い入れのある建物がリノベーションによって生まれ変わる感動は、

建替えとはまた違うものがあると思います。

建替えも非常に有効な方法ですが、並行してリノベーションもご検討頂けますと嬉しく思います。

 

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