皆さんこんにちは。相続スタッフの成田です。
7月に入り、2024年も残り半分になりましたね。
今回は2024年の上半期に起きた相続に関する法改正をお伝えしたいと思います。
相続登記の義務化
2024年の相続に関する法改正で最も注目すべきは2024年4月から施行された「相続登記義務化」です。
詳しくはこちらのコラムをご参照ください。
相続登記義務化とは?2024年4月1日法改正のポイント解説【相続コラム】
これまでは、相続による不動産の所有権移転登記は任意でしたが、新しい制度により、自己のために相続を知り、かつ不動産所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記手続きを完了することが義務付けられました。相続登記しない場合は10万円以下の過料が科されます。
相続登記義務化の目的は、所有者不明土地の問題を解決し、土地の有効利用を促進することです。所有者が不明の土地は、その上に立っている建物が老朽化しても所有者がわからないと取り壊すことが出来ず、空き家問題に発展してしまいます。
2024年1月1日に起きた能登半島地震では、不動産の登記上の名義が明治時代に亡くなった方のままであったり等、所有者が不明の建物が多かったため、自治体が半壊している家屋を取り壊すことが出来ずに、復興が遅れている状況です。
能登半島地震を契機に、相続登記の義務化がますます重要視されています。
相続税および贈与税の改正
相続登記の義務化に加えて、相続税および贈与税の制度にも変更がありました。
詳しくはこちらのコラムをご参照ください。
【相続税・贈与税の改正】最新の相続税・贈与税対策をわかりやすく解説【相続コラム】
本コラムでは、相続税・贈与税の改正で注目を集めている「暦年贈与の持ち戻しルール変更」と「相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設」についてご紹介します。
生前贈与で、非課税となる方法には、「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2つがあります。今回の法改正では、この暦年贈与と相続時精算課税制度の2つに変更がありました。
暦年贈与持ち戻しルールを7年に変更
暦年贈与は、毎年1月1日~12月31日までに贈与される額が110万円以下の場合、贈与税がかからない制度です。基本的には年間110万円の贈与については、贈与税がかからないし、さらには相続税の対象にもなりません。しかし贈与してくれた人が亡くなり、相続が開始する前の7年以内(※)に贈与された金額については相続時に遺産となる財産としてカウント(これを持ち戻しといいます)しなくてはなりません。
※今回の改正で、今まで3年だった期間が7年に変わり、2024年1月1日からの贈与に適用されました。
たとえば、1億円の資産を持っている父が、長男に毎年100万円を贈与し、10年間で1000万円贈与したとしましょう。父が亡くなり相続が開始すると直近7年分の贈与(700万円)は相続財産扱いになり、9700万円(9000万円+700万円)が相続税の対象となります。
このように贈与税の基礎控除110万円内で贈与を行ったとしても、亡くなる前の7年間分の贈与が相続財産としてカウントされてしまうとなると、相続税対策としては活用するには難易度が上がってしまったと思います。
相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設
相続時精算課税制度とは、60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子どもや孫へ贈与する際に使える制度で、2500万円までの贈与額には贈与税がかかりません。なお、2500万円を超える贈与額は一律20%贈与税がかかります。
この相続時精算課税制度が、2024年1月からは、基礎控除110万円が創設され、年間110万以下の贈与財産は相続税の計算の時にはカウントしない(持ち戻しなし)ことになりました。
一度相続時精算課税制度を選択すると、暦年贈与に変更することができないため注意しましょう。
今までは暦年贈与を利用する方が多かったですが、相続時精算課税制度の基礎控除110万円が新設されたことにより、今後相続時精算課税制度を利用する方が増えていくと思います。
どちらの制度も複雑で自分で判断すると間違った節税をしてしまうリスクがあります。迷ったときは、税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は、2024年4月からスタートした相続登記義務化、2024年1月からスタートした暦年贈与持ち戻しルールと相続時精算課税制度の基礎控除新設について、制度の概要と改正点を詳しくご紹介しました。
一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターでは、相続登記、相続税、贈与税についてのご相談を受け付けております。お悩みの方はぜひ一度お問合せください。
執筆:成田春奈