皆さんこんにちは。相続コンサルタント・行政書士の稲垣です。

相続財産において不動産の割合が多い場合に、相続税の対策としてその土地にアパート、マンション等の賃貸用の収益物件を建築するケースがあります。その際に有効なことが借入をするということです。借入をして債務が発生することで相続時に資産と相殺でき、遺産総額を下げる効果があります。そしてここで気になるのは金融機関との対応になります。

私は過去に10年以上信用金庫で勤務した経験があり、地域の地主様からアパート建築の相談を度々受けてきました。今回は私の経験を踏まえて、このような地主様向けにアパート建築の際の金融機関対応をお話したいと思います。

1.どこの金融機関で借りるか

借入をする際にまず気になるのは、どこの金融機関で借入をするかだと思います。不動産投資向けのローンを提供している金融機関は多くあるので、金融機関ごとの傾向は以下の通りです。

都市銀行・メガバンク

三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行等がメガバンクとなります。傾向としては審査が厳しいものの、金利は低めで長期の借入が可能です。

地方銀行

埼玉県だと武蔵野銀行などが該当します。金利は都市銀行と比べると若干高くなる傾向があり、融資の基準等は銀行によりまちまちです。また銀行毎に対応エリアがある為、県外や遠方の物件の場合対応できないことがあります。

信用金庫・信用組合

地域密着が特徴的であり、金利は都市銀行、地銀と比べると高い傾向がありますが、融資基準については柔軟な交渉がしやすいです。

ノンバンク

銀行以外の金融機関であり、オリックス銀行や三井トラストローン&ファイナンスがあり、金利は高い傾向にあるものの、審査基準は緩いといわれています。

2.金利の低い銀行はどこか

当然ながらなるべく低い金利で借り入れしたいところですが、上記の通り傾向として金利が低いのは都市銀行です。

しかし、これはあくまでも傾向であり、実態はお客様や不動産の状況により変わります。私は信用金庫で融資の担当をしていましたが、全体的には都市銀行や地銀より金利が高い傾向にあるものの、お客様の取引内容によっては、都市銀行に引けを取らない条件で融資することもありました。特に、長らく取引をしていただいているお客様であり個人的な取引はもちろん、会社の経営者の方で、会社でも相応の取引をしていただいている場合などは、過去の会社の取引内容等を勘案して、かなりよい条件を引き出せるケースもあります。また今は取引がなくても、そのお客様の資産背景、人脈などを考慮して「このお客様との取引を続けていきたい」「他行の取引を移してくれるのではないか」と金融機関が判断したときも良い条件を提示することがあります。

一般的には都市銀行が金利は低い傾向にありますが、同時に自分がすでに取引している地銀、信金、信組に相談する価値は十分にあると思います。仮に金利は低くできなくても、より長い融資期間を引き出すことができ、賃料からローン返済後の手残りを多くできるケースもあります。また都市銀行に比べ、地方銀行や信金、信組は地域密着をアピールポイントとしていることもあり、融資利用中のアフターフォローも手厚く、返済計画についての相談も親身に乗ってくれます。金利だけでなく様々な条件を比較し、幅広く検討するとよいでしょう。

3.事業計画を念入りに行う

金融機関は不動産投資融資をするにあたり、物件の収益性、事業計画に無理がないか、不動産担保としての価値はどうかなどを審査します。

例えばすでに多くの賃貸物件が存在するエリアであり、競合の激しいエリアではないか。設定されている想定利回りが低すぎないか、または高すぎないか。賃料収入に対しての借入金返済額が多すぎず、事業計画において将来の修繕費の負担や経費が考慮されているか。などを判断します。相応の取引をしている金融機関であっても、上記のような観点から懸念がある場合はどうしても融資に対して消極的になり、お客様を保護する観点からも、一度計画を考え直すように進言することもあります。金融機関に相談する際は以上のような事業計画を念入りに作成した準備した上で行うとよいでしょう。

まとめ

今回は相続税対策として収益物件を購入する際に金融機関との対応で重要なポイントを3つご紹介しました。私が金融機関に勤務していた頃は、サブリース契約やアパート建築会社の不正行為が問題となり、不動産投資ローンについては消極的になりがちでしたが、現在は賃貸需要の高まりもあり、その傾向が変わってきています。

個人的には3つ目のポイントでお話した、物件選びと事業計画が最も大切だと感じます。この点に関しては信頼できる不動産や税務の専門家に相談するべきです。金融機関の立場としても、今まで全く取引のない個人が、不動産投資ローンの相談に来られるとどうしても警戒してしまうので、この様な専門家を経由して金融機関に相談した方がスムーズに進み、より良い条件が出しやすいでしょう。さいたま幸せ相続相談センターでは不動産コンサルタント、税理士による収益物件購入のアドバイスも行っていますので、お気軽にお問合せください。