皆さんこんにちは。相続コンサルタントの馬渕です。

「相続対策には不動産と巷でよく聞くけれども、具体的にどんなメリットがあるの? 」

「収益不動産と言っても、たくさん物件があってどんな物件を購入したらいいのかよく分からない。」

相続対策としての収益物件の購入を初めて検討している方に向けて、押さえるべき心得を3つのポイントにまとめてご説明させて頂きます。

 

唐突ですが、「いい収益物件ってどんな物件でしょうか?」

 

・利回りが高い物件

・土地の価格が下がりにくい都心部の物件

・駅距離が近く好立地の物件

・近くに大学があるので空室率が低そうな物件

・構造は木造よりもRCがいいのかもしれない?

・築年数が浅い方がいい

・いやいや築年数が古くても賃貸需給バランスが取れている物件の方が割安でいい

 

…いろいろなコツがでてきそうですね。

 

さて、冒頭のいい収益物件とは?の答えに戻りましょう。

答えは、「人による」です。上記の例はどれも正解であり、場合によっては不正解の可能性もあり得るのです。

 

収益物件を購入するための目的設定をどこに設けるかが重要となります。

今回は、特に「相続対策」として収益物件を購入するにあたり大切にしていただきたい3つの心得をお伝えしたいと思います。収益物件を購入することで、相続においてどのような効果を狙えるのか。またその時の注意点なども合わせてご説明します。

1 不動産は評価額圧縮対策になる

相続が発生した際には、被相続人様の資産額に応じて相続税の申告・納付を行います(一定の金額以上の資産がある場合となります)。相続税は小さくない金額ですので、適切に資産を評価し納税を行う必要がございます。現預金ではなく不動産をもつことのメリットがあります。

相続税を算出する際の不動産の評価の際には、相続税路線価という査定の指標があり主にこれを用いて評価を行います。路線価は、一般的に市場の価格80%前後と言われています。例えば預金で1億円を持っていた場合、相続時の評価もそのまま1億円として評価されます。一方不動産の場合、1億円で物件を購入した場合単純に相続税路線価にすると8,000万円と評価されます。(一般論としてとなり、例外もございますので詳しくは専門家にご相談ください。)不動産の評価額の圧縮が期待できることがお分かりいただけるかと思います。

このように相続税の課税評価上不動産は相対的に評価額が低く算出されることが多く、不動産の評価額を抑えることで、相続税の負担を軽減することができます。これが、相続財産の組み換えと呼ばれるものです。

例えば、不整形地や間口が狭い土地などは評価額が低くなりやすいといったように、各不動産の特徴に応じて細かく特殊な査定基準が設けられています。

こういった相続税評価額と時価の差があるという不動産の特殊性を利用し、相続税上の資産額を減らす(=評価額を減らす)圧縮対策として収益物件購入するという選択がございます。

相続対策における収益物件の購入の最大メリットはこのポイントです。不動産ならなんでもいいという訳ではなく、上記に紹介した事例以外にも、様々な税制による特例や抑えるべきポイントがあります。利用できる税制上の特例にも細かな制限やルールがありますので、

詳しい専門家にご相談していただくことをおすすめします。

2 借入金で税負担を減らす

不動産の購入時には、大きな費用がかかります。たいていの方は、不動産を購入する際に金融機関等からローンを組み不動産を購入されます。ローン残高はマイナス資産として計上され、相続財産の評価額から差し引かれます。つまり財産自体を減らす効果があります。

そういった観点にご自身がメリットを感じるのであれば、例えば金融機関等が長期融資を組みやすい物件を中心に物件を検討してみよう。といった自分なりの重視する視点で物件を探してみることなどもできます。

ローンの種類等によってはマイナスとして算出されない等もありますので、詳細は専門家に必ずご確認ください。

3 相続発生時の準備・納税資金の対策が必要

相続対策として、不動産を持つことはメリットだけではありません。

大きなデメリットとしては、不動産は簡単に分けることができないという点です

相続が発生した際には、遺言書などがある場合を除き相続人による遺産分割協議によって不動産を含む資産をどのように分けるのかを決定する必要があります。現金のように均等に分けることが難しい為、しばし相続人の間での不公平感が生まれやすいのが不動産です。

また資産が不動産に偏っている場合には、相続をしたものの相続税の納税資金が不足しており(つまり現金がない)、不動産を売却して現金化しなくてはならないという壁にぶつかることも多々あります。

ご自身の資産状況をしっかりと把握し、収益不動産の購入に充てる費用と現預金とのバランスをしっかりと検討し、不動産へ投資の金額や借入金の額を検討することが求められます。

 

以上が、相続において収益不動産の購入を検討する際に考慮すべき3つの心得でした。

冒頭においてご説明した、「いい収益物件」の定義が「人による」といった意味が少しお分かりいただけたかと思います。

投資の対象が同じ不動産なので同じように捉えてしまいがちですが、「収益性を重視する不動産投資」と「相続対策(=節税対策)における不動産投資」では目的とする効果が異なります。

収益物件を購入する際のポイントは多々あります。分かりやすい指標として、物件の金額・利回りなど定量的に物件を図る指数がありますが、それらの数字に惑わされることなく、ご自身が収益物件を購入するための目的を明確にし、物件を見極めてみるようにして下さい。

収益不動産は世の中にたくさんありますが、自分の目的に合った物件を見つけるのは大変な労力を要します。一見よい物件と思えても相続税の圧縮効果が薄い物件もあります。相続税対策に囚われすぎて、空室が長年続いてしまうような投資的な視点でマイナスとなる物件を購入してしまうなども不安ですね。

「相続対策」で収益不動産を購入する目的と資産状況をしっかりと理解し親身に相談に乗ってくれる、相続に詳しい税理士や不動産業者を見極めてしっかりとご検討を頂くことをおすすめ致します。