「税務署から「相続税についてのお知らせ」という通知が届いた。どう対処すればいい?」

「相続税申告の可否はどのように判断すれば良いの?」

「税務署から来る通知の内容や対象になる人について知りたい」

 

大切なご家族がご逝去された後に、税務署から突然「相続税についてのお知らせ」という通知が届くことがあります。この通知は一体どのような内容で、対象となる方はどなたなのでしょうか。今回の記事では、「相続税についてのお知らせ」について詳細を解説します。

 

「相続税についてのお知らせ」とは

 

相続が発生しても、必ずしも相続人全員が相続税納付の対象者となるわけではありません。令和3年の国税庁「相続税申告状況について」を参考にすると、相続税の対象となった被相続人は、約9.3%とされており、相続税対象者は約1割程度に留まります。

 

生前から明らかに相続対象となる財産が多いと自覚があり、相続税対策を行ってきた方は速やかな納付準備を行えますが、「自分は大丈夫」と思っている相続人も少なくありません。

 

しかし、ある日突然「相続税についてのお知らせ」が届いたら、相続税申告が必要な可能性が高いことを意味します。この書類は、税務署から送られているものです。

 

出典:“令和3年分 相続税の申告事績の概要”国税庁ウェブサイト

 

 

相続税が発生する可能性がある方に届く

 

相続開始後に、税務署から「相続税についてのお知らせ」が届いたら、ご自身は相続税納付の対象者となっている可能性があります。相続人となった方全てに送られているわけではありません。

 

相続税の納付期限は、「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」であるため、納付期限に間に合うように発送されています。しかし、相続税納付期限のタイムリミットまでは残り数カ月しかないため、この郵便物が届いたら早急に相続税の有無の調査を始めるべきでしょう。

 

■相続税申告の義務がない人にも届く

 

ある日突然税務署から郵便物が届いたら、「ドキリ」として当然です。しかし、「相続税申告のお知らせ」は相続税申告の義務がない方にも届くことがあります。市町村などから得ているデータを基に発送しているもので、届いても「督促」を意味するものではありません。慌てずに対処しましょう。

 

「相続税申告等についてのご案内」という通知もある

 

相続後に届く通知については、「相続税申告等についてのご案内」という通知が届くこともあります。この通知も税務署から届くものですが、市区町村や金融機関などから得たデータをもとにして発送されています。こちらは相続税の対象となる可能性がある方を対象に広く送付されており、相続税のしくみやチェックシートなどが入っています。

 

■相続税納付の可能性が高いのはどちらの郵便物?

相続税納付には上記で解説のとおり2つの種類の郵便物が届く可能性がありますが、どちらの方が相続税納付の可能性が高いでしょうか。結論から言うと、「相続税の申告等についてのご案内」の方が、相続税がかかる可能性が高いとされています。ただし、いずれの場合でも相続税が発生するかどうか、早急に調べることが大切です。

 

おしらせはいつ届く?

 

では、「相続税についてのお知らせ」は、一体どのようなタイミングで届くのでしょうか。届くのは、おおよそ相続開始後から半年程度とされます。相続税納付が必要な場合、おしらせの到着後から残り3~4か月程度の間に、納付を終える必要があるため注意が必要です。

 

相続税申告の有無はどのように判断する?

 

突然相続税申告に関する郵便物が届いても、自身が相続税対象かどうか判断できなければ納付が遅れてしまう可能性があります。相続税の納付が遅れてしまうとペナルティがあるため、注意が必要です。では、相続税申告の有無を適切に判断するためには、一体どうすれば良いでしょうか。

 

まずは相続財産の調査を行う

 

相続税申告の有無を把握するためには、被相続人が遺した相続財産の総額を適切に把握する必要があります。そのため、まずは被相続人の財産を早急に特定しましょう。相続財産に含まれる財産とは、主に以下です。

 

・預貯金や現金

・有価証券や会員権

・不動産

・生命保険 など

 

■債務を見落とさないように注意を

被相続人が遺した債務がある場合、相続財産に含みます。ローンの借入や消費者金融などからの借入、滞納税なども含みます。相続税計算時には債務控除と言い、相続財産の価額から差し引いて計算しますので、見落とさないように注意しましょう。

 

基礎控除額を知っておこう

 

相続税には基礎控除枠があります。基礎控除枠とは以下のとおりです。

 

■基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人数)

 

法定相続人数によって基礎控除は変動します。たとえば、子2名で父の相続を行う場合、基礎控除としては3,000万円+(600万円×2)のため、4,200万円が控除できます。相続財産の総額が基礎控除を超える場合には相続税が発生しますが、控除にはその他の種類もあります。適用漏れがないようにご注意ください。

 

相続税申告時に受けられる控除の一例

 

・配偶者控除

・未成年者控除

・障害者控除

・相次相続控除

・外国税額控除

・債務控除

 

なお、適用できる控除を使って相続税計算を行った結果、計算上はマイナスになったとしても、還付されることはありません。

 

相続税がゼロでも申告が必要なケースとは

 

相続税申告は、相続税の発生がゼロの方の場合でも申告が必要となるケースがあります。申告をすることによって受けられる特例や控除がある場合です。

 

①小規模宅地等の特例

②国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税規定

③配偶者控除

 

これらの特例や控除を受ける場合には、自動的に控除が発生するのではなく相続税申告を行う必要があるため、漏れのないように対処しましょう。

 

相続税申告に迷ったらどうするべき?

 

相続税の計算は基礎控除を把握し、控除や特例を正しく適用させることが重要ですが、難解であり困ってしまう方も多いでしょう。では、相続税申告に迷っている場合には、どうするべきでしょうか。

 

専門家に相談する

 

相続税申告に迷ったら、専門家に相談するようにしましょう。特に「相続税申告のお知らせ」や、「相続税の申告等についてのご案内」が届いている場合は、納付期限まであと3~4カ月しかありません。早急に以下の専門家へ相談しましょう。

 

・税理士

・相続相談センター

・自治体の無料相談など

 

相続税は税理士が専門的に扱っていますが、身近に相談できそうな税理士が見つからない場合などは、相続全般の相談窓口である「相続相談センター」にご相談されることもおすすめです。また、気軽にアドバイスを聞いてみたい場合には、自治体が主催している無料相談を利用してみることもおすすめです。

 

通知が来る前に、まずは相続税を見越した調査をしよう

 

税務署からの郵便が届いてしまう前に、相続が開始されたら早急に相続財産を特定し、相続税の発生の有無を確認することがおすすめです。慌てる前に、まずは相続税を見越した調査を進めましょう。

 

早期に相続財産の調査は、被相続人の債務を早く見つけることにもつながり、相続放棄(※)などの機会を逃さないことにもつながります。

 

※相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った日から、3か月以内に行う必要がある

 

相続税は期限内に正しい申告・納付が必要

 

税務署からの郵便を無視してしまったら、相続税申告が期限を超えてしまうおそれがあります。では、相続税申告が期限内に間に合わなかったら、どのようなペナルティがあるでしょうか。

 

・無申告加算税…政党な理由なく相続税申告が間に合わなかった場合に加算

・延滞税…期限後の修正申告や申告はできても納付が間に合わなかった場合に加算

・重加算税…悪質な隠蔽があった場合に加算

 

また、本来申告すべき財産よりも少なく申告してしまった場合には、過少申告加算税もあるため、慎重に申告・納付に臨むことが重要です。

 

まとめ

 

今回の記事では、税務署から届くことがある「相続税申告についてのお知らせ」について、相続税の控除や特例などにも触れながら詳しく解説を行いました。税務署からのお便りは無視をすることなく、まずは中身をきちんと確認した上で適切に対応することが大切です。

 

もしも相続の開始後に、税務署からの郵便が届き対応に困ったら、まずは専門家に相談することが大切です。相続税に関することはもちろん、相続全般に関するお悩みは、「一般社団法人 さいたま幸せ相続相談センター」にお寄せください。あなたの力になります。

 

執筆:岩田 いく実

監修:税理士法人トゥモローズ 髙畑 光伸 税理士