皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

 

あまり多くはありませんが、ご両親様の生前対策や相続手続きのご相談を頂いた方から、ご自身の生前対策のご相談をいただくことがあります。その様なご相談をいただく方の多くは、ご両親様についてのご相談を通じて、生前対策や相続手続きの難しさやご自身のご家族内で揉めてしまう可能性にお気付きになり、ご自身が元気な内に時間をかけて生前対策に取り組みたいとのご意向でした。よほどのご事情や浮き彫りになった大きな問題点がない限り積極的にお子様世代にご自身の生前対策をご提案することはありませんが、ご両親様の相続で多額の財産を相続した方には、落ち着いた頃にご自身の生前対策をご検討いただくことをお勧めしています。

お子様世代のご相談者様は50代~60代の方も多く、まだまだお元気な方が多いのでご自身の生前対策はイメージが湧きにくいかと思いますが、下記のような流れでご自身の生前対策をご検討してみてはいかがでしょうか?

 

1.ご自身の現在のご資産状況の確認

まずはご両親様から承継した相続財産を含めて、現在のご自身のご資産状況を確認してください。極端な話にはなりますが、明日ご自身が亡くなった場合に、どの様にご家族に分けられるか、どのくらいの相続税が課税されるか、課税される相続税を金融資産だけで納税できるかの3点に注目していただくと良いと思います。確認していく中で、ご自身のご資産をどの様に分けていきたいかをお考えいただくきっかけにもなるかもしれません。

また、高額な相続税が課税されてしまうようであれば、相続税の節税対策をご検討いただいてもいいと思います。厳密な金額や評価額まで確認する必要はありませんが、ご自身がどのようなものを持っているかを大まかに書き出していただき、この先の確認や対策の検討を行う上での指標にしてみてください。

 

2.加入中の各種保険の確認

ご自身のご資産状況の確認の中で、現在加入している各種保険(医療保険、介護保険、生命保険等)の内容も確認してみてください。ご自身で検討して保険に加入された方は保険の内容をしっかりと把握していると思いますが、どなたかに紹介されて加入した保険がある方は今一度保険の内容をご確認ください。

相続の観点では、生命保険の非課税枠を十分に利用できているか、保険金の配分はご家族の状況に合っているかの確認だけでも、さほど問題はありませんが、老後の生活を考える上では生命保険以外の医療保険や介護保険を見直す必要があります。

また、状況によっては医療保険・介護保険ではカバーしきれない、がん保険や認知症保険、収入保障保険等も加入を検討されてもいいと思います。保険は各社から様々な商品が提供されていますし、そもそも保険の仕組みを知ることが大きな負担になるかと思いますので、信頼できる保険担当者様やファイナンシャルプランナーに相談して、現在加入中の各種保険を見直していただくとスムーズに進められると思います。

 

3.ねんきん定期便の確認

皆さんは、ねんきん定期便が届いた際にしっかりと内容を確認していますでしょうか?正直に言ってしまうと、私はほとんど目を通さずに捨ててしまっていました…。今後、年金制度がどの様になるかはなんとも言えない状況ですが、老後の生活において年金は重要な収入源となります。現時点の生活費と老後の生活費とは、ライフスタイルの変化によって異なるとは思いますが、次回ねんきん定期便が届いた際に受給できる年金の金額と老後の生活費のイメージとのバランスを確認してください。

生活費を年金でカバーできれば問題ないのですが、生活費が年金を上回ってしまった場合、預貯金を切り崩して生活することになります。その様な場合に、現在のご資産状況で何年間生活を続けられるかを計算してみてください。また、介護施設への入居や医療費といった急に訪れる状況にどの程度対応できるかも考えてみてください。老後資金2,000万円問題も記憶に新しい話題ですが、私自身老後の生活を考えた際に、2,000万円では足りないのでは無いかとの印象がありました。

加えて言うと、厚生労働省が発表した令和3年簡易生命表(令和4年7月29日 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/index.html)によると、男性の平均寿命は81.47才、女性の平均寿命は87.57才と6.1才の差があります。この様な平均寿命の差がある中で、旦那様が先に亡くなってしまった場合の奥様の生活費は遺族年金等でカバーできる状況でしょうか?遺族年金も含めて、老後の生活にご不安があるようでしたら、積立NISAやiDeCo、各種保険等を利用して老後資金の確保をお勧めします。

 

4.生前対策の検討

ここまでの流れで、現在のご自身の状況が把握できたかと思います。その内容を踏まえて、将来どの様な問題が発生し、その問題に対してどの様な対策が必要かを検討してみてください。おそらく問題の多くは、老後の生活費へのご不安やご家族や身近な方への遺産分割の内容、相続税の節税・納税資金の確保になるかと思われます。この様な問題を解決する各種対策はあるものの、対策の多くはメリットだけでなく、状況によってはデメリットとなってしまう可能性があるため、ご自身やご家族・身近な方の状況に応じてどの対策がベストなのかを分析・検討する必要があります。

相続の観点では、現在はご自身がいらっしゃることでご家族や身近な方が良好な関係性を築けている場合でも、ご自身がいなくなってしまったときのことを想像して、ご家族・身近な方が揉めることが無いように、皆様全員が納得できる相続財産の分けかたを考えてみてください。何も対策を行わなかった場合、相続人様での遺産分割協議の内容によってはご自身が思い描く遺産分割ができなくなる可能性があります。ご自身の相続財産の分け方を指定するのであれば、ご家族や身近な方へのご相談とともに遺言書の作成や民事信託の組成を検討してみてください。

また、選んだ対策が本当にベストな選択肢なのか、専門家の意見を聞いていただくのもいいと思います。相続対策では、遺言書や民事信託によって遺留分が発生してしまう様に、一つの対策に対して様々な視点から分析し、対策を実行することでどの様な結果になるかを検討しないと、後々想定していなかった問題が発生してせっかく実行した対策が無駄になってしまう・実行しなかった方が良い結果になってしまうことがあります。その様な状況にならないためにも、相続の専門家にご自身の目的や検討している対策の内容を相談していただくことをお勧めします。

 

5.まとめ

生前対策は、年齢制限や健康状態による制限によって選べる選択肢が減少する、そもそも検討した対策を実行できなくなるものも多いので、対策を検討・実行するには早すぎるとは考えずに、問題点に気付いた時点から早急に進めていただくと良い結果に繋がりやすくなると思います。以前のコラムで、私が自身のエンディングノートを書ききれなかったことをお話しましたが、前述の平均寿命のこともあり、まだまだ自分は元気だろうという気持ちがあることも事実です。

一方で、おそらく貰えるであろう年金では足りない可能性が高いとの考えもあり、急に私が亡くなっても残される家族が現在と同じ生活水準を維持できるよう、各種対策を実行中です。エンディングノートも自身の生前対策を真面目に考える要因にはなりましたが、とあるきっかけで自身のライフプランを作成したことが対策を実行するまでに至った大きな要因でした。そのため、まずは一度ご自身のライフプランを作成し、将来の問題点を可視化していただくと、具体的な対策を検討しやすくなると思います。

ライフプランもご自身で作成する・各種対策を分析・検討するとなると労力や時間がかかるかと思いますので、ご自身の生前対策が気になった方はお気軽に当センターまでお気軽にお問い合わせください。

 

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