皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

 

10月6日の日経新聞の記事によると、2017~2018年度にフラット35を利用した住宅ローンとして、本来の利用目的と異なる利用が56件、約19億円に上ったとのことでした。上記の期間において、かぼちゃの馬車事件を始めとした投資用不動産への不正融資が発覚し、そのことが現在、不動産投資に関する融資に対する締め付けの原因となっていると思います。

相続の場におきましては、この様な投資用不動産への不正融資は直接の関係はありません。しかし先日、ご相談者様から「突然訪ねてきた不動産業者から登記簿謄本を見せられ『被相続人様の借金が残っている』と言われて不安になった。」とのお話がありました。このように、不正融資を受けてしまった方が、今後、第三者からの指摘に騙されてしまう可能性があるのでは無いかと思い今回のコラムを作成しました。

当然ですが、本来の目的とは異なる利用方法での不正融資は、推奨いたしません。また、既に不正融資を受けてしまった方はできる限り早急に返済か借換えをお願いいたします。

ちなみに、上記のご相談者様のお話を詳しく伺ったところ、抵当権の抹消が漏れていたものの、お借入れ自体は団信で返済が完了していたためご安心いただき、抵当権抹消のお手伝いをさせていただくことになりました。

 

1.住宅ローンの不適切利用とは

住宅ローンは読んで字のごとく、ご自身やご親族が住むための不動産を購入するためのローンです。生活の基盤となる住宅を購入するためのローンのため、一般的に投資用不動産を購入するためのローンよりも金利や融資期間等の条件が有利なものが多いことから、数年前まで投資用不動産購入のために住宅ローンを利用する手法が横行していました。

当時良く耳にした事例では、1Rマンションを自宅として住宅ローンを利用して購入後、第三者に賃貸するパターンや、住宅ローンの要件を満たす賃貸併用住宅(1つの建物に自宅区画と賃貸区画が混在する建物です。)を購入し、自宅部分を第三者に賃貸するパターン等がありました。

現在では締め付けが厳しくなり、新たに住宅ローンを不適切利用する方はいらっしゃらないと思いますが、既に住宅ローンの不適切利用をしてしまった方は、発覚時に一括返済を求められる可能性もありますので、発覚する前からアパートローン等への借換えを検討していただくことをお薦めします。

なお、上記日経新聞の記事にも記載があったように、今回の調査結果は氷山の一角と捉えているようで、今後調査を拡大することも充分考えられますので、早目の対応が良いかと思います。

 

2.今後考えられる可能性

住宅ローンの不適切利用の場合は、常に目的以外の利用が発覚し、対応を求められる可能性がありますが、発覚してから対応を行うことと、発覚する前に事前準備と対応を行うことでは、結果が大きく異なると考えています。

発覚してしてからの対応となり、ご自身で一括返済ができず借換えも難しい場合はご所有の不動産を充分な検討を行う余地もなく手放さざるを得なくなる可能性があります。また、最近は少なくなったと考えておりますが、前述の様に、悪意のある不動産業者があの手この手を使って不安を煽り、ご所有の不動産を不当に安く売却させようとしてくるかもしれません。

そして、対象の不動産の状況によっては、売買代金だけでは残債を返済できず、ご自身の資金で充当しなければならない場合もあります。できる限り売買代金で残債を返済できる条件の買主様を見つけられるよう、今からご準備を進めていただくことをお勧めします。

 

また、記事にも取り上げられた期間と比較すると、現在投資用不動産への融資は厳しい状況が続いていますが、今後金利の上昇が現実的になる前に借換え先を見つけることも大切な準備だと思います。

 

3.まとめ

おそらく、既に住宅ローンの不適切利用によって投資用不動産を購入してしまった方も、ご自身でこの手法を考えたわけではなく、購入当時、悪意のある不動産業者に提案されて住宅ローンの不適切利用に至った方が多いかと思います。

不適切利用を提案した不動産業者が悪いのは言うまでもありませんが、厳しい言い方をすれば安易に不適切利用を選んでしまった方にも責任があると思います。

また、詐欺ではよくあることですが、一度詐欺グループに目をつけられてしまうと、再度詐欺の被害にあってしまう方も多いため、今後は住宅ローンの不適切利用を選択してしまったときのように、言われるがまま選択してしまうのではなく、ご自身やご家族を守れるようしっかりと準備を始めてみてはいかがでしょうか。

 

相続の場ではあまり目にする機会が少ない住宅ローンの不適切利用ですが、ご相談をお受けする中で稀に原野商法の被害にあって購入してしまった土地をご所有の方もいらっしゃいますので、もし過去に住宅ローンの不適切利用によって投資用不動産をご取得してしまった方は、残されるご家族のご負担を軽減するためにもご自身の生前対策として、不適切利用が発覚する前にご準備を始めていただきたいと思います。

 

参照 「フラット35」不適切利用計19億円 融資物件に居住せず https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE3063E0Q2A930C2000000/

 

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