皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

以前のコラム(空き家を解体する際の注意点【相続コラム】)で建物を解体した後に滅失登記が必要と軽く触れたことがありましたが、皆さんは滅失登記という手続きをご存知でしょうか?

滅失登記とは、法務局で登記されている不動産が無くなった際に、不動産がなくなりましたという申請をする手続きです。

主に建物を解体した後に行う手続きですが、土地でも何かしらの理由で海面下に埋まった等あまり身近ではない状況で土地の滅失登記が必要になります。

もしご自宅やご実家の土地に解体済みの建物登記が残っていたとしても、ほとんどの方は解体済みの建物登記が残っていることをご存知でないかと思います。

相続手続きの中で不動産の調査を行って初めて建物滅失登記がなされていないことを知る方も多く、どのように対応したらいいかわからないといったご相談をお受けすることもありますので、今回は建物滅失登記について説明します。

建物滅失登記は義務なのか?

建物滅失登記は、不動産登記法で定められた義務で(不動産登記法第57条)、滅失の日(解体した日)から1ヶ月以内に滅失登記申請を行わないと10万円以下の過料が科されることになってしまいます。

上記のように建物滅失登記をしていないことを知らずに過ごしている方も多く、私自身も建物滅失登記を怠ったからという理由で過料を科されたという実際のお話を耳にしたことはないので、ペナルティが発生するリスクは低いように感じています。

なんで建物滅失登記が必要なの?

法律では定められているものの、ペナルティが科されるリスクは低い…

それでも建物を解体した際は、しっかりと建物滅失登記をしていただくようご案内をしています。

これは法律で定められているとか、ペナルティがあるからといった理由ではなく、建物滅失登記をしておかないと将来問題が発生してしまうリスクがあるからです。

よくある話として、不動産を売却する際に調査してみたところ解体済みの建物登記が残っているケースがあります。

通常売買契約書の中で、売主様の負担と責任で不動産の引き渡しまでに解体済みの建物滅失登記を完了するといった特約が付されるので、契約締結後に建物滅失登記手続きを行うことになります。

解体済みの建物の所有者が売買対象の不動産の所有者と一致していればさほど問題にはなりませんが、不動産の売主様と解体済みの建物所有者が一致していない場合は手続きが複雑になってきます。

解体済みの建物所有者が家族・親族(直系尊属)の場合

相続不動産で建物滅失登記が漏れている場合の多くはこのケースになるかと思います。

例えば、お祖父様名義の建物登記が残っていたといった例がわかりやすいかと思います。

このケースでは、相続人の立場で建物滅失登記申請を行うことができますので、手続きはスムーズに進められます。

とはいえ、解体済みの建物所有者と申請者の戸籍上の繋がりを証明する必要がありますので、通常の相続手続きでは不要な戸籍を収集する一手間が発生してしまいます。

また、建物滅失登記では、建物滅失証明書や建物解体業者の印鑑証明書が必要になりますが、既に解体済みの場合はこのような書類が残っていることは少なく、滅失登記に関わる土地家屋調査士の報酬等の費用が増えてしまうことがあります。

解体済みの建物所有者が第三者の場合

あまり多くはないものの、解体済みの建物が全くの第三者のケースもあります。

売買で取得した土地であれば仲介業者が売買契約時に調査をしているためほとんどないはずですが、先祖代々所有している土地で過去に借地契約があった等の場合は建物登記が残り続けていることがあります。

通常建物の滅失登記は解体した建物の所有者やその相続人以外は申請ができないため、解体済み建物の所有者やその相続人を探し出して建物滅失登記申請をお願いしなくてはなりません。

ただ、その方たちを探すヒントは解体済み建物の登記簿に記載されている住所や氏名のみのため、専門家でなければ探し出すことは難しいかと思います。

そうなった際に建物滅失登記ができないわけではなく、土地所有者といった利害関係がある方であれば、建物の滅失登記申請ではなく、建物の滅失登記の申出の形で滅失登記手続きを進めることができます。

申出の場合は、所有者以外の第三者からなので、本当に建物の滅失登記を進めていいかのチェックが厳格になり、法務局が現地調査を行うといった手続きが増え通常の建物滅失登記手続きより所要期間が長くなってしまい、不動産の売却を控えた状況ではお引渡しが延期になってしまうこともあるかもしれません。

どうやって滅失登記の漏れを調べるか

滅失登記がなされていない建物を調べるためには、登記簿謄本を取得する必要があります。
※不動産の登記簿謄本は、全国の法務局で取得することができます。

一般的には、土地は所在と地番を、建物は所在と家屋番号を申請用紙に記載すればそれぞれ該当の登記簿謄本を取得できますが、この方法では滅失登記がなされていない建物の家屋番号がわからないため登記簿謄本を取得できません。

滅失登記がなされていない建物の登記簿謄本を取得する場合は、申請用紙に土地の所在・地番を記載して、職員の方に「この土地の上にある建物の登記簿謄本を取得したい」と伝えていただくと、土地情報から建物を検索して発行可能な建物謄本が何件あるかを教えてくれると思います。

手数料はかかりますが、建物謄本が複数ある場合はすべての登記簿謄本を発行していただき、ご認識の建物(現在の建物)以外にどんな建物の登記が残っているかを確認してみてください。

また、インターネットの登記情報提供サービスでは事前の登録が必要ですが、上記と同様にその土地上にある建物の登記情報を取得することができます。

結局滅失登記はしないといけないの?

やはり法律で定められている以上建物を解体した際は、滅失登記を行って頂く必要があります。

私個人としては、今回のコラムで書いたように滅失登記を怠ることで、売却時に余計な手間やコストが発生してしまうことが滅失登記を行っていただく一番の理由となりますが、売却を考えていない場合でも、遠い将来相続が進みお子様やお孫様が不動産を売却したいと考えたときのことまでをお考えいただきたいと思います。

直系尊属名義の解体済み建物であっても、通常の相続手続き以上の戸籍を集めなければならなくなることもありますので、滅失登記が漏れている建物の存在に気付いたタイミングが一番手続きが簡単なタイミングともいえます。

ご自身の相続対策で念の為滅失登記の状況を確認したい・相続で取得した不動産を売却したいといったご相談であれば、一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターで滅失登記の漏れを確認することもできますので、お気軽にご相談ください

 

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監修:おがわ司法書士事務所 小川 直孝 司法書士