皆さんこんにちは。相続コンサルタント・行政書士の稲垣です。

11月22日のコラム(https://saitama-shiawasesouzoku.jp/news/5394)において生命保険を活用した相続対策について解説していますが、今回はどんな生命保険に入ればいいのかについてお話したいと思います。

 

私は過去に金融機関に勤務していた経験があります。私が勤務していた頃は、既にゼロ金利政策が導入されており、やがてマイナス金利政策も導入され、金融機関は預金と貸出金の利ざやで収益を得るという、銀行本来のビジネスだけでは成り立たなくなっていました。その為、投資信託や保険の販売で得られる手数料収益が重視されており、私も営業担当として多くの保険の販売に携わってきました。その頃の経験も踏まえてお話をしたいと思います。

 

相続対策としての保険

まず生命保険にも色々な種類があり、終身か期間があるものか、掛け捨て型か貯蓄型かなど迷う方も多いかと思います。そこで相続対策に適した保険を紹介していきます。

 

終身保証型

まず一番大事なことは保障が被相続人の死亡まで続く終身型であるということです。期間の設定されているものでは、満期到来後に被相続人がなくなった場合、相続対策としては意味がありません。

貯蓄型(養老保険型)

掛け捨て型ではなく、貯蓄型が相続対策の保険として適しています。掛け捨ての保険は保険料が安いですが、一定の年齢で保険が満了してしまうタイプが多く、保険期間を過ぎてしまうと何も戻らない為、こちらも相続対策としては意味がありません。

 

私も金融機関に勤務していた頃は上記の条件を満たす一時払い型の終身保険を相続対策としてお客様にご提案していました。2015年の法改正において、相続税の基礎控除が縮小された頃は特にお客様の関心が高く、普通口座に預けたままだった預金や、ほとんど利息の付かない定期預金を中途解約して保険に切り替える方も多くいらっしゃいました。

 

円か外貨か

 

現在多くの金融機関で販売されているのが外貨建ての保険商品です。最近になり日本の長期金利の上昇が話題になっていますが、より金利が高い海外の通貨(主に米ドル)で運用される保険商品です。最近は外貨建ての保険をメインとして販売している金融機関も多く、商品のラインナップもかなり増えています。こちらも相続対策の保険として利用されますが、メリットとデメリットがあります。

 

メリット1

高い外貨の利率で運用できる点です。同じ保険料でも円建てより死亡保険金を増やし、より多くの資産を相続人に残せる可能性があります。

メリット2

資産を分散できる点です。現在は歴史的な円安相場と言われており、円の価値が下がっている状況です。このような時にドルを保有していれば実質的な資産の目減りを避けることができ、保険金を受け取る際に、保険契約時よりも為替相場が円安にふれている場合はその差が利益となります。また相続が発生したときは受取人は保険金をドルで受け取ることもできる為、海外で暮らす子供がいる方にもおすすめできます。

 

デメリット1

為替の影響を受ける点です。保険金を日本円で受け取る際に、保険契約時よりも為替相場が円高にふれている場合は、払い込みした保険料よりも受取金額が減少する可能性があります。

デメリット2

為替手数料がかかる点です。保険には保険関係費や、年金管理費、解約控除など様々な手数料がかかりますが、円からドル、ドルから円に換える際に別途に為替手数料が発生します。

 

外貨建て保険については金融機関による強引な勧誘が話題になったこともありますが、上記のような商品性を理解し、少しでも多くの金額を相続人に残してあげたいというニーズをお持ちの方には、有効な相続対策の一つの選択肢となります。私が外貨建て保険を販売していた頃は1ドル100~110円程度で推移していた為、今も保有しているお客様はそれなりに資産が増えていることでしょう。外貨建て保険でも商品によって様々な特徴があり、為替リスクによる不安を軽減させる様な特約を付けた商品もあるので、商品内容を比較しそれらを活用するのもよいと思います。

 

その他相続対策に便利な保険

 

現在相続対策に対する関心が社会的に高まっていることから、様々な機能のついた商品があるのでご紹介いたします。

 

生前贈与機能付き保険

相続対策としては生前贈与も有効ですが、その仕組みを利用したのが生前贈与機能付き保険です。

決まった額を毎年指定した受取人に支払うことができます。贈与税は年間110万円までが非課税となるので、110万円以下で設定されるケースが多いようです。110万円以下であっても毎年決まった金額を同じ時期に支払うと定期金の贈与とみなされ課税されることがありますが、こちらの保険は受取人の変更ができ、給付金の支払いを止めることもできるので定期金贈与には当たりません。贈与契約書の作成が不要で、受取人の口座への振込も保険会社が行うので贈与の手続きが簡略化できます。商品によっては同時に複数人に贈与することができる商品もあります。

 

生命保険信託

生命保険信託は死亡保険金を信託銀行が管理し、保険金の受け取り方をあらかじめ決めておくことができる商品です。例えば障害のある子にお金を残したいが、一度に大金が入金されると自分で管理できず使いすぎてしまう可能性があります。そこで毎月20万など契約者が決めた金額、次期、頻度で支払うことで安心してお金を残すことができます。また受取人に万が一のことがあった際に次の受取人をあらかじめ指定することもできます。例え高齢の配偶者を受取人に設定し、配偶者に万が一のことがあった場合は子供に残すなど渡す順番を決めておくことができます。

ただし契約時、保険金支払い時の他、年間の手数料がかかる点は注意が必要です。

 

まとめ

今回は相続対策に有効な生命保険について説明しました。

相続対策は遺言書の作成、不動産の売買、信託の組成など多岐にわたりますが、生命保険による相続対策は比較的簡単にできる相続対策です。当社においても相続の専門家としての視点から、お客様の事情やニーズに合う保険を提案させていただいております。お気軽にご相談ください。