皆さんこんにちは。相続コンサルタントの稲垣です。
今回は地籍調査と境界確定測量についてお話したいと思います。
地籍調査とは
地籍調査とは、主に市町村が主体となって、1筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し境界の位置と面積を測量する調査であり、「国土調査」とも呼ばれます。
法務局に行くと公図と呼ばれる土地の位置や形状を示す図面を取得できますが、現在取得できる公図の約半数は明治時代の地租改正時に作成された図面をもとにしており、当時は測量士のような有資格者が測量するのではなく、土地所有者が自ら測量していたようです。
その為、かなり精度は低く(土地の面積により納税額が決まるので、面積を少なめに測量されるケースが多かったようです)、私も数多くの不動産売買に携わっていますが、地籍調査をしていない土地では、測量をして公図の面積と誤差がなかったことは一度もなく、面積が数十坪増えたケースもありました。
そのような状況を是正し、国土の実態を正確に把握するために行われるものが、「国土調査法」に基づく地籍調査です。行政の担当者と土地の所有者が境界について立会、確認した上で行われます。
昭和26年から開始した地籍調査ですが、令和4年度末時点において、地籍調査が完了している自治体は国土全体における34%、実施中が46%となり、全体の約2割の自治体で地籍調査が行われていない状況です。特に地権者が多く、権利関係が複雑になりがちな都心部では進捗の遅れが目立ち、東京都全体は25%、当社が所在するさいたま市にいたっては6%と、同じ埼玉県の坂戸市90%、鶴ヶ島市92%に比べかなり進捗に差があります。
🔗http://www.chiseki.go.jp/map/index.php
(参照:国土交通省地籍調査webサイト)
地籍調査をしていないとどうなるのか?
地籍調査が行われていないことによるデメリットは色々とありますが、やはり土地の境界が不明確であるという点です。土地を購入後、測量したら登記簿より面積が少なかった、逆に売却後、測量したら面積が少なくて減額を求められることも考えられます。また外構を作ろうとしたら境界の認識が隣の土地の所有者と違いトラブルになることもあります。
不動産売買契約においては測量の結果面積が違っても代金の変更はしないという特約を付けるケースが多いですが、地籍調査により境界と面積が明確になっている土地はより売却しやすいと考えられます。
相続対策としての境界確定測量
境界確定測量とは隣地の所有者や道路の管理者と境界について立会、確認をした上での測量のことです。
地籍調査は公費の負担で行われるものですが、その進捗は自治体によりかなり差があり、こちらから行政に対して地籍調査を依頼してもなかなか動いてはくれないでしょう。そこで自分で境界確定測量を行うとすると、数十万から百万以上の費用負担になり、決して安い金額ではありません。しかしながら、相続発生前に境界確定測量を行うことは相続対策として以下のようなメリットがあります。
メリット①
相続発生後に不動産を売却するケースはよくありますが、境界確定測量の実施を条件とするケースが多いです。
そして、境界確定測量をするとなると、隣地の方の所在がわからない、なかなか立会いに協力してもらえない、隣地からの越境があり解消の必要があるなど、かなりの時間を要するケースがあります。そうなると売却の機会を逃すことにもなりかねません。その為相続発生前に境界確定測量を行っておくと、相続後の不動産の処分がスムーズに進みやすくなると言えます。
メリット②
不動産を相続するにあたり、相続人が複数人いる場合、ひとつの不動産を複数人で共有するケースがあります。複数人で共有となると、不動産の処分、管理について意思決定がまとまりにくくなることもあり、なるべく共有は避けるべきだと考えられます。
共有を避けるためにあらかじめひとつの土地をいくつかに分けておき(分筆登記)、遺産分割協議を「分筆した後の土地を相続人がそれぞれ取得する」という内容にすることで共有状態を避けることができます。そしてこの分筆登記をする際にも境界確定測量が必須となります。但し、土地の形状や接する道路の状況により、その後の利用方法や資産価値が変わる為、分筆の際は注意が必要です。
まとめ
今回は地籍調査と境界確定測量についてお話させていただきました。登記上の面積と実測面積との差異は、地価の高い都心部ほど問題になり、わずかな差異が何百万という金額の差になることもあります。隣地との境界についても認識が曖昧なまま引き継いでしまうと、近隣とのトラブルに発展し、その処分、活用が難しくなるケースも考えられます。
当社ではこのような不動産の相続対策に対して積極的に取り組んでいます。是非お気軽にご相談ください。