皆さんこんにちは。相続コンサルタントの稲垣です。

今回は農地の売却についてお話します。

 

ご家族の相続が発生し農地を相続する機会がありますが、自分で農地を管理することは困難であり、相続を機に農地の売却を検討する方が多くいらっしゃいます。

 

そこで疑問になるのが、

「農地は売れるのかな?」

「売れたとしても二束三文なのでは?」

ということだと思います。

 

そこで今回はこの疑問に回答していきたいと思います。

 

農地の売却方法

農地の売却方法には2種類あります。1つ目は農地を農地のまま売却する方法です。一番手っ取り早い方法に思えますが、これは誰でも買えるというわけではありません。農地法により購入できる人の要件が制限されており、すでに農業を営んでいる方、農業を行う為に必要な機械を有している、常時すべて土地を使用しているなどの条件を満たしていることが必要となります。購入できる人が限られている為、どうしても金額は低くなりがちであり、「農地は二束三文」と言われてしまうのはこのような事情があるからだと考えられます。

 

2つ目は農地を農地以外に転用して売却する方法です。こちらについても農地法や農振法により制限があり、全て農地を転用できるわけではありません。また購入者の土地の使用の目的や、その利用をするための資金があるか(宅地に転用して住宅建築をすることが目的の場合は、土地購入資金の他に住宅建築資金もあるか)なども転用の要件となります。しかしこれらの条件をクリアできれば宅地並みの金額で売却できるケースも多い為、可能であれば農地以外に転用しての売却が望ましいと思います。

 

 

 

転用できる農地かどうか

では自分が相続した農地が転用できるかどうかはどのように調べればいいのでしょうか。まずは自分の農地の種類を調べる必要があります。

 

農地の種類

・農用地区域内農地

いわゆる「青地」と呼ばれるものであり、最も転用へのハードルが高い農地になります。自治体にもよりますが、転用の可否の判断に半年から1年以上かかり、特別の事情がない限りはほぼ転用は不可となります。

・甲種農地

市街化調整区域の農地の中でも特に良好な営農条件を備えている土地であり、原則不許可となります。

・第1種農地

良好な営農条件を備えている農地であり、原則転用は不許可となっていますが、公共性が高い目的の為に転用する場合などは認められることもあります。

・第2種農地

市街地化が見込まれる土地や生産性が低い農地が該当します。土地周辺の農地が代用できない場合は許可されます。

・第3種農地

市街地区内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地であり、原則許可されます。特に市街化区域内の農地については届出だけで完了し、原則許可不要となっています。

 

以上をまとめると集団性が高く(周辺も農地が多い)、生産性の高い農地ほど転用が難しく、市街地に一角だけ取り残されたような農地は転用が容易だという傾向があります。農地の種類については農地の所在する自治体の農業委員会、農政課等で調べることができます。

 

宅地に転用するには別途に許可が必要なケースもあります

農地を転用するにあたり、宅地又は雑種地(駐車場、資材置き場等)に転用するケースが多いのですが、宅地への転用が可能であればより多くの買主を見つけやすくなり、売却金額も高くなります。宅地に転用する場合は農地の所在する場所、面積によっては都市計画法の「開発行為の許可」が必要になります。

 

開発行為とは「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をすること」と定義されています。分かりやすく言えば宅地にして建物を建築する為に盛土をしたり、排水設備を設置することなども開発行為に該当します。これらの行為を行う場合は都道府県知事から開発行為の許可を受けなければいけません。

 

・開発行為の許可が必要になる場合

市街化区域内における開発行為 

開発面積が1,000㎡(自治体によっては異なる)を超える場合

 

市街化調整区域における開発行為

開発面積にかかわらず許可が必要

 

市街化区域と市街化調整区域の線引きがされていない区域(非線引き区域)

開発面積が3,000㎡(自治体によっては異なる)を超える場合

 

開発行為の許可が必要となる場合は農地転用との同時申請が基本であり、双方が許可されないと宅地への転用はできません。開発許可には自治体の条例により、接道の幅員や排水施設の状況等を満たすことが条件となる場合があります。開発行為の要件については農地が所在する自治体の建築指導課、都市計画課等で確認することができます。

 

まとめ

以上のように農地の売却には宅地と比べて規制も多く、それらをクリアしていくことが必要になり、宅地の売買と比較して時間もかかります。しかしながら冒頭で申しあげたように「農地だから売れない」「どうせ二束三文だろう」と思い込んでいる方も多く、売れないと思っていた農地が宅地に転用でき、宅地並みの価格で売却できたと感謝されたことも多くありました。今後農地の相続が見込まれる方、農地を相続された方はまず自分の農地について調べ、早めに対策を検討していくことが肝要だと思います。当センターでは農地の売却、活用をワンストップでお手伝いすることができます。お気軽にお問い合わせください。