相続が発生し相続税申告が必要となったら、一体誰に相談するべきでしょうか。相続税申告はご自身で手続きをすることも可能ですが、不安が少しでもある場合には、専門家に相談することがおすすめです。では、相続税申告は誰に相談し、相談するメリットにはどのような点が挙げられるでしょうか。今回の記事では、「相続税申告の相談」にクローズアップします。

 

相続税申告は自分でできる?相続税申告が必要なケースとは

 

相続に直面した場合、多くの方は「自分は相続税の納付が必要なのか」と不安になるのではないでしょうか。しかし、すべての相続に相続税申告が義務付けられているわけではありません。プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合には、申告の必要はありません。また、相続財産があったとしても、以下の基準を満たしている場合には、相続税は発生しません。

 

相続税が発生する要件

 

相続税の対象となるのは、プラスの財産(現金や預貯金など)からマイナスの財産(債務)を引いたものです。相続税申告の際には基礎控除が用意されており、相続財産から基礎控除を引けます。

 

■基礎控除 3,000万円+600万円×法定相続人数 

たとえば、夫の相続について妻と子の2名が相続する場合は、4,200万円が基礎控除の金額です。法定相続人が1名なら3,600万円です。つまり、法定相続人が何名いたとしても、相続財産の総額が3,600万円を下回るなら、相続税納付は不要です。なお、法定相続人がいない場合(法定相続人はいないが、遺言書で遺贈などをする場合)は、基礎控除は3,000万円となります。

 

一方で、基礎控除を大きく超える相続財産があり、その他の種類の控除を適用しても高額の相続財産が手元に残る場合は相続税が発生する可能性が高いでしょう。

 

しかし、慌てる必要はありません。基礎控除を超えた場合でも、その他の控除を適用すると相続税が発生しないケースもあります。

 

相続税の発生が無かったら、申告は不要?

 

では、相続税の発生が無かったら申告自体は不要なのでしょうか。「相続財産が3,600万円を下回っているから、相続税申告は不要」、とここまでを読んで思う方がいるかもしれません。しかし、相続税の発生と、申告については切り離して考える必要があります。基礎控除以内の相続財産であれば原則として申告は不要ですが、実は控除を適用するためには申告が必要なケースがあるのです。

 

■相続税申告が必要な控除の一例

たとえ相続税がかからない場合であっても、相続税申告が必要とされる控除は以下のとおりです。

 

・配偶者の税額の軽減

税額軽減の明細を記載した上で、遺産分割協議書を添えて相続税申告を行う必要が。

 

・小規模宅地等の特例

相続税申告書に特例の適用について記載し、計算書や遺産分割協議書などを添える必要があります。

 

・農地などを相続した場合の納税猶予の特例

必要要件を満たしている場合、相続税申告書に必要なものを記載した上で、農地など納税猶予税額と利子税の額に見合った担保の提供が必要です。

 

このように必要に応じて用意されている一部の控除については、相続税申告を行わなければ適用されません。自動的に適用となる控除もあれば、そうではない控除もあり、ご自身での判断は難しいと言えるでしょう。

 

参考:“No.4158 配偶者の税額の軽減”国税庁ウェブサイト(参照2023.11.30)  

参考:“No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)”国税庁ウェブサイト(参照2023.11.30)

参考:“No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例”国税庁ウェブサイト(参照:2023.11.30)

 

相続税申告を専門家に相談した方が良いケースとは

 

相続税は日本国内で発生している相続全体の、約1割程度に発生しています。つまり、多くのケースでは相続税の納付は不要です。しかし、相続税申告を行わなければ適用されない控除もあり、安易に相続税申告は「不要」とご自身で判断されるのは危険です。特に以下に挙げるケースでは、相続税申告を専門家に相談することがおすすめです。

 

相続財産の調査が難航しそうなケース

 

相続税申告の必要・不要を判断するためには、被相続人が遺した相続財産の総額を把握する必要があります。相続財産には、現金や預貯金、有価証券や骨とう品なども含まれます。会社を経営されていた方や、転勤が多かった方(各地に預金口座をお持ちの可能性がある方)など、ご家族には把握しにくい相続財産がある場合、専門家と相談しながら慎重に調査を行い、相続税申告の有無を確認されることがおすすめです。

 

適正な財産評価が分からない方

 

相続財産の中には不動産も含まれますが、価値の評価が難しいケースもあります。土地や建物は、実態と乖離するような価格となるケースも多く、現地調査や専門家による鑑定が必要となる場合があります。また、山林や田畑などの評価に悩むケースも、専門家に評価を依頼されることがおすすめです。

 

控除などのアドバイスを受けたい方

 

相続税に関しての相談は最寄りの税務署でも受付をしていますが、節税効果のある控除をわかりやすく解説してくれるとは限りません。あくまでも手続き上のアドバイスに留まることが多いのです。適用できる控除によっては相続税申告が必要となるため、控除・申告について、セットで教えてくれる専門家に相談してみることがおすすめです。

 

相続財産が多い方

 

現金や預貯金、不動産などいろんな種類の相続財産がある場合、相続税申告が必要となる可能性が高くなります。すでに生前から基礎控除を超えるような財産があると把握している場合、相続開始後は申告に向けて早期に相談を開始されることがおすすめです。

 

相続全般に不安がある方

 

相続は相続税申告以外にも、さまざまな手続きが必要となる場合があります。相続人が複数おり、遺言書が無い場合は遺産分割協議を行う必要があります。また、不動産が相続財産に含まれている場合は相続登記、相続時にトラブルが予想される場合は円満な解決に向けて相談を開始されることがおすすめです。相続全般に不安がある場合、早期に専門家に相談することが大切です。

 

相続税申告は誰に相談するべき?

 

相続に関しては専門家が多数存在しており、誰に相談をするべきか迷ってしまうかもしれません。では、相続税申告に関しては誰に相談するべきでしょうか。結論から言うと、相続税は税に関することであり、税理士への相談がおすすめです。相続税の計算はもちろん、財産の評価や控除のアドバイスや相続税申告など、依頼者のために相続税全般のサポートを実施しています。税に関しては相続税を得意とする税理士にサポートを依頼しましょう。

 

相続税以外の悩みもセットの場合は、誰に相談する?

 

相続時に相続税が発生すると、納付期限以内に手続きを進める必要があり、早急に相続税調査や、遺産分割協議などを進めていく必要があります。しかし、この時に相続税以外の悩みが発生するケースも決して少なくありません。例として、以下のようなケースです。

 

■相続人間でトラブルが起きている

複数人の相続人がおり遺産分割協議がまとまらない、面識のない相続人がいるなどのケースでは、相続が紛争化しやすい側面があります。相続人間でトラブルが起きそう・起きている場合には、弁護士への相談がおすすめです。

 

■相続登記が必要な不動産が多い

不動産を相続する場合は、相続登記が必要なことをご存じでしょうか。相続登記は義務化されており、令和6年4月1日に施行されます。所有者が分からない土地や建物の発生を防ぐことを目的としているのもあり、過去の相続分についても相続登記の対象です。相続開始後3年以内に登記をしなければ、過料も発生します。登記に関しては専門家である司法書士への相談がおすすめです。

 

複数の問題が相続手続きの中で発生している場合は、税理士以外にも弁護士や司法書士のアドバイスを受けることがおすすめです。

 

相続手続き全般は、複数の相続専門家が対応の相続センターへ

 

相続には相続税申告はもちろんのこと、その他の悩みも解決する必要があります。そこで、相続に関する相談は、「ワンストップ」で解決できる相続センターへのご相談がおすすめです。さいたま幸せ相続相談センターでは、税理士・弁護士・司法書士や不動産鑑定士など、相続の悩みを一元的に解決できる専門家が所属しています。また、相続相談の実績も多く、さまざまなケースに対応した経験も蓄積されています。相談時には見積もりも行い、丁寧に必要な費用の解説も行っています。

 

相続税申告はもちろん、相続全般に関するお悩みやご相談は、一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターにおまかせください。

 

執筆:岩田いく実

監修:高田江身子税理士事務所 高田江身子 税理士