「母親が亡くなったけど、どのぐらいの遺産があるのか調べたい。」
「相続税申告が必要かも。でも家族が遺した財産はどうすればわかるの?」
「相続財産の調査方法が大切と聞いた。一体何をすればいい?」
ご家族が亡くなったら、さまざまな種類の手続きを進める必要があります。その中の1つに、被相続人が遺した「相続財産」を調査し、総額を確定する手続きが挙げられます。相続財産の調査は、相続人がどのぐらいの財産をもらえるのか定めるだけでなく、相続税申告などの手続きにも影響するため、速やかに行わなければいけません。
そこで、今回の記事では相続財産の調査について、方法を詳しく紹介します。悩んだ時の対処法も詳しく解説しますので、ぜひご一読ください。
相続財産とは|なぜ調査が必要?
相続財産とは、遺産とも呼ばれているもので、被相続人が遺した財産や権利のことを意味します。この章では、相続財産に含まれるものや、なぜ死後に相続人が調査をする必要があるのか、詳しく解説します。
相続財産は家族が死亡時点で保有していた「一切の権利義務」のこと
相続財産は被相続人が死亡時点で保有していた一切の権利義務のことを意味し、以下に挙げるものが該当します。(民法第896条本文)
①プラスの財産
被相続人が遺したプラスの財産は相続財産に含まれます。例として、現金や預貯金、有価証券や不動産が該当します。自動車などの動産ももちろん含むほか、著作権などの権利も該当します。
②マイナスの財産
住宅ローンやリースの残債、保証債務や滞納税金などのマイナスの財産も相続財産に含みます。また、未払いの医療費や保証債務なども該当するため注意が必要です。
相続財産はいつ行うべき?なぜ調査が必要?
相続財産は相続の開始後から早急に調査を開始し、金額や財産の種類の確定を急ぐ必要があります。では、なぜ急いで調査を行う必要があるのでしょうか。
①相続放棄、限定承認
もしも被相続人の遺した債務が大きく、相続人では返済が難しい場合は相続放棄や限定承認を検討する必要があります。しかし、相続放棄や限定承認は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に行う必要があります。
なるべく早く債務を含めて相続財産の総額を特定しなければ、相続放棄などの手続きをすべきなのか判断ができません。
②相続税申告の期限
相続税申告についても期限があります。「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。納税手続きの前には、相続税の計算も必要となるため、早めに相続財産を特定する必要があります。
③遺産分割協議
遺産分割協議を進めるためには、誰がどの財産を、いくらもらうのか決める必要があり、相続財産を洗い出さなければそもそも協議ができません。
遺産分割協議そのものには期限がありませんが、相続税申告などの手続きがある場合には遺産分割協議が終わっていないと受けられない控除や特例があるため、早めに協議を行うことがおすすめです。
相続財産の調査方法とは?
相続財産の調査はどのように進められるでしょうか。この章では調査方法に焦点を当ててご紹介します。
家族が管理していた預貯金口座を確定しよう
相続財産の調査方法には、預貯金口座の特定が挙げられます。生前に使っていた給与の受取口座や、家賃・スマホ代などの引き落としを行っていた口座など、心当たりがあるものは通帳やカードを探し、特定をしましょう。通帳が見つかると、特定の消費者金融や銀行への返済履歴が発覚し、債務が見つかることもあります。
普通預金・定期預金などはもちろんのこと、通帳の無いネットバンキング(例・楽天銀行やソニー銀行など)も含みますので、見落とさないようにしましょう。
株式など有価証券の調査
株式などの有価証券も調べる必要があります。
・上場株式なら、証券会社からの郵便物や、ほふり(※1)の活用で取引先の証券会社までは特定ができる(銘柄はその後、取引のある証券会社へ問い合わせが必要です)
・非上場株式の場合は株式の発行会社に問い合わせを行う
(※1)ほふりとは、証券保管振替機構のこと。相続時に問い合わせを行うと、被相続人が取引していた証券会社が特定できる可能性がある。https://www.jasdec.com/
不動産の特定
不動産の特定には、以下の資料を活用してみましょう。
・被相続人名義の固定資産納税通知書を確認する
・被相続人より前に亡くなっている方宛に来ている固定資産税納税通知書も確認する
(固定資産税通知書は、被相続人より前に亡くなった家族宛てに届くこともある)
・名寄帳
・非課税証明書
・不動産登記権利情報や権利証
自動車やバイクなどの所有者を確認
被相続人が所有していた自動車やバイクなども相続財産に含みます。
ただし、リースの場合は契約者死亡による手続きを行うことが一般的です。所有者を確認し、リース契約が分かった場合には、契約先に報告しましょう。
相続財産の調査における注意点とは
相続財産は多岐にわたるため、特定に苦労することがあります。そこで、この章では調査の際に知っておきたい注意点を紹介します。
ネットバンキングやネット証券は見落としやすい
近年ネットバンキングやネット証券を利用している方は多く、店舗型であっても通帳発行をしないことを勧める銀行も増えています。こうしたネット型の取引や、パソコンやスマホで完結するため相続時には発見が遅れることがあります。相続財産の調査の際には、パソコンやスマホのアプリも確認されることがおすすめです。
生命保険の課税についての注意点
生命保険を相続人が受け取る場合には、非課税枠があるため、生前にできる相続対策として活用している方は多いですが、非課税枠(500万円×法定相続人数)を超える場合は、相続税の課税対象となります。また、相続人以外の人が取得した場合は非課税枠の適用がありません。
また、孫が受け取ると養子になっていたとしても相続税が2割増しとなる、という点も押さえておく必要があります。
参考:“ 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金”国税庁ウェブサイト
不動産は相続登記が必要
不動産の取得時には、相続登記が必要です。(令和6年4月1日義務化)
相続・遺贈によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を行う必要があります。
また、遺産分割で取得が決まったら、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記をする必要があります。正当な理由がなく義務に違反してしまったら過料が科せられるおそれがあるため注意が必要です。
債務の有無を必ず確認すること
相続財産にはマイナスの財産も含むため、債務も引き継ぐ必要があります。債務をきちんと調査することなく、車を売却したり預貯金を取得したりすると、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。
被相続人にローン等の借入があった場合は、債務の総額がわかるまで、単純承認とみなされる行為は控えましょう。
相続問題の対処法|相続財産の調査に悩んだらどこに相談するべき?
相続財産の調査に悩んだら、どこに相談をするべきでしょうか。詳しくは以下です。
士業
弁護士や税理士、司法書士や行政書士などの士業は、相続財産の調査に関するご相談に対応しています。相続手続き全般に精通しているため、相談先に検討しておくと良いでしょう。
・弁護士…遺産分割協議の決裂や、複雑な限定承認などに対応
・税理士…相続税申告などに対応
・司法書士…相続登記などに対応
・行政書士…紛争性のない相続手続きなどに対応
無料の相続相談
市役所などで実施されている無料の法律相談では、相続相談を行うことも可能です。各自治体によって相談できる内容や回数、時間などは異なりますが、まずは相続財産の調査について誰かに聞いて欲しい、と思ったらこうした機会を利用すると良いでしょう。
相続相談センター
相続に関して何から相談したら良いかわからない、専門家に相談したいけど心当たりがいない、などのお悩みには、「相続相談センター」をご活用いただくこともおすすめです。不安や悩みに応じた対応が行われており、心強い味方となってくれます。
まとめ
この記事では、相続財産の調査について、調査方法や悩んだ際の対処法を中心に詳しく解説しました。相続にはいろんな悩みが生じやすいものです。だからこそ、多くの専門家が相続相談に対応できる相続相談センターのご活用がおすすめです。お気軽に、「一般社団法人 さいたま幸せ相続相談センター」にお問い合わせください。
執筆:岩田 いく実
監修:稲垣 一樹 行政書士