遺言書の法務局保管制度はご存知でしょうか。

遺言書の法務局保管制度とは、法務局が遺言書を保管してくれる制度です。

法務局で遺言書を保管することで、

遺言書の内容を守り、亡くなった方の意思を尊重することを目的としています。

 

本コラムでは遺言書の法務局保管制度の手続きの流れについて、わかりやすく解説します。

ぜひご一読ください。

 

参考 遺言書は自分で作成できる?遺言書の書き方や保管場所をわかりやすく解説【相続コラム】

 

遺言書とは

遺言書とは亡くなった後に、誰にどのくらいの財産を残すのかを記載した文書です。

 

遺産相続のために遺言書の作成を考えている方も多いと思います。

遺言書は財産の相続方法や子供の認知に法的な効力があります。

円満な相続のためには、きちんとした遺言書を作成しておくことが大変重要です。

 

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言書の本文を自書し、署名押印したものです。

自筆証書遺言は自分だけで作成でき、費用がかかりません。

一人で作成することができるため、

遺言書の内容を秘密にできることが自筆証書遺言のメリットです。

 

自筆証書遺言のデメリットは、以下のとおりです。

・自分で作成するため、形式上の不備で無効になるケースが多い。

・遺言書の改ざんや破棄される可能性がある。

・高齢の遺言者の場合、意思能力の有無で争いになる場合がある。

・保管場所に注意しないと、遺言書を見つけてもらえない。

・法務局に保管されていない自筆証書遺言書を発見した場合は、

 家庭裁判所へ提出し検認の手続をおこなう必要がある。(検認の手続に2~3か月かかる)

 

自筆証書遺言書の存在を誰にも伝えずに自宅保管しておくと、

いざ相続がスタートしたときに、遺言書を誰にも見つけてもらえない可能性があります。

また、紛失や遺言書を書き換えられてしまうといった恐れがあります。

 

そこで知っていただきたいのが

自筆証書遺言書を法務局で保管できる自筆証書遺言書保管制度です。

 

自筆証書遺言書保管制度とは

法務局が、自筆証書遺言書の原本および画像データを保管してくれる制度があり、

これを自筆証書遺言書保管制度とよびます。

2020年7月よりスタートした新しい制度です。

法務局が遺言書を保管してくれるため、

自筆証書遺言のデメリットである遺言書の紛失や改ざんのリスクを回避することができます。

 

自筆証書遺言書保管制度のメリット

自筆証書遺言書保管制度のメリットは以下のとおりです。

1.遺言書の紛失や改ざんを防止することができる

2.形式の不備で遺言書が無効になるのをふせぐ

3.家庭裁判所の検認手続きが不要

4.遺言書が法務局に保管してあることを通知してくれる

5.全国の法務局で遺言書をモニター閲覧することができる

 

1.遺言書の紛失や改ざんを防止することができる

法務局で保管しているため、遺言書の紛失や改ざんされる心配がありません。

また遺言書の存在や内容を第三者に知られることがないため、

遺言者のプライバシーを守ることができます。

 

2.形式の不備で遺言書が無効になるのをふせぐ

自筆証書遺言書保管制度では、保管時に遺言書の形式的なチェックをしてもらえるため、

形式上で不備になる可能性がなくなります。

 

3.家庭裁判所の検認手続きが不要

自筆証書遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言書は

家庭裁判所による検認が必要です。

検認は準備期間を含めると2~3か月かかります。

 

また、自宅などで亡くなった方の自筆証書遺言書を発見した場合は、

検認を受けずに遺言書を開封すると過料が科されてしまいます。

しかし、自筆証書遺言書保管制度を利用し法務局に預けている遺言書の場合は、

検認不要となり、すぐに相続の手続を始めることができます。

 

4.遺言書が法務局に保管してあることを通知してくれる

遺言者が亡くなると、相続人に遺言書が法務局に保管されている旨の

お知らせが届くシステムを利用することが出来るため、

遺言書が相続人に発見されないのではないかという不安を解消できます。

 

5.全国の法務局で遺言書をモニター閲覧することができる

全国の法務局で遺言書をモニターで閲覧できるため、

相続登記や銀行などの各種手続きに必要になる証明書の

交付手続きの請求を行うことができます。

 

例えば、遺言書を保管している法務局が東京都で、

相続人の住んでいる場所が大阪である場合、

大阪にある法務局のモニターから東京にある法務局で

保管している遺言書を閲覧することができます。

 

自筆証書遺言書保管制度の注意点

1.手数料がかかる

2.遺言書の内容を変更したい場合新しい遺言書を作成する

 

1.手数料がかかる

自筆証書遺言書保管制度の手数料は以下のとおりです。

遺言書を1通保管してもらいたい場合は3,900円かかります。

保管申請するときに3,900円を支払えば、

その後維持費などを支払う必要はありません。

ただし、遺言者が亡くなり相続人が遺言書を閲覧したい場合は、閲覧料(1,400円)がかかります。

 

遺言書の保管の申請                3,900円

遺言書の閲覧の請求(モニターによる)       1,400円

遺言書の閲覧の請求(原本)            1,700円  

遺言書情報証明書の交付請求            1,400円

遺言書保管事実証明書の交付請求           800円

申請書等・撤回書等の閲覧の請求          1,700円

 

2.遺言書の内容を変更したい場合新しい遺言書を作成する

遺言書を法務局に保管した後に、

内容を変更する場合は保管している遺言書を撤回し、

再度新しい遺言書を作成する必要があります。

 

撤回する場合に手数料は発生しませんが、

新たに遺言書を保管してもらう場合は、再度手数料(3,900円)を支払うため、

遺言書の内容をきちんと確認してから法務局で保管してもらいましょう。

 

自筆証書遺言書保管制度の手続きの仕方

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、以下の5つのステップが必要です。

ステップ1 自筆証書遺言を作成しましょう

ステップ2 遺言書保管所を決めましょう

ステップ3 遺言書の保管申請書を作成しましょう

ステップ4 保管申請の予約をしましょう

ステップ5 遺言書保管所にいき,保管の申請をしましょう

 

ステップ1 自筆証書遺言を作成しましょう

自筆証書遺言を作成しましょう。

形式は法務局でチェックしてもらえますが、

法的に有効かどうかの判断は法務局ではおこないません。

法的に有効な遺言書をしっかりと残しておきたい方は、専門家に相談しましょう。

 

自筆証書遺言の書き方についてはこちらの記事をご覧ください。

 

 

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、以下の点に気を付けましょう。

・A4サイズの用紙に全文自筆で書く。

・余白は上部5㎜、下部10㎜、左20㎜、右5㎜以上を確保する。

・複数枚にわたる場合はページ番号を記載する。

・複数枚にわたる場合でもホチキスはとめない。

・封筒は不要。

 

法務省のウェブサイトに遺言書の用紙例が掲載されています。

用紙例を拡大縮小せずにA4サイズで印刷すると遺言書として使用できます。

印刷後は必要な余白(上部5㎜、下部10㎜、左20㎜、右5㎜以上)が

確保できているか、再度確認するようにしましょう。

 

参考:“遺言書の用紙例”法務省ウェブサイト

https://www.moj.go.jp/MINJI/common_igonsyo/pdf/001321932.pdf

(参照2023.04.06)

 

ステップ2 遺言書保管所を決めましょう

保管の申請は,次のいずれかの遺言書保管所の中から選択できます。

・遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所

・遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所

・遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

 

遺言者が亡くなり相続がスタートすると、

相続人となる方は遺言書を全国の法務局で

モニター閲覧することができます。

そのため、相続人となる方のお住まいの近くの

法務局までわざわざ申請しに行く必要はありません。

 

ステップ3 遺言書の保管申請書を作成しましょう

保管申請書の様式は,法務局のウェブサイトでダウンロードすることができます。

最寄りの法務局で入手することも出来ます。

 

参考:“遺言書の保管申請書”法務省ウェブサイト

https://www.moj.go.jp/MINJI/common_igonsyo/pdf/001321933.pdf

(参照2023.04.06)

 

ステップ4 保管申請の予約をしましょう

遺言書保管所の予約を取ります。
法務省のウェブサイトで遺言書保管所の予約をすることができます。

参考:“08 予約 〜予約をお取りください!〜”法務省ウェブサイト

https://www.moj.go.jp/MINJI/08.html

(参照2023.04.06)

 

ステップ5 保管の申請をしましょう

予約が取れたら、予約日に自筆証書遺言書保管制度を利用するときに

必要なものを持ち、保管申請しに法務局へ行きましょう。

必要なものについては、後述しますのでご確認ください。

 

自筆証書遺言保管制度を利用するときの持ち物

法務局へ遺言書を保管してもらう時には、以下の5点が必要です。

 

1.遺言書

2.保管申請書

3.住民票の写し等
本籍及び筆頭者の記載入りであって,マイナンバーや住民票コードの記載のないもの

4.運転免許証またはマイナンバーカード

5.収入印紙(遺言書1通の場合は3,900円分の収入印紙)

 

まとめ

遺言書を作成する際には、自分の希望や家族の状況などを考慮し、

適切な方法を選択することが重要です。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、

形式的な無効になることはありませんが、

法的に有効な遺言書をしっかりと残したい場合は、専門家に相談することをおすすめします。

 

さいたま幸せ相続相談センター では、初回無料相続相談(約1時間)を実施しています。

公正証書遺言書を作成する費用は165,000円(税込)~(公証人手数料が別途必要となります。)

自筆証書遺言書を作成サポートの費用は27,500円(税込)~

(法務局で自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の手数料は

 申請1件(遺言書1通)につき,3,900円です。)

詳しくは弊社ホームページをご覧ください→遺言書作成

 

ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

執筆:成田 春奈