皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

 

相続のご相談をお受けする際に「どんな資料が必要なの?」といったご質問をいただくことが多いので、今回のコラムでは相続手続きの中で一般的にどのような資料が必要になるかを相続手続きの期限の順番で説明したいと思います。

被相続人様・相続人様・相続財産によって必要書類は異なりますので、「こんなものが必要なのか」という目安としてご確認頂けますと幸いです。

 

相続放棄の必要書類

相続放棄を行う場合、相続が発生した日から(または相続を知った日から)3か月以内に被相続人様の最後の住所地の家庭裁判所へ相続放棄の申述を行います。

非常にタイトなスケジュールですが、下記の資料を集める必要があります。

申述人(相続放棄を行う方)と被相続人様との関係によって必要な資料は異なりますが、被相続人様の戸籍、住民票除票や戸籍附票、申述人の戸籍、上の順位の相続人様がいないことがわかる戸籍、被相続人様と相続放棄を行う方の繋がりがわかる戸籍が必要になります。

 

 

ご自身で行う場合

①相続放棄の申述書

※裁判所のHPからダウンロードできます。

  相続の放棄の申述書(成人) https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html

  相続の放棄の申述書(未成年者) https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13_02/index.html

 

②標準的な申立添付書類
【共通】

1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票

2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本

 

【申述人が,被相続人の配偶者の場合】

3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】

3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

【申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

【申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】

3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

6. 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

司法書士に依頼する場合

相続放棄の申述書にご記入頂く必要はありますが、司法書士への委任状で戸籍謄本等は取得ができますので特段ご用意いただく資料はありません。

 

準確定申告の必要書類

被相続人様が生前確定申告を行っていた場合は、相続発生日から4か月以内に準確定申告を行います。

還付のために確定申告を行っていた場合は必須ではありませんが、収入を得て納税のために確定申告を行っていた場合は準確定申告が必須となりますので、過去の確定申告書の控えをご確認いただき、還付のための確定申告か納税のため確定申告かをご確認ください。

こちらも相続放棄と同様にタイトなスケジュールで下記の資料を作成・収集する必要があります。

 

ご自身で行う場合

①確定申告書

②被相続人様の給与や年金の源泉徴収票

③被相続人様の保険等の控除証明書

④所得税及び復興特別税の確定申告書付表

⑤被相続人様の医療費の領収書

⑥委任状(相続人様が複数いて還付の場合)

 

税理士に依頼する場合

準確定申告の必要書類は基本的に相続人様に集めていただくことになりますが、①確定申告書は税理士での作成となります。

被相続人様に給与や年金以外の収入がある場合には過去の確定申告書控えがあるとスムーズになります。

 

遺産分割協議の必要書類

相続人様が複数の場合、被相続人様の相続財産をどのように分けるかを決める遺産分割協議書を作成します。

以降の段階で必要になるため、通常相続税申告や不動産の相続登記の段階の中で遺産分割協議を行いますが、共通事項として先にまとめます。

遺産分割協議を行う中で、相続人様がどなたなのか・どのような相続財産があるのかが重要になります。

万が一遺産分割協議のやり直しを行う場合は、贈与税が課税される可能性があるので、遺産分割協議のやり直しが無いように、しっかりと調査をしていただくことをお薦めいたします。

 

ご自身で行う場合

①遺産分割協議書

②被相続人様の出生からお亡くなりになるまでの連続した戸籍謄本

③被相続人様の住民票の除票又は戸籍の附票

④相続人様全員の戸籍謄本

⑤相続人様全員の印鑑証明書・実印

⑥相続財産の詳細が分かる資料(口座の残高証明書、不動産の登記簿謄本、有価証券等)

 

税理士・司法書士に依頼する場合

税理士や司法書士に依頼する場合でも⑤や⑥の一部はご用意頂く必要はありますが、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成はお任せいただけます。

 

相続税申告の必要書類

被相続人様の相続財産が基礎控除以上だった場合、相続発生の翌日から10か月以内に相続税申告を行う必要があります。

相続財産を漏れなく申告する必要があるので他の段階と比較しても必要書類も多くなります。

ここでも、後から相続財産が見つかり修正申告を行うことが無いようにしっかりと資料を集めていただくことをお薦めいたします。

 

①遺産分割協議の必要書類

 ※遺産分割協議の必要書類⑥については以下で詳しく記載します。

②預金口座の相続発生日時点の残高証明書、通帳のコピー(取引履歴)

③証券口座の相続発生日時点の残高証明書、取引残高報告書、配当金支払報告書

④不動産の資料(登記簿謄本、公図、地積測量図、名寄帳・固定資産評価証明書等)

⑤生命保険・損害保険の保険証券、死亡保険金・入院給付金の支払明細書、相続発生日時点の解約返戻金証明書

⑥死亡退職金の支払明細書

⑦車検証のコピー

⑧贈与税申告書、贈与契約書、相続時精算課税制度を利用した贈与税申告書

⑨借入金の残高証明書・返済予定表

⑩相続発生日以降に支払った各種税金の納税通知書・領収書

⑪相続発生日以降に支払った医療費・公共料金の領収書

⑫葬儀費用の領収書

⑬相続人様のマイナンバーがわかる資料(通知カード、マイナンバーカード、住民票)

 

相続税の申告に必要な書類は、基本的にはご自身でご用意いただく必要があります。

書類の収集はスムーズに進んでも1か月はかかるかと思いますので、可能な限りお早めに収集を開始していただくと余裕を持って相続税申告に臨めるかと思います。

 

不動産の相続登記の必要書類

被相続人様が不動産を所有していた場合は、遺産分割協議書の内容に沿って相続人様に相続登記(不動産の名義変更)を行います。

基本的には遺産分割協議の必要書類と重複しますが、いくつか追加で必要な書類があります。

 

①登記申請書

②遺産分割協議の必要書類

③不動産を相続する方の住民票

④登記申請を行う年度の固定資産評価証明書

⑤登録免許税

 

実は過去に一度自身で書類を集めて法務局で登記申請を行ったことがあるのですが、完璧と思っていた書類に不備があったり、平日しか登記申請を行えないこともあり、もし今後登記申請を行う機会があったら間違いなく司法書士の先生に依頼すると思います。

 

金融機関の必要書類

被相続人様ご名義の金融機関口座がある場合は、各金融機関ごとに口座の解約手続きを行う必要があります。

各金融機関ごとに若干内容は異なりますが、一般的に下記の書類が必要になります。

こちらもご依頼いただくことは可能ですが、各金融機関ごとに相続窓口を設けており、平日のご対応が可能な方はご自身でご対応いただいても良いかもしれません。

 

①各金融機関所定の書式

②遺産分割協議の必要書類

 ※金融機関によって相続人様の印鑑証明書の有効期限が異なります(3か月か6か月)のでご注意ください。

 

まとめ

ご状況によって必要書類が異なる場合はありますが、一般的な必要書類は以上となります。

相続手続きを進める中でまずネックとなるのが戸籍の収集かと思います。

特に被相続人様の最後の戸籍から出生までを辿るためには新しい戸籍からその前の本籍地を読み取って申請を行うのですが、手書き時代の戸籍は達筆なものが多く読み取るのも一苦労です。

また、相続税申告では相続人様に集めていただく書類が多く、被相続人様がお亡くなりになった悲しみの中で多くの書類を集めることは大きなご負担になるかと思います。

そのため、ご自身に万が一があった際に相続税申告が必要と思われる方は、相続税申告の必要書類をわかりやすくまとめていただくことも大事な生前対策になります。

※各段階で必要な戸籍は相続発生後のものが必要なので、ご健在なうちから戸籍を集める必要はありません。

 

相続手続きでは役所や金融機関といった平日しか対応していただけない窓口が多いので、書類の収集が難しいと感じる方は当センターへご相談ください。

上記のような書類が揃っていない状態でも、お手元の書類のみでご相談いただけますので、お気軽にご連絡ください。

 

参照元:裁判所-相続放棄の申述

https://www.courts.go.jp/saitama/saiban/tetuzuki/souzokuhouki_sinjutu/index.html

 

監修:司法書士法人T-リンクス 小川直孝 司法書士