皆さん、こんにちは。
一級建築士、相続・不動産コンサルタントの城和です。
「不動産を相続したけど利用をすることがないので売却をしたい」というご相談を受けることがあります。
しかし、いざ売却をといったときにしっかりと準備ができておらず売却ができなかったといったケースもございます。
今回のコラムではそのような相続不動産にまつわるトラブル事例をご紹介致します。
事例1 共有不動産のため売却ができなかったケース
まず1つ目の事例は相続をした不動産が共有不動産のため売却ができなかったケースです。
Yさんはさいたま市に住んでおり、祖父が亡くなり相続が発生しました。
本来であればYさんのお父様が相続人となるのですが、すでにYさんのお父様は亡くなっており、
代襲相続でYさんが相続人となりました。
お父様は3人兄弟でYさんから見た叔父様と叔母様が相続人になります。
祖父は自宅の他にアパートを所有しており、賃貸経営をされていました。
自宅については叔父様が同居をされていて、叔父様はそのまま住み続けたいと話しているとのことです。
アパートは築年数も古く、入居者もまばらに入居をしている状態です。
今回のご相続では現金が少なく、平等に財産を分割をすることが難しい状況でしたので、
アパートを売却してその売却した現金を分けることで平等に分割をすることとなりました。
アパートは売却すると合意が取れていたため不動産を共有で登記して
持分割合で現金を受け取ることになったのですが、ここからがトラブルの始まりでした。
叔父様は頑固で何でも自分で決めたがる方で、よくお父様とも喧嘩をしていたそうです。
今回もアパートを売却するにあたり、不動産の売却をしてくれる会社の選定から
売却価格の決定など全て叔父様が決めると言っています。
地元で古くからやっている不動産会社から売却の査定をしてもらったのですが、
土地が大きいため高値で売れると話がありました。
叔父様は高く売れるならその金額で売却をすると決め、売却を始めることになりました。
売却を始めて最初のうちは問い合わせも多くあったのですが一向に売れる気配がありません。
売却をする土地は一般の方が買うには金額が高く、また現在もアパートの住人が何人か住んでいるため、
家を建てるにしても退去をしてもらわないといけない状況です。
そのため話がなかなか進まず、売却活動をはじめてから数ヶ月が過ぎてしまいました。
実は不動産会社からは価格は安くなってしまうがすぐにでもほしいと言っている
会社があると話がありました。
アパートの住人が住んでいてもそのまま購入をすると話しており、
Yさんたちが売却をするのに手間も一切かからないとのこと。
Yさんと叔母様は平等に分けられる金額で売れれば早く売ってしまいたいという気持ちでいるので、
すぐにでも売却をしようと叔父様に話をしましたが叔父様は全く聞く耳を持ちません。
不動産も共有になっているため叔父様が「うん」と言わなければ売却をすることができないのです。
結局、話があった会社にはお断りをすることになってしまいました。
それから売却をするために価格を下げるでもなく、アパートの住人に退去をしてもらうでもなく、
ただ変わらずそのまま売却活動を続けている状況です。
賃料は入ってきますが、管理費や修繕など維持管理のコストがかかってきますし、
建物もかなり古いため雨漏りなどの心配もあります。
共有で不動産を所有してしまったがために、
1人でも反対をする人がいると売却をすることができなくなってしまいます。
今回、Yさんは全員で売却をするからということで
不動産を共有にして思うように売却をすることができなくなってしまいました。
事例2 認知症になってしまったため売却ができなかったケース
続いて2つ目の事例です。
川口市にお住まいのSさんは実家を離れ東京で暮らしていました。
認知症とまではいかないのですが、最近お母様は最近物忘れが多くなってきており、
ゆくゆくは施設にとSさんが考えていたところ、お父様が突然病気で亡くなってしまい相続が発生しました。
お父様は将来のためにと現金を多く残してくれていたため、相続税の申告が必要でした。
Sさんは地元の税理士に申告をお願いすることにしました。
税理士からはお母様が全て相続することにより税金がかからなくなるから、
お母様が全て相続をしたほうが良いと話をしてきました。
お母様とも話をしてSさんも相続税がかからなくなるのであればと、
税理士の言う通り全ての財産をお母様が相続するようにしました。
不動産もお母様が相続をしたのですが、お父様が亡くなって以来、
お母様の物忘れがひどくなり施設に入居することになりました。
実家はお母様の荷物の整理やお父様の法事などで利用をしていたのですが、
お母様も認知症となり実家には戻ってくることはなさそうです。
このまま実家を残しておいても利用しないので、
いっそのこと売却をして母の施設代等にしようと思い不動産会社に相談をしに行くことにしました。
そこで不動産会社から言われたのが、所有者が認知症の場合、不動産を売却することは難しいとのこと。
お母様に後見人をつければ売却をすることが出来るかもしれませんが
売却が出来るかどうかは家庭裁判所の判断次第になります。
実はお母様も祖父母からの相続で多くの財産をもっており、お母様に相続が発生した場合、
それなりの相続税がかかってきます。
税理士の言う通り不動産を含め全ての財産をお母様が相続したことにより、
お父様の相続では税金が発生しなかったが、お母様に相続が発生した場合、
より多くの相続税が発生する可能性があります。
また認知症になってしまったため不動産も売却をすることができなくなってしまいました。
どのようにすればよかったのか?
それでは2つの事例からどのような点に気をつけて対応をすればよかったのでしょうか?
1つ目の事例では大きく2つのポイントがあります。
1.不動産会社の選定
2.不動産の共有
不動産の売却にあたり、叔父様が不動産会社の選定を行ったのですが、
1社のみヒアリングをして売却価格を決めてしまいました。
もちろんすぐに売却が出来る価格であればよかったのですが、
査定をした金額が高く売却をすることができなくなってしまいました。
詳細は割愛致しますが、不動産価格の決め方にはいくつか方法があります。
※不動産価格の決まり方についてはこちらをご覧ください。
1つの視点から不動産の価格を決めてしまうと買い手が求めている価格と
離れてしまい売却がしにくくなることがあります。
叔父様が不動産会社を決めて売却活動を進めてしまいましたが、1社に価格を聞くのではなく、
いくつかの不動産会社にヒアリングをして見極めることが重要です。
また今回Yさんか単独(おひとり)で不動産を所有して売却したお金を
分けるといった方法もあったのですが、不動産を共有にしてしまったことにより、
叔父様が納得せず売却をすることができなくなってしまいました。
ただし単独で不動産を所有して売却をするにしても、最低売却価格は決めておくことが必要です。
勝手に安い金額で売却をしてしまうとトラブルの原因になってしまいます。
最低売却価格を決めるにしてもいくつかの不動産会社にヒアリングをしておけば、
最低いくらで売れるのかが見えてくると思います。
2つ目の事例ではどのような点に気をつければよかったのでしょうか?
こちらも大きくは2つの理由があります。
1.相続財産を全てお母様が相続した
2.認知症対策をしていなかった
Sさんは依頼をした税理士から提案を受け、お父様の相続財産を全てお母様が相続をすることに決めました。
こちらは配偶者の税額軽減と言って法定相続分もしくは1億6,000万円までの財産を
配偶者が相続した場合、非課税になるといった特例になります。
こちらも話すと長くなってしまうため詳細は割愛をさせて頂きますが、
実はこの特例、お母様に相続があった場合、
結果として相続税が高くなってしまうことがあるのです。
医者にも専門分野があるように、税理士にも専門分野が分かれています。
最近は相続専門の税理士も増えていますが、まだ相続に慣れていない税理士は多くいる状況です。
Sさんが依頼をした税理士は基本的な相続の知識はあるのですが、
お母様の相続まで見据えて提案をすることができませんでした。
また認知症の傾向が出ていたもののお母様が実家を相続してしまい、
結果として認知症になり売却ができなくなってしまいました。
相続税を払うことにはなりますが、Sさんが実家を相続していれば売却をすることができたのです。
仮にお母様が実家を相続したとしても認知症になる前であれば、
家族信託と言う仕組みを利用することによってSさんが不動産を売却することも可能です。
どちらの事例でもそうなのですが、YさんもSさんも1社のみに話を聞いて依頼をしています。
どちらの1社も経験豊富で専門性が高ければ良いですが、
なかなかそのような会社に巡り合うのは難しいかもしれません。
ですから1社だけに話を聞くのではなく、セカンドオピニオンも必要になります。
さいたま幸せ相続相談センターではセカンドオピニオンのサービスはもちろんのこと、
不動産の売却についてもグループ企業で行っております。
相続した不動産などでお困りのことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。
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