こんにちは。
相続・不動産コンサルタントの久保田です。
 
相続相談の中で『相続した不動産をどうすればいいの?』というご質問が良く出てきます。
不動産は、基本的に『ご自身で住む』『売る』『貸す』の3パターンのいずれかをお選びいただくのですが、相続不動産の場合はご自宅を持っている方も多いため『ご自身で住む』を選択する方が少ないかと思います。
また、相続不動産の多くはご両親のご自宅のため、『他の方に貸すのは抵抗がある』や『賃貸は手間がかかる』といったご意見も多く、結果『売る』を選択される方が多い状況です。
加えて、新型コロナ禍は経済への影響も大きく報道されており今後の不動産市況に不安を感じる方も多く、『売る』場合でも『いつ売ればいいの?』といったご質問が多くなっていますので、今回は過去のデータや各種推計値を参考にして、相続不動産をいつ売ればいいのかを考えてみたいと思います。
尚、不動産全体の内容となると長くなりすぎてしまうので、本コラムでは相続不動産の大部分を占める住宅に限定した内容としています。
 
 

不動産価格の決まり方

 
不動産売却のタイミングを考える前に、簡単に不動産価格の決まり方を説明します。
大前提として、不動産以外の価格と同様に、不動産価格も需要(買いたい方)と供給(売りたい方)とのバランスによって決まります。
そのため、需要が増えれば(供給が減れば)価格は上昇し、需要が減れば(供給が増えれば)価格は下落します。
不動産価格を査定する際は、この大前提を基にして次の3通りの査定方法を利用します。
 
1.取引事例比較法
  周辺の似た不動産の取引価格を基に査定する方法
2.収益還元法
  不動産が持つ収益性(賃料等)から不動産価格を査定する方法
3.原価法
  建物を現時点で新築した場合の価格から経年による減価修正を行って査定する方法
 
相続不動産の多くは中古のご自宅用の不動産であるため、主に1の取引事例比較法を利用して査定が行われます。
不動産価格変動の少ない通常時であれば、過去1年程度の成約事例を基に、販売中の事例を考慮した査定を行うことで相場価格が見えてきますが、現在のように経済全体が落ち込むような状況下で同じ様な査定をしてしまうと、市況の動きに追いつかず競合物件よりも高額で販売をしてしまい、結果販売期間が長期化してしまう恐れがあります。
 
この様な状況では通常時の査定方法に加えて、過去に経済全体が落ち込んだ際のデータを補正値として考慮することで、将来の不動産市況を見据えて戦略的に販売を行うことができます。
 

不動産価格に影響する要因は?

 
よく不動産価格と関係があるデータとして、株価・GDP・人口動態等が挙げられます。
株価やGDPは経済動向の指標として、人口動態は不動産に対する需要と供給の指標として利用できます。
また、エリアによって差はありますが、下図のように株価の上下が発生した後1~2年後に不動産市況でも同じ様な動きが見られる傾向があります。
 
 
※各種データは下記を参照
 日経平均株価:Yahoo!ファイナンス
 実質GDP成長率:内閣府 国民経済計算(GDP統計)
 公示地価変動率:国土交通省 土地・建設産業 変動率及び平均価格の時系列推移表
 
そのため、現在のように将来予測が難しい状況でも、現在から1年間程度の予想では株価やGDPの推移を参考に査定を行い、人口動態の推計値を考慮することで競合物件より先回りした売却ができると考えています。
 
新型コロナ禍が経済に与える影響を推測する際に、2008年9月に発生したリーマン・ショック以上だと様々な報道で確認できます。
普段不動産査定を行う際に、楽観シナリオ、通常シナリオ、悲観シナリオの3パターンを検討することが多いのですが、今回の場合はリーマン・ショック後の不動産価格下落を通常シナリオと捉えても良いのではないでしょうか?
 
また、人口動態を考慮する上で重要な点は、総人口と高齢化率の推計値かと思われます。
 
 
※内閣府 令和元年版高齢社会白書より抜粋
 
日本では2007年に総人口に対する65才以上の人口が21%を超えたことで超高齢社会へ突入しており、今後も高齢化率は上昇を続けると予想されています。
一方で、2010年をピークに今後は人口減少が予想されています。
数年前から言われているため皆さんもご存知かもしれませんが、高齢化と人口減少によって、エリアに寄っては不動産が余る状況が続いています。
一般的に不動産の購入では住宅ローンなど金融機関からの借入が必要になりますので、上図の推計どおりになった場合、2050年頃には住宅ローンを組んで不動産を購入できる方が総人口の20%~25%程度になってしまう可能性もあります。
この様に不動産が余る(供給過多)や購入者が減る(需要減少)では不動産価格が下落します。
 

今後の不動産市況はどうなるの?

 
ここまでで、不動産価格の決まり方や、不動産価格に影響する要因について、なんとなくイメージができましたでしょうか?
ここからは、将来の予測になるため、『絶対』や『間違いなく』というわけではありませんが、様々な予測・推計を利用して今後の不動産市況の動向を考えてみます。
 
毎年新聞などのニュースで公示地価上昇が報道されていたためイメージが付きやすいかと思われますが、これまでの不動産市況は三大都市圏を中心に活況であったと言えます。
特に2020年の公示地価では地方でも観光需要が見込めるエリアは上昇が目立っていたように感じます。
これは三大都市圏にも言えることですが、ここ数年は東京オリンピック開催によって得られる海外からの観光客の収入を期待して、国内外の観光業・投資家が日本の土地を購入していたことで上昇を続けていたかと思われます。
特に投資家は早期に高値で売却することが多いため、投資目的で購入していた投資家は既に売却済みであることも予想されます。
現在1年を目処に東京オリンピックの開催を延期としていますが、新型コロナ禍は日本だけの問題ではなく全世界の問題であるため、延期期間中に現在までと同程度の海外需要を見込むのは難しいのではないでしょうか?
 
また、実質GDP成長率の予測では、現在確認している中の最大値で▲8%といった予測がありました。
リーマン・ショック後の2009年の▲5.4%と比較しても楽観視が難しい印象があります。
実質GDP成長率は2010年にプラス成長となりましたが、公示地価がリーマン・ショック以前と同程度になったのは今年(2020年)といった点から、経済活動が元に戻るまででの期間と、不動産価格がもとに戻るまでの期間に大きな差があることがわかります。
これは人口減少・超高齢社会から来る不動産需要の減少も影響していると思われます。
 
一方で住宅の取引状況を見てみると、既に販売中の価格よりも成約した価格の方が高いエリアがあります。
一般的に販売価格は売主様のご希望や、買主様からの減額交渉が入ることを考慮して高めの設定になることが多いのですが、販売価格よりも成約価格が高いということは、既にそのエリアでは不動産価格の下落が始まっていると考えていいでしょう。
 
この様に様々な過去のデータ・今後の推計値・現時点での取引状況を見ると、不動産価格が現在までのような上昇を続けるための要素が見つけにくく、リーマン・ショック後の2009年の公示地価と同様に急激に下落する可能性を考える必要があると言えます。
 

結局相続不動産はいつ売ればいいの?

 
回答への前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、『相続不動産をいつ売ればいいの?』のご質問への回答は『できる限り早く売るべき』となります。
今回のコラムでは大まかな内容を基にしているため、エリアや不動産によってはしばらく保有していた方が良いものもありますが、大部分の不動産は今後始まる下落の中でできるだけ早く売却して、他の資産への組み換えが良いと考えています。
相続不動産では、被相続人様の思い入れが詰まった大切な不動産を相続するので、すぐに『売る』の決断をして良いのか迷うこともあるでしょう。
その時は、今後10年間で『相続不動産を使用する予定はあるのか』『固定資産税や管理費などのコストを払い続けられるのか』といった観点からお考えいただくことをお勧めします。
思い入れがあったとしても、相続不動産を残す被相続人様も、相続人様のご負担になることは望んでいないのではないでしょうか?
実際に私が相続不動産のご相談をお受けする際は、今後使用する予定が無いのであればできるだけ早いご売却をお勧めしています。
 
一方で今後予想される不動産価格の下落は、相続対策や資産形成としての収益不動産を購入しやすくなる可能性もありますので、うまく市況を見極めることで新型コロナ禍を悪いだけのものにしないようにもできるのではないでしょうか?
 
さいたま幸せ相続相談センターでは相続全般のご相談はもちろん、相続に関連する不動産のご相談も受け付けています。
相続不動産でお困りの方や、相続対策として不動産購入をご検討されているかとはお気軽にご相談ください。
 
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