皆様こんにちは。さいたま幸せ相続相談センターの相続サポートスタッフです。
インフルエンザが流行しておりますが、皆様お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。時節柄、くれぐれもご自愛くださいますようお願い申し上げます。

さて、本日は久しぶりに事業承継についてお話ししたいと思います。埼玉県・さいたま市にお住まいでご親族から店舗を承継し、これから運営される方々のご参考になりますと幸いです。

なぜ店舗に焦点を当てたのか。それは、先代から後継者への承継が、他業種より長期に渡る傾向にあるからです。移行期間に3年以上かかった割合が小売業では66.7%、製造業で36.6%、建設業で26.5%との統計も出ています。

参照:株式会社帝国データバンク 事業承継に関する埼玉県企業の意識調査2021 年 8 月

計画的な承継のため、事前準備をしていきましょう。今回は個人事業主から個人事業主への贈与を想定してお話します。では、ポイントを5つご紹介します。

承継開始までにできれば実務を3年間行いましょう

事業承継において、実務を覚えることは大切です。

①商品知識やサービス内容を身に付ける
②現品管理や棚卸、在庫管理のやり方を覚える
③仕入れルートや取引先を把握する
④仕入業者や金融機関などの取引先との関係性構築 など内容は多岐に渡ります。

また、「後継者に事業を引継ぐうえで苦労した点」について「取引先との関係維持(18.6%)」が一番多いとのことでした。

参照:中小企業庁 中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査2018 年 12 月みずほ情報総研

時間をかけて取引先との関係構築をしていくことの大変さがうかがえます。
そして実務期間が3年あると良い理由として、後継者候補として経営計画を含む事業承継計画書を作成できる程度に経営実務にかかわっていれば、個人版事業承継税制の対象になりうることが挙げられます。

個人版事業承継税制とは、個人事業主が事業承継した際に引継いだ①土地または借地権②建物③減価償却資産にかかる贈与税・相続税の納税猶予または免除をすることで負担を減らす制度を指します。

ただしその他にも絶対要件がいくつかありますので、制度適用を検討したい場合には税理士や事業承継コンサルタントなどの専門家に一度相談してみましょう。弊社のグループ会社でもご相談を承っております。

事業承継については、こちらのコラムもご参照ください。

事業用資産・事業用負債それぞれの額を確認しましょう

贈与税が発生するかしないかの確認

個人事業主の事業承継方法には①贈与②相続③売却がありますが、親族間では贈与を選ぶことが多いです。「贈与されたから名義だけ変更すればいいや」ではいけません。

なぜなら贈与税が発生する場合があるからです。(※前述1記載のとおり、条件次第では個人版事業承継税制の制度で納税猶予あるいは免除されることはあります。)

見出しのとおり、資産と負債のそれぞれの総額を確認してください。(資産ー負債)が110万円以上であれば贈与税が発生し、(資産ー負債ー110万円)に対して課税されます。

よって負債が多いほど差額は小さくなるものの、今後後継者が背負える程度であるかどうかはよく考えてみてください。

土地建物について

店舗用の土地や建物の贈与にも注意してください。土地や建物は時価で評価されますが、案外高騰しているケースも多いです。時価が高くなると当然贈与額も高くなります。

その場合は節税対策として使用貸借も検討します。使用貸借では先代が貸主、後継者が借主となり、後継者は無償で土地建物を使用することができます。

贈与税がかからない上、今後発生する店舗修繕費や固定資産税、減価償却費等を費用計上できる点でも税務面でのメリットがあります。(あとは法務面での検討も必要です。)したがって、土地や建物を「贈与するか」「使用貸借にするか」について、税理士などの専門家に一度相談してみましょう。

引継に関しての開業届を出しましょう

個人事業主間での事業承継時の主な手続きとして、先代の廃業届提出と後継者の開業届提出があります。(廃業に関する手続きもいくつかありますが、今回は割愛します。)

親子間での贈与であっても、「閉める→開く」という手続きを正式に踏まなければなりません。

承継方法決定後、後継者は事業開始後1か月以内に管轄の税務署へ開業届を提出します。この際青色申告承認申請も同時に行うことをおすすめします。

青色申告承認申請は事業開始後2か月以内に行えば良いものの、確定申告時までに終えていなければ様々な不都合が発生します。日々業務が忙しく忘れてしまうことも多いので、同時に終わらせましょう。白色申告者よりも受けられる恩恵が多いため、青色申告を選びましょう。

事業承継引継補助金について調べてみましょう

事業承継引継補助金とは、中小企業が円滑に事業承継を進められるよう、国から支給される補助金を指します。事業主として経営を始めるにあたり、多くの後継者が「何か使える補助金はないかな」と考えるのではないでしょうか。

申請期間や対象条件などの制約があるものの、活用できる補助金は漏れなくご利用いただくことをお勧めいたします。※第13次公募の申請は締め切りました。第14次公募の内容はまだ公開されていません。

当補助金は個人事業主間の承継に対しても適用されます。また、下記の4種類がありますので、それぞれの特徴をご紹介します。

4つの補助金について

補助金の名称や種類、条件等については募集年度で改定されることがあります。それぞれの募集要項をよく確認しましょう。(下記は13次の募集内容です)

事業承継促進枠

5年以内の親族や従業員への事業承継に対して交付されます。後継者による事業展開や経営基盤の再構築に必要な設備費用などが支給されます。スムーズな事業承継を通した、地域経済の発展に貢献することを目的として助成されます。

専門家活用枠

M&Aを進めるには様々な知識や手続きが必要で、個人で対応することは難しいです。専門家に依頼をしたいものの、費用捻出が困難な場合に申請します。

廃業・再チャレンジ枠

こちらは譲渡側に適応されます。M&Aに失敗し、廃業・撤退をする際に申請します。単に廃業するだけでは認められず、あくまでも別事業に再チャレンジすることが前提条件です。

PMI推進枠

M&A成立後、経営統合を円滑に行うための支援として交付される補助金です。PMI推進枠は「PMI専門家活用類型」と「事業統合投資類型」に分けられます。PMI専門家活用類型は経営資源や資産、業務内容の統合時に必要な専門家活用費を助成します。また、事業統合投資類型は設備投資やシステム統合時にかかる費用を助成します。

適用される条件を確認しましょう

親族間の個人事業承継においては、事業承継促進枠が対象となり、廃業・再チャレンジ枠との併用が可能な場合があります。専門家活用枠においてはM&Aが前提となっており、親子間の事業承継には適用されません。
また、事業承継補助金申請には3つの条件を満たす必要があります。

①双方が青色申告者であること
②廃業届・開業届を行っていること
③後継者が同業種で6年以上の実務経験を積んでいること、もしくは承継予定事業で3年以上雇用された経歴があること

これらの要件を満たすことができる場合は、申請できるよう税理士やコンサルタントなどの専門家に相談してみましょう。

先代の事業方法を尊重しつつ、新しい知識や価値観を取り入れましょう

親子とはいえ年代や生きる時代が違えば、価値観にずれが出てくることは当然です。価値観のずれは店舗経営においても出てくるでしょう。

すれ違いの例 先代 →根性論で苦しい時期を乗り越えてきた。苦労は買ってでもする。
       後継者→避けられる苦労はする必要がない。業務の効率化を推進。
       先代 →客先には足しげく通い、直接会うことで信頼関係を構築する。
       後継者→連絡はチャットやメールで充分。必要があれば訪問する。

先代が精神論や経営理念に重きを置く一方で、後継者がITやテクノロジーの活用に積極的になることはよくあるパターンです。

少し立ち止まってください。顧客や取引先との関係を作り上げてきたのは先代です。後継者が数字や効率を重視し、各所との信頼関係が維持できなくなり、かえって経営状況が悪化することは多々あります。

まずは先代の思いや経営理念、大切にしてきたものをしっかりと受け止め、解釈しましょう。そのうえでDX推進やAIの活用など、先代との話し合いを重ね、少しずつ取り入れていきましょう。

事業承継については、こちらのコラムもご参照ください。

最後に

本日は最後までお読みいただきありがとうございました。ご紹介のとおり、事業承継には長い年月がかかる上、様々な手続きや専門知識が必要です。

我々さいたま幸せ相続相談センターをはじめ、グループ会社であるGSRコンサルティングや埼玉県スマート事業承継が少しでも円滑に、お客様の事業承継や個人相続のお手伝いができるよう日々邁進しております。
初回無料の事業承継相談を随時承っておりますので、ご興味をお持ちいただけましたら、まずは一度お気軽にご相談ください。

監修:CLOVER法律事務所 中島一郎 弁護士