相続が開始されると、被相続人の財産を受け取れる相続人は民法で定められた順位によって優先される方が決まっています。では、実際に兄弟姉妹が相続人となるケースとはどのようなものでしょうか。本記事では兄弟姉妹で遺産分割するケースをわかりやすく解説します。注意点や生前対策についても触れますので、ぜひご一読ください。
兄弟姉妹が相続人になる3つのケースとは
まず法定相続人の順位を整理しましょう。
・配偶者は常に相続人
・第1順位 子・孫(直系卑属)
・第2順位 親・祖父母(直系尊属)
・第3順位 兄弟姉妹
兄弟姉妹が相続人になるケースには、以下の3つが該当します。1つずつわかりやすく解説します。
被相続人に配偶者はいるが、直系卑属・直系尊属はいない
被相続人に配偶者はいるものの、子(直系卑属)はおらず、親(直系尊属)もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。また、先順位の相続人が全員相続放棄している場合には、兄弟姉妹が相続人になります。
・被相続人の配偶者と兄弟姉妹で相続する
被相続人に配偶者・直系卑属・直系尊属がいない
被相続人に配偶者がおらず、子(直系卑属)も親(直系尊属)もいない場合は、兄弟姉妹のみで相続します。また、先順位の相続人が全員相続放棄している場合には、兄弟姉妹が相続人になります。
・兄弟姉妹のみで相続する
遺言書に兄弟姉妹が記載されている
遺言書で兄弟姉妹への財産を残す旨が記されていることがあります。この場合、法定相続人ではなくても遺言書によって指定された財産をもらうことが可能です。
・遺言書に書かれているとおりに相続する
兄弟姉妹が相続する際の5つの注意点とは
子を持たないご夫婦も多い今、兄弟姉妹が相続人となるケースは少なくありません。そこで、この章では兄弟姉妹が相続する際に知っておきたい5つの注意点をわかりやすく解説します。
代襲相続は甥・姪まで
代襲相続とは本来相続人となるはずの方が、すでに相続開始以前に死亡している場合や相続権を何らかの理由で失っている場合に、「その方の子」が相続できる制度です。代襲相続は民法第887条第2項によって定められています。
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わかりやすく整理すると以下です。
■代襲相続が発生する理由
・相続人になるはずだった方が相続開始前に亡くなっている
・相続欠格事由に該当している(※1)
・相続人廃除があった(※2)
直系卑属である子の場合、子が亡くなっていても孫、ひ孫…と直系卑属が途切れるまで代襲相続できます。直系尊属、配偶者には代襲相続は起きません。
兄弟姉妹の相続の場合、兄弟姉妹が亡くなっている場合、代襲相続は甥・姪までで止まります。
(※1)相続欠格事由とは、民法で定められている極めて悪質な行為を働いた相続人が相続権を失うことを意味します。(民法891条)
(※2)相続人廃除とは、被相続人が虐待などを理由に家庭裁判所への申立てや遺言により、特定の相続人から相続権を奪うことを意味します。裁判所が認めれば相続人であっても相続できなくなります。
相続欠格事由や相続人廃除については、こちらのコラムもご参考ください。
特定の相続人に遺産を相続させたくない・・・方法はあるのか?遺言書、放棄、廃除、欠格の違いについて【相続コラム】
兄弟姉妹には遺留分はない
兄弟姉妹が相続人となる場合には遺留分はありません。
たとえば、2人兄弟の兄が亡くなり、亡兄の配偶者と弟が法定相続人になると仮定します。このようなケースで遺言書にて亡兄が「すべての財産を妻に残す」と記載していると、弟には遺留分はないため、遺留分請求を亡兄の妻に対して求めることはできないのです。
先順位の相続放棄によって相続人となる場合がある
兄弟姉妹の法定相続順位では第3位であり、子、直系尊属がいるケースでは相続人になりません。しかし、被相続人に生前高額の債務があったなどの理由で、先順位の相続人が相続放棄をした場合には、兄弟姉妹が相続人になることがあります。
相続放棄は先順位の人が家庭裁判所で放棄手続きを完了させても、自動的に次順位の相続人へ通知されません。ある日突然被相続人の債務について督促状が届き、相続の事実を知るケースもあります。
半血兄弟姉妹の場合は全血兄弟と相続分が異なる
兄弟姉妹が亡くなり相続する場合、半血兄弟と全血兄弟では法定相続分が異なります。半血兄弟とは異母・異父兄弟姉妹のことです。
たとえば、3兄弟の内、長男・次男は両親が同じの全血兄弟、三男は母親が異なる異母兄弟と仮定します。長男が亡くなり、配偶者や子はおらず親も亡くなっており、次男と三男で相続する場合、法定相続分は以下です。
・次男…全血兄弟であり3分の2を相続する
・三男…半血兄弟であり3分の1を相続する
半血兄弟は「全血兄弟の相続分の半分」が法定相続分と定められています。(民法第900条第4項)
その他
さいたま幸せ相続相談センターでは、兄弟姉妹における相続トラブルについて他記事でもご紹介しています。ぜひご一読ください。
兄弟姉妹がいる場合に考えられる相続トラブル
兄弟姉妹が相続人になる前に|やっておきたい相続対策とは
兄弟姉妹が相続人になった場合にはトラブルも予想されます。そこで、この章ではやっておきたい相続対策をご紹介します。
トラブルが予想される場合は遺言書の作成
子がおらず、配偶者と兄弟が相続人になると予想される場合、配偶者と兄弟の間に面識がなく、遺産分割が難航する可能性があります。また、疎遠だった兄弟でも財産があると知り、遺産分割協議を長引かせてしまうおそれもあるでしょう。
そこで、トラブルが予想される場合はあらかじめ生前に遺言書を作成しておくことがおすすめです。遺言書は相続人以外の方への財産を残すこともできるため、兄弟姉妹以外に財産を渡したい方に遺贈することもできます。(例・内縁の方やお世話になった介護施設など)
相続税対策には贈与も有効
将来兄弟姉妹が相続人になる場合、相続税の2割加算が気になる方もいるでしょう。そこで、相続税対策にはあらかじめ贈与を検討しておくこともおすすめです。ただし、兄弟姉妹間では「相続時精算課税制度」(※3)は使えません。暦年贈与を活用して少しずつ財産を移転していく、などの方法が考えられます。
※3 参照:国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
債務がある場合はあらかじめ伝えておく
債務がある場合、相続人は相続放棄を検討する可能性があります。しかし、相続放棄は債務を放棄できますが現金や預貯金、株式などのプラスの財産も放棄する必要があり、相続人としては深く悩んだ末に放棄するケースも少なくありません。また、相続開始後に高額の債務があると知り、住まいや車なども放棄することになり頭を抱えてしまう方もいます。
できれば生前から、相続人になる可能性がある家族には、債務の存在は知らせておくことが望ましいでしょう。
相続が開始されたら相続人調査を怠らないように注意を
「亡夫の兄弟はすでに全員亡くなったはず」
このように思っていても、実際に相続人調査を進めてみると、存命の兄弟姉妹が見つかるケースは少なくありません。遺産分割協議は相続人全員で進める必要があり、生前に兄弟姉妹とは疎遠であっても相続人に該当したら遺産分割をともに進めていく必要があります。相続が開始されたら、まずは相続人調査を行い相続人に漏れがないように注意しましょう。
まとめ
兄弟姉妹との相続は、遺産を巡って対立する事例もあります。生前から遺言書や贈与を活用して対策を進めることがおすすめです。しかし、対策には税務や制度の専門知識が必要です。
一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターでは、生前からの相続対策のご相談に対応しています。遺言書や相続税対策なども、まずはお気軽にご相談ください。また、相続開始後のお悩みにも寄り添い、解決に向けてサポートしています。まずはお気軽に無料相談をお申込みください。
執筆:岩田いく実
監修:司法書士法人T-リンクス