「父が遺した土地や建物を相続する。誰かに相談しながら手続きを進めたい」

「家族が亡くなったが、不動産の調べ方がわからないので相続をサポートしてほしい」

「不動産の相談先、正直どこがおすすめ?」

 

ご家族が亡くなり、相続が開始されると預貯金や現金などの相続手続きを進めます。相続する財産の中には不動産も含まれますが、もしも誰かに不動産相続の手続きを相談するなら、どこが適しているのでしょうか。本記事では不動産相続における相談先や、相談時の注意点をわかりやすく解説します。

不動産相続の相談先|おすすめはどこ?

相続が開始されると、亡くなられたご家族の財産を調査し、遺産分割の協議や相続税の計算などを進めていく必要があります。

ご家族が所有していた遺産(相続財産)の中には、不動産が含まれることもありますが、不動産は現金や預貯金のように分割しやすいものではないため、慎重に遺産分割協議を進める必要があります。また、相続登記を行う必要があるため、相続人となった方は悩みを抱えることがあります。そこで、この章では不動産の相談先について紹介します。

 

市区町村

市区町村の役場では、相続に関する相談会を開催していることが多く、弁護士や司法書士など法律の専門家が相談に対応しています。相談は無料で行われており、悩みごとを伝えると、一般的な解決方法をわかりやすく解説してくれます。

例として、さいたま市大宮区では以下のように開催されています。

■大宮区役所 法律相談の概要

・1人35分相談可能、相談内容は1つの種類につき、年1回のみ

・無断キャンセルをすると1回相談を受けたとみなす(他の区への相談も不可)

・予約受付期間 相談日の40日前から7開庁日前まで
・開催日時や予約は下記リンクからご確認ください。

https://apply.e-tumo.jp/city-saitama-u/reserve/offerList_detail.action?tempSeq=50460

 

問い合わせ先

大宮区くらし応援室

 

電話番号

048-646-3026

 

FAX番号

048-646-3162

法テラス 

一定の条件が設けられていますが、法テラスでも無料の法律相談を実施しています。対象者は経済的に困っている方で、無料相談の予約時には収入や資産の状況を確認されます。相続や不動産の相続登記に関する相談も可能です。

法テラスは全国に「地方事務所」があるため、最寄りに法律事務所や司法書士事務所がない方もご利用いただけます。なお、ご相談内容は同一案件につき3回までです。

■法テラス 無料法律相談の概要

・1人30分相談可能、相談内容は1つの種類につき、3回のみ

・基本的に事前の予約制

・法テラスの地方事務所以外でも提携先の弁護士・司法書士の利用も可 直接各事務所へ問い合わせをして予約
・開催日時や予約は下記リンクからご確認ください。

 

問い合わせ先

法テラスサポートダイヤル 

 

電話番号

0570-078374

・開催日時や予約は下記リンクからご確認ください。

https://www.houterasu.or.jp/site/soudanmadoguchi-houseido/support-dial.html

(リンク先にあるメールでの問い合わせや、公開されている各地方事務所の電話での受付も可)

司法書士 

 不動産の相続に関しては、司法書士に相談することも検討できます。

不動産を相続すると名義を変更するための登記手続き(相続登記)が必要となるため、司法書士に依頼をすることが一般的です。最寄りの司法書士に相談すると、手続きを受けてくれます。

相続登記は2024年4月以降に義務化されています。2024年4月1日以前に相続で取得している不動産も対象です。手続きを理由なく遅延させていると、10万円の過料が科せられるおそれがあるため注意しましょう。

 

なお、埼玉県内の司法書士を検索する場合は下記リンクをご活用ください。

※参照:埼玉司法書士会 司法書士・司法書士法人検索

税理士

不動産を含む相続で、相続税が発生する場合は税理士に相談することが大切です。不動産の相続には「小規模宅地等の特例」(※1)が受けられる可能性があり、適切に対応していく必要があります。

また、被相続人が生前に暮らしていた住まいを売却する場合には、所得税面での特例を受けられる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(※2)の対象となる可能性もあります。

いずれも適用のためには要件を確認する必要があるため、税理士に相談しましょう。

埼玉県内の税理士を検索する場合は下記リンクをご活用ください。

※参照:日本税理士会連合会 税理士情報検索サイト 

(※1)国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)より

(※2)国税庁No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

 

相続相談センター

不動産の相続はもちろん、相続手続き全般について、専門家に相談してみたい場合は相続相談センターに相談されることもおすすめです。

相続相談センターはさまざまな士業や不動産の専門家などと連携しているため、不動産のある相続のお悩みにアドバイスが可能です。効率よく相続を進めたいなら、相続相談センターを検討しましょう。

 

相続手続きで家族が争っている場合はどうする?

不動産にはいろんなものがあります。実家の土地や建物だけではなく、畑や山林なども相続の対象となるほか、投資目的で所有しているマンションや別荘なども相続対象です。そのため、時には不動産を巡って、以下のようなトラブルが起きることがあります。

 

・収益のある不動産をめぐり、家族が対立する

・いらない不動産の処分に困り、家族同士で押し付けあう

・不動産以外の遺産がないため、売却をめぐって家族の意見が食い違う など

 

では、不動産のある相続で家族同士が争っている場合には、一体誰に相談すれば良いでしょうか

 

弁護士に相談する

相続で争いがある場合は、弁護士に相談することがおすすめです。弁護士に相談すると、争っている相手と交渉をしたり、調停や訴訟にも対応できます。

家族同士の話し合いがまとまらない場合は、早めに弁護士に法律相談を行い今後どのように対応するべきかアドバイスをもらいましょう。

 

相続に争いがある場合の注意点

相続で家族間の話し合いがまとまらない場合、知っておきたい注意点があります。遺産分割協議自体に法的な期限は設けられていませんが、その他の相続手続きには期限が設けられています。

・相続税の期限

相続税を納付する必要がある場合、「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」です。

遺産分割協議がまとまっていなくても、原則として納付期限は延長されません。

 

・相続放棄の期限

遺産分割協議に疲れ、もう相続放棄をしたいと思ったとしても、相続放棄にも期限があります。相続放棄は「自己のために相続の開始があったと知った日から3か月以内」に家庭裁判所に対して申述する必要があります。

いずれも、一般的に家族の死去は当日や翌日には知ることが多いため、亡くなったら速やかに期限に向けて手続きを進める必要があります。

 

不動産相続でよくある悩みとは?

不動産を相続する場合には、以下に挙げる悩みを抱える方が多くなっています。この章ではよくある悩みを紹介します。

 

不動産の評価に悩む

不動産は土地・建物のいずれも資産価値がいくらなのか、評価をする必要があります。相続税申告をするためには、相続税評価額を記載する必要があり、「えっ!この土地はそんなに高い評価になるの?相続税が予想より高い!」と戸惑う場合があります。不動産評価をする場合は、不動産相続に精通する税理士に相談することが大切です。

 

いらない不動産の管理・処分に悩む

近年急増する悩みとしては、「いらない不動産」の管理や処分です。特に誰も住んでいない空き家を相続する場合、売ることができず悩む場合があります。売れない場合は管理していく必要があり、掃除や侵入対策を行うなど、相続前には感じなかった悩みを抱えることがあります。

 

収益がある不動産を相続人間で争う

アパートやマンション、駐車場など収益のある不動産は、今後も安定して収益を得られる可能性が高いため相続したいと考えるものです。しかし、誰が相続するのか、話し合いがまとまらずに調停や訴訟に発展するケースもあります。

相続登記時に多数の所有者が発覚する

いざ相続をしようとしたら、「先代・先々代の名義」のままとなっており、その名義人の相続人が何人いて、どこに住んでいるのかわからないケースもあります。このようなケースでは相続登記をするために、まずは現在の所有者となっている方を洗い出す必要があります。

実際に兵庫県姫路市内では、相続人が93人にも上る「特定空き家」が発覚したケースもあり、自治体が必死に家系図作りを行い対応に奔走したケースもあります。

 

不動産の相続手続きを笑顔で進める3つのコツ

 

トラブルも多い不動産の相続ですが、手続きを笑顔で進めるためには以下3つのコツが考えられます。

生前から不動産の相続について家族で話し合う

 

不動産は、残された家族が全容を掴めておらず、まずはどこに・何の不動産があるのか調査から始めることがあります。これでは遺産分割協議、相続登記などの手続きに時間がかかってしまいます。そこで、生前から不動産の相続に向けて情報を共有することが大切です。

 

早めの贈与で相続対策を行う

 

収益のある不動産は、トラブルの火種になりやすいため、家族と協議しながら早めに贈与を行うこともおすすめです。贈与後に発生する収益は、受贈者(受け取った人)のものとなるため、相続税対策の効果もあります。

 

いらない不動産は早期の処分をめざす

いらない不動産がある場合、相続開始後の負担を減らすためにも、早期の売却や譲渡を目指すことが大切です。近隣の方に声をかけると、買い取ってくれるケースも珍しくありません。不動産会社に相談し、売却を目指すこともおすすめです。

 

まとめ

 この記事では、不動産の相続について、相談先を中心に不動産相続時によくある悩みにも触れながら、詳しく解説しました。相続時にはさまざまな専門家からアドバイスを受けながら手続きを進めていくことがおすすめです。本記事を参考に、笑顔の相続手続きを進めましょう。

 

一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターでは、不動産のある相続にも対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。

 

執筆:岩田いく実
監修:おがわ司法書士事務所 小川 直孝 司法書士