皆さんこんにちは。
相続コンサルタントの久保田です。
相続した不動産を売却する際に、測量費用やお荷物の処分費用、建物の解体費用と様々な費用が発生します。
加えて、不動産には様々な場面で税金が課税され、不動産にかかわる税金を知っておかないと、予想外の出費が発生してしまい、慌ててしまうこともあるかもしれません。
そこで、今回は不動産を相続した後に課税される税金を場面ごとに説明していきます。
不動産を相続したときに課税される税金
①相続税
不動産を相続した場合は、相続税が課税されることがあります。
相続税は不動産や現預金、有価証券といった相続財産すべての合計金額が基礎控除を上回った場合に課税されますので、不動産を相続したからといっても必ず課税される税金ではありません。
また、相続税の計算は上記の通り相続財産の合計金額に加えて、基礎控除計算の基準となる法定相続人の人数や、相続する割合によっても変動しますので、相続税が気になる方はお気軽にご相談ください。
不動産以外にもいえますが、相続税の注意点としては、遺言書等によって法定相続人以外の方が相続する場合、その方が負担する相続税額が2割増される点です。
遺言書を書く場合、お孫さんに財産を渡したいとのご意向の方もいらっしゃるかと思いますので、相続税の2割増までご検討ください。
②登録免許税
登録免許税は、主に不動産の名義を変更する際に課税される税金です。
相続の登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の0.4%とされており、不動産の固定資産税評価額によっては大きな金額になりますので、相続手続きを進める中での費用計算でコストとしてご確認いただくことをお勧めします。
尚、相続登記を司法書士にご依頼される場合は、司法書士の見積もりの中に登録免許税も含まれていますので、計算の必要はなくなります。
不動産を相続した翌年以降に課税される税金
相続した不動産に限りませんが、不動産を所有していると毎年固定資産税と都市計画税が課税されます。
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日の不動産所有者に課税されますので、実際に相続した不動産の固定資産税・都市計画税の通知書がお手元に届くのは相続した(相続登記が完了した)翌年からとなります。
※厳密には、相続した年の固定資産税・都市計画税は、遺産分割協議が成立した以降は相続した方のご負担することになります。
税金は滞納してしまうと、差し押さえや競売にかけられ、せっかく相続した不動産を手放すことになってしましますので、税金の滞納には十分注意してください。
また、相続手続きの中で固定資産税・都市計画税額を知る機会があると思いますので、相続する不動産に年間いくら固定資産税・都市計画税が課税されるかを事前にご確認いただくことをお勧めします。
相続不動産を贈与した場合に課税される税金
稀な状況として、不動産を相続した後に第三者に贈与することがあります。
贈与にかかる税金は贈与税が注目されますが、見落としがちな税金に不動産取得税があります。
不動産取得税は、売買や贈与によって不動産を取得した方に課税される税金で、不動産を取得後一般的に半年から1年後に不動産取得税の通知が届きますので、相続対策の中で不動産を贈与する際に不動産取得税までコストに見込んでおき、費用対効果があるかを検討していく必要があります。
※相続で不動産を取得した場合、不動産取得税は課税されません。
不動産取得税の計算は、不動産の評価額(固定資産税評価額)×税率(4%)で計算されますが、
現状、令和9年3月31日までに取得した不動産については、
①宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例(土地の固定資産税評価額を1/2にして税額を計算する。)や
②土地等の取得に係る不動産取得税の税率の特例(土地や住宅の税率を4%から3%に軽減する。)といった軽減措置があります。
加えて、住宅の場合建物の築年数によっては、最大1,300万円を課税標準(固定資産税評価額)から控除できますので、実際の不動産所得税の計算はやや複雑になってきます。
ご自身で不動産取得税を計算される場合は、下記東京都主税局のHPの不動産取得税計算ツールで簡易的に不動産取得税を計算できますので、ご利用してみてください。
※東京都以外の不動産の場合、実際の不動産取得税の税額と異なる場合があります。
東京都主税局 不動産取得税計算ツール
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/syutokuzei.html
不動産を売却したときに課税される税金
相続した不動産を含め、不動産を売却する際にも、下記のように様々な税金が課税されます。
①譲渡所得税
不動産を売却した際の利益に対して、所有期間5年以下の場合は39.63%、所有期間5年を超える場合は20.315%が課税されます。
不動産にかかる税金としては非常に大きな金額が課税されることになりますが、相続不動産の中でも被相続人様がお住まいだった戸建の場合、要件を満たすと売却益から3,000万円を控除できる特例(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除がありますので、譲渡所得税が課税されないこともあります。
国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
上記国税庁HPに特例を受けるための詳しい要件がありますが、簡単にまとめると古い戸建(昭和56年5月31日以前)が空き家を相続から3年以内に売却する場合特例が受けられる可能性があるとイメージしていただければと思います。
もともとは建物を耐震改修工事または解体して更地の状態で売却することが要件に含まれていましたが、令和5年度税制改正で、譲渡した翌年の2月15日までに建物を耐震補償工事または解体することでも要件を満たせることになりました。
建物の耐震改修工事はあまり現実的ではありませんが、買主様に引渡した後に買主様が建物を解体しても要件を満たせることになりましたので、特例を受けやすくなったかと思います。
尚、上記のように不動産の所有期間によって税額が約2倍になるのですが、相続や贈与で取得した不動産の所有期間は、前所有者様の所有期間を引き継ぐことができますので、相続不動産の譲渡所得税は、長期譲渡所得の税率(20.315%)が中心になるかと思います。
②印紙税
売買契約書には不動産の売買代金に応じた収入印紙を貼付する必要があります。
下記国税庁HPのように不動産の売買契約書に貼付する収入印紙は軽減されていますが、売買代金が高額になればなるほど収入印紙税の額も高額になりますので、印紙税も考慮していただくことをお勧めします。
国税庁 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm
③登録免許税
「相続したときに課税される税金」でも説明をしましたが、不動産を売却する際にも登録免許税が課税されることがあります。
通常不動産を取得する方に課税されるため売却時に課税されないこともありますが、相続不動産を売却する際は不動産に抵当権や根抵当権(不動産を融資を受ける担保として提供している場合に設定される権利です。)を抹消する際に登録免許税が課税されます。
抵当権・根抵当権の抹消に係る登録免許税は、不動産1つにつき1,000円なので大きくない金額ではありますが、別途抵当権・根抵当権の抹消を担当する司法書士の報酬が発生します。
その他も不動産売却時に登録免許税が課税される状況として、氏名や住所変更登記がありますが、相続登記で最新の氏名・住所で登記をしているとはずなので、相続不動産の売却では抵当権・根抵当権の抹消以外に登録免許税が課税されることは多くないかと思います。
相続不動産を貸していると課税される税金
相続不動産をご自身で利用しない場合に第三者に貸出す方や、そもそもアパートやマンションを相続する方もいらっしゃるかと思います
不動産を賃料を受け取って貸出す場合は、所得税の確定申告が必要になります。
不動産収入がある分所得税が課税されてしまうのは仕方がないことですが、見落としがちなポイントとして、扶養になっている方が一定金額以上の不動産収入を得ると扶養から外れてしまうことがあります。
譲渡所得税にも通じることですが、扶養になっている方が不動産を相続して賃貸や売買を行うと、扶養から外れてしまい思わぬ出費となってしまうことがありますので、遺産分割協議の際に各相続人様の扶養の状況も考慮していただくと良いかと思います。
また、勤務先によっては副業禁止の会社もあると思いますが、不動産収入が副業とみなされるケースもあります。
今回の相続不動産にかかわる税金とは少し離れますが、賃貸不動産を相続する場合や、相続後に賃貸する場合は、扶養とともに勤務先の就業規則をご確認いただくことをお勧めします。
相続不動産にかかわる税金を準備しておきましょう
以上が相続不動産にかかわる税金の全体像です。
場面によって課税される税金が異なりますが、税額の大きいものとしては、相続税や譲渡所得税が挙げられます。
当センターへご相談いただいた場合、相続税が課税される可能性が高い方の初回面談では税理士を同席させて頂き、初回面談の場で相続税申告の要不要や、概算の相続税額をお伝えしています。
実際に相続税申告をご依頼頂き、税理士での財産評価の結果初回面談時にお伝えする概算相続税額と異なる場合もありますが、スタートラインから相続税額がだいたいどれくらいかかるのかを知っていただくのと、相続税がどれくらいかかるのかを全くわからないのでは、その後の準備期間や遺産分割協議の結果が変わってくることもあるかと考えています。
また、譲渡所得税は実際に売却した金額がベースとなるため、初回面談でお伝えすることは難しいのですが、相続不動産をご売却する場合は、実際にどのような条件・金額で売却ができるかのご提案とともに、概算の譲渡所得税額をご説明していますのでご安心ください。
相続不動産には様々な税金がかかわってきます。
各種税金の額によって、不動産を相続するしないの判断基準にもなり得るかと思いますので、相続不動産の税金がご不安な際はお気軽にご相談ください。