相続コンサルタントの馬渕です。相続で揉めるって、よく聞くけれども実際にはどうして揉めてしまうのだろう?という所を少し分解して解説させて頂きます。

「うちは兄弟仲もいいし、資産もそんなに多くないから遺産分割協議で揉めるなんてないわ」

こんな風に自分の家族には関係のないことのように思う方が多くいらっしゃるのですが、現実は大違い。仲の良い家族であっても、資産が特別多くなくても、それでも揉めてしまうのが相続の難しいところ。様々なご家族のお話をお聞きしていますが、相続は本当に難しいなぁ、と日々感じています。生前にできる対策はいくつかございますので、是非信頼できる相続コンサルタントへご相談頂ければと思います。

遺産分割協議とは?

相続が発生し故人が生前に遺言書を作成していない場合、相続人同士で分け方を相談する遺産分割協議を行います。民法にある法定相続分に基づき公平に分割することが基本的な考えとなります。民法で定めた法定相続は、あくまでも遺産配分の指標のようなものなので、相続人全員の合意があれば、分け方は自由に決めることが可能です。相続されたご資産状況や相続人それぞれのご状況に応じて柔軟に検討をすることが求められます。

現在の民法の定めですと相続人が遺産を分け合うことが原則ではありますが、まだまだ家督相続の名残もあり、世代間での価値観に開きがあるのも事実です。家督相続は昭和22年に廃止されました。今年77歳になる方が生まれた年になります。ちょうど家督相続の時代に育った80-90代の親世代の方と相続についてお話すると、子供や孫世代との価値観の相違が露呈し、トラブルのもとになることも。。。

さて、話を本題に戻します。

 

家族の間柄も良く「相続人間で話し合いをし、皆平等に分けましょう」と、相続人間で合意形成が図られた場合でも、紛争に発展してしまうことがあるのが相続の難しい点です。相続人間で「法定相続分通り平等に分ける」をゴールに設定した場合でも、揉めてしまうその理由について解説します。

平等に分けるが難しい理由とは?

1.不動産が分けられない

遺産分割協議で大きな課題となるのが不動産です。

資産が現金のみであれば均等に分割し公平性を保つことは容易ですが、均等に分けるということが難しいのが不動産。相続人間で名義を共有にするということも可能ですが、不動産を共有名義にすることはあまりお勧めできません。

なぜなら、代を重ねるごとにどんどん権利が細分化されていってしまうからです。しまいには100人もの共有者がいる不動産になってしまうなんてこともあり得ます。持ち分の全員の合意がなければ、売却も管理もできなくなってしまい、実質塩漬け状態になってしまうなんてことにもなりかねません。

①相続不動産の活用方法について、相続人間での方針がまとまらない

先祖代々から引き継いできたご実家。ご両親が亡くなられて、子供世代が相続することになった場合、ご実家の不動産を巡って兄弟間で考えが分かれてしまったり、先祖代々の土地だと、他の親族のお気持ちなどを考慮したりと、相続人間での気持ちがまとまらないといったケースが多々あります。

不要な不動産であれば、売却して現金化したものを相続人間で分割するのが合理的でシンプルな選択肢です。おそらく相続に詳しくない不動産業者などはこういった方法を提案してくるでしょう。しかし、前述したとおり思い出の詰まった不動産を簡単に売却できるものでもありません。

仮に二人兄弟のうちの長男が不動産を引き継ぎ、次男にはその代わりに同等の現金や株式を相続させるといったことになったとしましょう。長男は不動産を引き継いだが、実際にはやっかいごとを任されたと感じていて、現金をもらえた次男をうらやましく思っているかもしれません。一方で次男は、将来の不動産の地価の上昇を期待していて、貧乏くじを引かされたと感じている。そんなことで、わだかまりが残ってしまうといったことが往々にしてあります。

②代償金を準備できない

 ①でご紹介した兄弟のケースで、相続財産のほとんどが不動産であった場合で考えてみましょう。例えば、1億円の不動産を兄が相続し、預金が4,000万円を弟が相続した場合相続財産としての価値の差が6,000万円あります。兄が3,000万円を弟に支払い、双方の取得金額が7,000万円で平等になるように調整する必要があります。このような方法を、「代償分割」といい、兄が弟に支払う現金を代償金と呼びます。

ここで問題になるのは、代償金をどう捻出するかという点です。

公平な遺産分割の為に代償分割という方法は有効ですが、代償金が高額になればなるほど、支払いができないという可能性があります。支払いができない場合には、結局不動産を売却せざるを得なくなってしまったり、土地を分筆して売却する等しなければならなくなってしまします。

今回のケースで、もっと話を複雑にするとすれば、相続財産である不動産に両親と共に兄が家族で同居していたとしましょう。その場合、代償金が捻出できずに不動産を売却しなくてはならなくなってしまったとすれば、兄家族は住み慣れた自宅を売却しなければならなくなってしまいます。このような複雑な事情が絡むと、より遺産分割が難しいということがお分かりいただけると思います。

こういったことにならないように、相続発生前からご家族で話し合いをし、代償分割を視野に入れた生前対策を検討することがとても重要です。

③評価の見解の相違による紛争

不動産には一物四価と言われるように、いくつかの評価指標・評価方法があります。不動産は価格も大きく、資産全体に与える影響も絶大です。例えば、相続税路線価で評価するのか、はたまた時価で評価するのかでも金額に開きがでます。その為、どの評価を用いるかによって相続人間での見解の違いや誰か一人にとって有利な評価となってしまうといったことで、揉めごとに発展してしまうのです。

不動産の評価はとても奥深く、投資的な側面も強いため市況の影響も大きく受けるものですので時間軸もふくめて相対的に評価をする必要があります。

相続や遺産分割時の不動産評価や売却については、高度な知識が必要となります。相続不動産だからこその注意点もありますので、相続に詳しい専門の不動産業者や不動産鑑定士などに相談することをおすすめします。

2.相続税・譲渡税の問題

 遺産分割においては、税務面を考慮することも非常に大切です。遺産の種類や分割の方法によって税額計算が大きく変わることがあります。

不動産については、税額控除の特例制度もありそれらが利用できるかを考慮した上で分割方法を決定することも必要です。知らずに分割してしまうと、税金の面で大きな影響を及ぼします。遺産分割の際には、専門家と相談し分割方法によって税負担の増減がないかしっかり検証をすることをおすすめします。

感情面だけではなく、税務面(勘定面)も遺産分割において分け方を決める重要な視点となる為注意が必要です。

3.昔の不満が噴出する

・同居中に身の回りの世話や介護をしていた

・被相続人の生活費や入院費などを負担していた

・特定の兄弟にだけ、住宅購入の資金援助や学費の援助をしていた(特別受益)

 

自分だけが損をしている、とか自分以外の兄弟だけ優遇されていると感じてしまっていたりすることが、遺産分割協議の際に噴出してしまうことも。また、相続人本人だけではなく、その配偶者や子どものお気持ちなども絡み更に複雑になってしまうなんてこともあります。

 

今日は、遺産分割協議でもめてしまう理由をおおまかに3つのポイントで解説いたしました。その他にも、もっと複雑で知らない相続人がいたとか、知らない債務が見つかったとか。

 

いかがでしょうか。自分にもあり得るような気がしませんか?

誰かが不平等感を感じてしまうとそれがわだかまりになってしまいます。

 

遺産分割では、どうしても感情的になってしまったりすることが多いのですが、相続人同士で互いの事情を理解し合い、相続人それぞれの意向を尊重した分割のためにある程度の譲歩をすることも大切なことです。

円満な遺産分割のためには、特に問題になりやすい不動産について様々な知識を持った専門家のアドバイスを受けることでご家族に合った柔軟な解決方法のご提案が可能です。

また、相続が発生する前に相続財産の内容を事前に家族で共有して備えることも非常に重要です。合わせて、遺言書を作成したり、相続税を見据えた対策を実施することで家族間での紛争の種をできる限り軽減することも可能です。

幸せな相続の為に、早めの対策をおすすめしています。

 

執筆:相続コンサルタント 馬渕かなみ

監修:おがわ司法書士事務所 小川 直孝 司法書士