皆さんこんにちは。
相続コンサルタントの久保田です。
皆さんは土地の分筆という作業をご存知でしょうか?
土地の分筆とは、1筆(土地単位は筆といいます。)の土地を2筆以上に分割する手続きをいいます。
相続の場では、相続発生後に出来る相続対策として利用されることもありますが、そもそも土地の分筆にはどのような手続きが必要になるかをご説明したいと思います。
分筆の流れと期間
大まかに分筆までは下記のような流れになります。
①役所調査、資料収集
②測量
③仮測量図の作成
④隣地との境界確認
⑤境界標の設置
⑥分筆登記申請
道路との境界が確定している場合はお隣の土地所有者様と境界確認をことが中心になり、スムーズに進めば2ヶ月ほどで分筆登記完了できると思います。
一方で、道路との境界が確定していない場合は、道路を管理する自治体との協議が必要になり、+2ヶ月~3ヶ月ほどの期間がかかります。
そのため、相続発生後の相続対策で分筆を行う場合は、相続税申告期限までに分筆が完了できるよう早急に着手する必要があります。
また、お隣の土地所有者様との境界確認は、お隣の土地所有者様と都合が合わない場合や、お隣が空き家になっていて土地所有者様が遠方にお住まいの場合は、スムーズに境界確認が進められず上記の期間以上に時間がかかってしまうこともあります。中には、スムーズに境界確認に応じてくれない方もいらっしゃるので、時間に余裕を持って分筆作業に着手していただくことをお勧めします。
分筆の費用は?自分でもできる?
土地の大きさや、接している土地の数によって費用は異なりますが、土地家屋調査士に依頼した場合、80万円~100万円ほどの費用が発生します。そのため、相続税対策で分筆を行う場合は、節税できる相続税額と分筆費用とで検討する必要があります。
また、ご自身での分筆はほぼ不可能といえると思います。
上記の分筆までの流れの内、①役所調査、資料収集はなんとかご自身でも対応ができそうですが、測量では専用機器を使いますし、隣地の方との境界確認や境界標の設置では正確な境界の位置を特定する必要がありますので、個人の方がご自身で対応するには限界があると思います。(もちろん私も自分では対応できません。)
費用は高額になりますが、費用以上のメリットがあれば分筆作業を土地家屋調査士にご依頼いただくことをお勧めします。
そもそも分筆する必要はあるの?
相続税対策として分筆を行うことに触れましたが、どんな土地でも分筆すれば節税になるわけでは無いので、実は相続税対策で分筆を行うことは多くありません。分筆が必要になる主な場面としては、土地を売却するタイミングかと思います。
例えば、1筆の土地の上に複数の建物が建っている状況で、一部分だけを売却する場合は対象の土地を分筆する必要があります。
売却のために分筆を行う場合は、上記の通り最短で2ヶ月、道路との境界確定が必要な場合は5ヶ月ほどかかることもありますので、お引渡しの最短スケジュールを明確にして買主様と売買条件を調整していかないと、買主様と揉めてしまう原因にもなりますので注意が必要です。
また、以前相続のご相談の中で分割対策として分筆をお手伝いさせていただいたことがありました。
広い1筆の土地をお持ちで、お子様が2名様いらっしゃったのですが、ご自身も過去に不動産の共有で苦労をしたご経験があったので、相続が発生した後に不動産を共有にせずお子様お二人がそれぞれ単独で土地を所有できるようにしたいとのご要望でした。
まだまだお元気な方でしたので相続の発生も先のお話でしたが、お子様方からもご意向を伺わせて頂き、万が一が起こった際にお二人がそれぞれ土地を相続して、その時の状況次第でそれぞれ別の建物・ご一緒に大きな建物どちらでも建築ができる分筆案をご提案させていただきました。
このときの分筆費用はご相談者様がご負担されたので、相続が発生した後に分筆することと比較して若干ですが相続税対策にもなりました。
分筆はただ半分に分ければいいの?
2筆に分泌する場合、単純に1筆の土地を2分割してしまうと建物が建てられないうなぎの寝床のような土地になってしまうこともあります。そのため、分筆を検討する際はハウスメーカー等にも相談して建物を建てられる土地の形・サイズに分筆することが重要だと思います。
また、将来の相続までを考慮するのであれば、税理士にも相談して分筆後の土地の相続税評価額がどのように変動するのかも確認しておくと、各相続人様が相続する土地の評価額の差を減らすことができ、不平等感をなくすことができます。
上記の分割対策で分筆をお手伝いさせていただいた事例では、あえて片方の土地を不整形地にする分筆を行いました。
有効宅地面積(実際に建物を建てられる部分の土地面積)では2筆の土地に差がありますが、相続税評価額がほぼ同額になり、分筆前の相続税評価額と比較してそれぞれの土地を別々に利用した際の相続税表額合計は約20%ほどの評価減ができる土地となりました。
すぐに建築する予定がない中ではハウスメーカーへの相談もしにくいかもしれませんので、その際は当センターへご相談ください。
ご状況に沿って分筆するメリットや効果とともに、将来の相続や建築を考慮した分筆案をご提案いたします。