相続税の申告は、すべての相続において発生するものではありません。相続税が課税されるケースは、相続全体の9.3%と言われています。この数字だけ見ると、相続税の支払い対象となる方は「少ない」印象を持つかもしれませんが、高齢化社会を突き進む日本は、高齢者の人口が多く被相続人(死亡者)が増えていくため、相続税の課税も増加していく傾向にあります。

 

では、実際に相続税の申告が必要となった場合には、どのような書類を用意すれば良いのでしょうか。今回の記事では、相続時に慌てないように、「相続税申告で必要になる書類」についておさらいしていきます。ぜひご一読ください。

 

出典:“令和3年分 相続税の申告事績の概要 2.課税割合の推移”国税庁ウェブサイト

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf(参照2023.9.7)

 

 

相続税の支払い対象となるケースとは

 

相続税の支払い対象となる方は、相続税の課税対象の合計が、基礎控除額を超えている方です。住宅ローンなどの借入がある場合は、マイナスの財産として相続する必要があるため、プラスの財産から差し引いたものが課税対象となります。

 

■基礎控除

「3000万+法定相続人数×600万」で算出します。たとえば、夫が亡くなり、妻と子1名で相続する場合は、「3000万+2×600万」のため、4200万が基礎控除額となり、この金額を課税対象となる遺産の合計金額が越えなければ相続税の申告は不要です。

 

特例を受ければ相続税申告は不要?

 

相続税申告にはさまざまな特例が用意されています。特例を受けた後の課税対象額を算出すると、基礎控除額を下回る場合がありますが、小規模宅地等の特例などの特例は、相続税申告が適用要件となっています。特例を使う場合には細やかな要件をクリアしている必要があるため、まずは専門家に相談することがおすすめです。

 

相続税申告に必要な書類とは

 

では、実際に相続税申告に臨む場合には、どのような書類が必要となるでしょうか。この章では必要書類をわかりやすく解説します。

 

相続税申告者が全員揃える必要がある書類

 

相続税申告に必要な書類は、内容によって必要書類が異なっています。しかし、共通して申告者全員が用意する書類もあります。それは、被相続人と、相続人の関係を証明するものです。

 

【被相続人について】

・被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本

 出生から死亡まで、すべての戸籍謄本が必要。法定相続情報一覧表でも可。取り寄せ先は市区町村の役所等。

 

・被相続人の住民票の除票

死亡時の住所地を管轄する市区町村の役所等で取得。本籍地記載要、マイナンバー記載不要。

 

【相続人について】

・相続人の戸籍謄本

被相続人の戸籍と重複する場合は不要。

 

・相続人全員のマイナンバーカードの番号

 発行しておらず、通知カードも無い場合には、住民票に記載があるものを用意。

 

・相続人全員の身分証明関係の書類 (マイナンバーカードがあれば不要)

 無ければ運転免許証やパスポートなどの写し。

 

【その他の書類】

相続時に遺産分割協議書の作成を行った場合、使用した印鑑を証明する「印鑑証明書」の原本が必要です。また、相続時精算課税制度の活用時などには、相続人の戸籍の附票も用意します。

 

遺産分割や遺言に関する書類

 

遺産分割協議が行われたり、遺言書があったりした場合には以下の書類が必要です。

 

・遺言書の写し

・遺産分割協議書の写し

・相続放棄をした方がいる場合は、受理証明書

・未成年者が相続人にいる場合は、特別代理人選任の審判証明書

 

不動産相続に関する書類

 

遺産の中に不動産があったら、相続税の申告時には不動産評価に関する書類などを用意する必要があります。

 

・該当する不動産の固定資産税評価証明書

・登記事項証明書(登記簿謄本) など

 

必要に応じて、公図なども用意する必要があります。不動産についてはその他の書類も必要となる場合が多いため、専門家にアドバイスをもらうことがおすすめです。

 

配偶者控除や小規模宅地等の特例に関する書類

 

利用者の多い配偶者の税額の軽減(配偶者控除)や、小規模宅地等の特例を利用する場合に必要となる書類もあります。

 

【配偶者の税額の軽減(配偶者控除)】

・遺言書もしくは遺産分割協議書(ある場合のみでOK)

・相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書がある場合)

・相続税申告までに遺産分割協議がまとまらない場合には、申告期限後3年以内の分割見込書 

 

【小規模宅地等の特例】

・遺言書もしくは遺産分割協議書(ある場合のみでOK)

・相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書がある場合)

・相続税申告までに遺産分割協議がまとまらない場合には、申告期限後3年以内の分割見込書 

・被相続人の介護施設などの入居関係書類(ある場合のみでOK)

 

■家なき子特例(※1)を受ける場合

・相続人の戸籍の附票

・相続人の自宅の賃貸借契約書

 

(※1)家なき子特例とは、被相続人の自宅には同居していなかった親族が相続する場合でも「小規模宅地等の特例」の80%減額を使えるようにするという特例。詳しくは国税庁HPもご参照ください。

 

相続税の申告には預貯金や株式などの書類も必要?

 

相続税を申告するためには、被相続人が遺した遺産の額を申告する必要があります。そのため、以下のような書類も準備をしましょう。

 

・預貯金の利息まで確認できている残高証明書など

・家族名義になっている預金の残高証明書など(名義預金)

・株式や投資などの財産内容が分かる配当金支払通知書など

・保険関係の書類

 

退職金や会員権なども遺産に含まれる

 

相続税の申告の際には、被相続人の遺した退職金や、会員権(ゴルフ場など)も財産として申告する必要があります。退職金の場合は支払通知書など、会員権の場合は証券などを用意します。

 

価値のわからない貴金属や骨とう類などはどうする?

 

被相続人が遺した遺産の中には、宝石や絵画など、一見しただけでは現在の価値が分からないものが見つかることも多いでしょう。では、貴金属や骨とう類はどのように書類を用意すれば良いでしょうか。貴金属関係などは、鑑定書を用意することで、現在の価値を証明できます。骨とう品が多い場合には鑑定書の取得に時間がかかるため、早めに準備を開始しましょう。

 

マイナスの財産も承継するため書類が必要

 

相続税の申告にはマイナスの財産に関する書類も用意します。

 

・借入残高証明書

・金銭消費貸借契約書と返済予定表

・滞納税の通知書

・その他未払いの物がある場合、企業や個人からの請求書など

 

また、良識の範囲内の葬祭費用は控除できます。葬祭費用の領収書などは破棄せずに保管しましょう。

 

贈与関係は要注意!漏れやすい書類とは

 

相続に臨まれる方の中には、生前に相続税対策として「贈与」を行っている方は多いでしょう。では、贈与を行っている場合には、相続税申告時にはどのような書類を用意すれば良いでしょうか。

暦年贈与は相続開始前3年以内に行われた贈与が相続税の課税対象ですが、令和5年度税制改正により、対象期間が3年から7年へ延長されます。

ただし、この延長された4年間の贈与については贈与額から100万を控除した額が相続財産に加算されることになります。

令和6年1月1日以後の贈与から適用対象のため、暦年贈与をご検討中の方はご注意ください。

・過去3年分(※令和6年1月1日以後は7年分)の贈与申告書

・贈与時の契約書

 

 

相続時精算課税制度の必要書類とは

 

相続時精算課税制度を活用している場合は、選択した際の届出書(相続時精算課税制度選択届出書)を提出する必要があります。また、贈与税の申告書や贈与契約書は暦年贈与と同様に用意します。

 

相続税申告には多くの書類が必要!悩んだらどうするべき?

 

相続税申告に必要な書類を解説しましたが、上記以外の書類が必要となるケースもあります。相続の開始は大切な家族のご逝去とともに始まるものであり、お気持ちの整理もままならない中で、書類を調べたり、整えたりすることは大変な苦労です。また、書類の準備と並行して、遺産分割協議を行うご家族も多いでしょう。そこで、もしも相続税申告に悩んだら、一体どうするべきでしょうか。

 

相続税申告はもちろんのこと、相続全般は非常に複雑な手続きを要することも多くなっています。安全な相続税申告を目指すためにも、まずは専門家に相談されることがおすすめです。相続税申告自体は税理士に依頼する印象がありますが、不動産がある場合は司法書士、遺産分割協議に難航しそうな場合には弁護士に相談をする必要もあります。

 

相続が始まったら、専門家にワンストップでつなぐ、一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターにご相談ください。相続税の有無はもちろん、必要書類などもしっかりとサポートします。お気軽にまずはご連絡ください。

 

 

執筆:岩田いく実

監修:税理士法人トゥモローズ 髙畑 光伸 税理士