こんにちは。

司法書士の石川です。

3連休、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 

本日は、最近実際にご相談をいただいた事例をご紹介します(内容は、実際ご相談をいただいたものから一部変更しています)。

 

ご相談にいらしたのはOさん(60歳)、ご相談内容は奥様に自宅を全て相続させたいというものでした。

 

Oさんの法定相続人は、

・前妻との子Aさん

・現在の奥様との子Bさん

・現在の奥様

の3名です。

 

Oさんが何も対策をしないと、奥様が1/2、Aさんが1/4、Bさんが1/4の割合で、遺産を相続することになり、奥様に自宅を相続させたいというOさんの想いは実現しない可能性が残ってしまいます。 (相続人全員の話し合いがまとまれば、奥様が自宅を相続することはできますが、前妻の子が相続人に含まれるケースでは話し合いが難航することが少なくありません。)

 

①遺言を作成する。

まず、一つの方法としてOさんに遺言を書いてもらうという方法があります。

遺言の内容として、自宅を奥様に相続させる旨を記載しておくと、自宅は奥様が相続することになります。

 

しかし、Oさんの死後、実は遺言が要件を満たしておらず無効となってしまったり(残念ながらOさんの死後は、遺言を修正することができません)、遺言が発見されないというリスクもありますので、自筆証書遺言よりは公正証書遺言での作成の方がいいかもしれません。

 

また、公正証書遺言には公正証書遺言の有無を検索できる「遺言検索システム」があるため、相続人がそのシステムを知っていれば遺言を見つけてもらえるかもしれませんが、知らなければ遺言を発見してもらえないかもしれませんので、遺言を書いたことを奥様に伝えておくという方法も考えられます。

 

遺留分も考慮しましょう。

その他に、遺言を書く際の注意点として遺留分があります。

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人が最低限相続することが保証されている相続分のことをいいます。

 

本件では、奥様が1/4、Aさんが1/8、Bさんが1/8の遺産に対する割合の遺留分を有しています。

遺産を全て奥様に相続させる旨の遺言をのこしたとしても、Aさんが遺産の1/8に相当する相続分を奥様へ請求することができます(Bさんは奥様と同居しており、遺言内容にはあらかじめ了承しています)。

そのため、Aさんの遺留分への対策もしておいた方がいいでしょう。

 

②遺留分相当の金銭をAさんに相続させる。

Oさんに、自宅以外に預貯金等があるのであれば、Aさんの遺留分に相当する分の金銭をAさんに相続させるという内容の遺言にしておきます。

 

このようにすれば、Aさんは自宅に対して遺留分を請求することができません。

 

③遺留分減殺請求の対象財産を指定しておく。

全財産を奥様に相続させる旨の遺言を書いておき、もしAさんが遺留分減殺請求をしてきたときは、自宅ではなく預貯金(自宅以外に財産が前提です)から支払うというように、遺留分が請求されたときにその対象となる財産を遺言で指定しておきます。

 

Aさんが遺留分を請求してきたときも、自宅については奥様が相続することができます。

 

④Oさんの生前に遺留分を放棄してもらう。

Aさんの遺留分は、Oさんの生前に放棄をしてもらうことができます。遺留分を事前に放棄してもらえるのであれば、Oさんの死後にAさんが奥様へ遺留分を請求することができなくなります。

なお、遺留分を事前に放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。

 

本件においてOさんの話では、Aさんは遺産は不要とのことでしたので、遺留分を事前に放棄してもらうという方法は一つの選択肢となります。

 

Aさんが、Oさんの死後に奥様に遺留分を請求しないと口約束したところで、Oさんの死後にAさんの気持ちが変わったら元も子もありません。

 

⑤付言事項を書いておく。

遺言には、どうしてそのような遺言内容にしたのかや、相続人に対する想い、感謝などを記載することもできます。これらの事項を付言事項といいます。

 

付言事項には法的な効力があるわけではないため、記載された事項を実現する義務が相続人等にあるわけではありませんが、亡くなった人の想いは大切にされる傾向にあるように思います。

 

Aさんに対して、遺留分を奥様に請求しないで欲しい、あるいは遺留分相当の金銭を相続させることで納得して欲しいといった内容を記載することが考えられます。

 

⑥遺言執行者の選任を検討する。

遺言の内容が実現するか不安である場合は、遺言執行者を選任しておくことも検討します。

何といっても、自分が亡くなった後は遺言の内容が実現したかどうか確認をすることができません。

 

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために行動する人で、弁護士や司法書士等の第三者である専門家を遺言執行者に選任しておくと、遺言の内容が実現する可能性が非常に高まると思います。

 

 

相続には、上記のような対策の他に、(相続税が発生するようなケースでは)相続税がどれくらい発生するのか、その支払いをどうするか、使わなくなった不動産をどうするか等、色々な観点から検討する事項があります。

 

そのため、相続に関するご相談は、法律に関する事項だけではなく、不動産、税金、保険、年金等、多くの事項をワンストップでご相談いただける「さいたま幸せ相続相談センター」にお問い合わせください。