皆さんこんにちは。相続コンサルタント・行政書士の稲垣です。

 

2020年に神奈川県の逗子市でマンション敷地の斜面が崩落し、直下の市道にいた高3の女子生徒が死亡した事故を巡り、遺族は民事裁判を提起し、2023年12月15日に横浜地裁はマンションの管理会社と同社元担当者に遺族に対する損害賠償を命じました。

 

今回の事故の原因は急速に進んだ宅地開発や、自治体による土砂災害防止に対する調査不足、管理会社の対策の怠りなど様々な要因があります。また遺族はマンションを区分所有する住民も提訴しており、住民からは和解金として1億円が支払われたとのことです。

 

逗子市の事故は本当に痛ましい最悪の事故ですが、不動産を所有している限り、被害の大小はあれど、その不動産を原因とする事故が発生した場合、所有者は責任を問われる可能性があります。特に貸家を所有している方は注意が必要です。今回は不動産所有者の工作物責任について解説していきます。

 

工作物責任

 

民放717条には土地の工作物等の占有者および所有者の責任を次のように定めています。

 

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

 

例えば自身が所有する貸家のブロック塀が倒れて通行人にけがをさせてしまった場合、まず貸家の入居者、または逗子の例のように建物の管理を管理会社に任せている場合は管理会社が責任を問われます。そこで入居者または管理会社には過失がないということになると、大家さんの責任が問われます。この大家さんの責任については大家さんに過失がなかったとしても、その損害を賠償する責任があります。工作物とは建物本体はもちろん、門扉や物置、車庫などの他、竹や庭木が倒れた場合の損害についても同様とされています。

 

瑕疵とはなにか

瑕疵とは建物が本来備えるべき性能が欠けていることを意味しています。民法717条に記載の設置の瑕疵と保存の瑕疵について解説していきます。

 

設置の瑕疵

建物の建設当時から瑕疵の存在する場合が設置の瑕疵です。建築基準法等の法令に適合していないなど欠陥のある物件は、瑕疵となり事故が起こったときに工作物責任を問われる可能性があります。大家さんの中には自分で建物の増築までする方もいますが、このようなケースは注意が必要です。

 

保存の瑕疵

保存の瑕疵とは土地の工作物を設置した時点では瑕疵は存在していなかったものの、その後の維持管理の過程で老朽化するに伴い発生するにいたった瑕疵です。先ほども例にあげましたが、ブロック塀に亀裂が入っており、倒壊の恐れがある場合は明確に保存に瑕疵があるといえます。またマンションにおいて定期的な消防点検が義務付けられているのにもかかわらず、これを怠たり、万が一大きな火災が起きた場合は保存の瑕疵が問われることになります。

 

自然災害が起きたとき

自然災害は人為的なものではない為、原則的には所有者などに損害賠償責任は認められないこととされています。しかし、軽度な地震でブロック塀が倒壊してしまった場合や、多少の強風では飛ぶはずのない瓦や看板が外れて飛んでしまい他人に損害を与えた場合などは、保存に瑕疵があるとされ損害賠償責任を負う可能性があります。

 

対策

万が一のときの対策としてあるのが施設賠償責任保険です。火災保険とは別に、または火災保険の特約として加入することができます。年間の保険料も1万円程度で1億円までの補償をする商品もあり、非常にコストパフォーマンスの高い保険です。未加入の大家さんは加入をおすすめします。

 

まとめ

今回は不動産の工作物責任にていてお話しました。管理を管理会社に任せていたとしても、不動産の所有者は予想もしないケースで責任を問われる可能性がある為、定期的なメンテナンスや万が一のときの対策を欠かさずに行う必要があります。どうしても維持管理が困難である場合は、建物の解体や売却も視野に入れる必要があるでしょう。当社ではそのような不動産の相談も受け付けております。お気軽にお問合せください。