税金の支払いは現金納付が原則なのですが、相続税の場合は一定の条件を満たすことで、金銭以外での納付が認められており、これを「物納」といいます。物納は相続税を延納によっても金銭で納付することが困難な事由がある場合に、納付が困難な金額を限度として認められます。
金銭納付が困難かどうかは、相続人が近いうちに退職金をもらう予定があるのかどうかなど、近未来における金銭収入も考慮したうえで判定されるようですので、そう簡単に認められる制度ではありませんが、こんな制度もあるのだと知っておくことは重要だと思います。
ところで上場株式を物納する場合の評価額は、相続や贈与と同じく以下の中から最も低い価格で評価することが認められています。
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- 相続(死亡日)・贈与日の最終価格
- ①の属する月の平均価格
- ①の属する月の前月の平均価格
- ①の属する月の前々月の平均価格
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つまり実際に相続税を納税しなければならない時点で、換金しようと考えている上場株式が大きく下落している場合などは、その上場株式を売却して納付するよりも物納する方が、相続税評価額で納付したとみなしてもらえるため、納税側から見ると得をしたことになります。
また物納の場合は、その物納にあてた財産の譲渡はなかったものとみなされます。つまりそれは上場株式の譲渡益税は非課税ということです。ですから買値が安く利益のたっぷり乗った上場株式と、損をしている上場株式を選択できる場合、前者を物納する方が譲渡益税を支払わなくてもよい分だけ得だということになります。
ところで物納できる主な財産(全部を記載しているわけではない)には、以下のように順位が決められています。
これは物納できる財産の順位を示していますので、第1順位の財産を物納してからしか第2順位の財産を物納することはできません。
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第1順位の1:不動産・船舶・国債・地方債・株式や社債やREIT等のうち上場しているもの
第1順位の2:不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位の1:株式や社債やREIT等のうち非上場であるもの
第2順位の2:非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第3順位:動産
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以前は物納における株式の順位は上場・非上場を問わず第2順位とされていました。しかし現在は法改正によって上場株式は第1順位、非上場株式は第2順位とされることになりました。非上場株の場合は流動性が低いので、相続した場合は物納し、その後発行会社に財務大臣から買い取ってもらうようなケースもありそうです。
ちなみに「物納劣後財産」とは、地上権が設定されている土地や、配偶者居住権の目的となっている建物および敷地といったような、なにがしかの制約がある財産という意味です。またここには出てきていませんが、物納には「管理処分不適格財産」というものも規定されています。これは不動産であっても担保権が設定されている状態のものや、株式であっても譲渡制限がかけられているような状態のものを指します。
いずれにしても、相続税の支払いで物納を考えなければならない場合は、税や相続の専門家に相談することが必須だと思います。
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