皆さんこんにちは。
相続コンサルタントの久保田です。
相続対策によく利用される不動産として収益不動産のお話をすることが多かったのですが、今回は相続に登場することの多い不動産の種類やそれぞれ相続実務・不動産実務の観点からご説明をしたいと思います。
【不動産の種類】
一口に不動産の種類といっても、切り口によって様々な種類があります。
まずは大きく、土地と建物に分けられます。
こちらは皆さんもイメージがしやいかと思います。
不動産という言葉は、後記の種類は問わず土地・建物を総合して表す言葉だとざっくりとイメージしていただければいいかと思います。
【土地の種類】
土地の種類も利用状況や権利関係といった様々な観点から一例にはなりますが下記のように細分化できます。
<利用状況>
・建物が立っている
・農地
・駐車場として利用している
・更地
<権利関係>
・ご自身で利用している
・第三者に貸している
・第三者から借りている
・お一人が所有している
・複数名で共有している
<法律>
・建物を建てられる(市街化区域)
・建物を建てにくい(市街化調整区域)
・建物を建てられない(道路に接していない等)
<地目>
・宅地
・田
・畑
・山林
・雑種地等
相続実務の場では『ご自宅が立っている土地』『農地』が登場することが多い土地かと思います。
この中でも相続の観点からご注意頂きたい点としては、農地の相続税評価です。
多くの農地は路線価方式ではなく倍率方式(その土地の固定資産税評価額に対して、エリア・地目によって定められた倍率を乗じる方式です。)を行うことになりますが、農地の固定資産税評価は他の土地と比較して小さく設定されていることから設定される倍率が数十倍等大きくなることが一般的です。
そのため、さほど評価が大きくないと考えていた土地が財産評価の中で高額になってしまうことがありますのでご注意が必要になります。
不動産実務の場では、需要がある土地なのかを判断することが重要になります。
需要の強い土地は良い条件での取引がしやすくなりますが、需要の弱い土地はそもそも取引ができないこともあります。
土地の需要は下記の様な要因で変動しますので、ご自身の土地がどの様な土地なのかを当てはめていただくと、売買や賃貸での需要の強弱が見えてくると思います。
<需要の強い土地>
・駅から近い
・形が正方形に近い
・間口が広い
・建物が建てられる
<需要の弱い土地>
・建物が建てられない
・駅から遠い
・形が悪くデッドスペースが多い
・間口が狭い
【建物の種類】
土地と同じ様に建物も切り口によって様々な種類に分けられます。
<構造>
・木造
・鉄骨造
・鉄筋コンクリート造
・鉄骨鉄筋コンクリート造
<用途>
・自宅
・事務所
・店舗
<権利関係>
・一棟所有(一般的な戸建等)
・区分所有(分譲マンション等)
・第三者に貸している
相続実務の場では、土地と同様に『ご自宅』が登場することが多いと思います。
相続したご自宅を相続人様のどなたかがご利用される場合は、そのままお住まいになれるか、リフォームが必要なのかも遺産分割協議のポイントになるかと思います。
不動産実務の場では、建物の種類も重要ですが、築年数や建物の維持管理状況も重要なポイントになります。
築年数が経つにつれ経年劣化も進んできますが、適切な維持管理を行うことでより長期的に建物の価値を維持することができるようになります。売却をする際に適切な維持管理をされている建物は価格も高くなりやすいので、ぜひ日常的な清掃や定期的な修繕を行っていただきたいと思います。
【不動産の種類と特徴】
土地と建物をそれぞれご説明しましたが、次は土地と建物を合わせた不動産全体の種類とそれぞれの特徴をご説明しようと思います。
・ご自宅不動産
こちらは問題なくイメージができると思いますが、相続実務・不動産実務いずれでも、土地建物の所有権がどなたにあるかにご注意ください。
法務局で取得できる登記簿謄本で土地建物の所有者を確認できますので、一度ご確認いただいてもいいと思います。
過去にご相談いただいた方のには、相続お手続きをご依頼頂き不動産の登記簿謄本を取得したところ、遠縁のご親戚のご名義になっており全く権利が無いことがわかった方もいらっしゃいました。
非常に稀なケースだとは思いますが、毎年固定資産税をお支払いになっていたとしても、しっかりとご確認頂くことをお勧めします。
相続実務の場では、相続税申告の際にご自宅の土地で小規模宅地等の特例を適用できるかが一つのポイントになります。ご自宅の土地に小規模宅地等の特例を適用できれば、土地の相続税評価額を最大80%オフできますので、できる限りご自宅で小規模宅地等の特例を適用できる状況にしていただくと良いと思います。
・収益不動産
こちらは賃料を受け取って第三者に貸し出すアパートやマンションが該当します。
投資として賃料収入を得る目的で収益不動産を購入する方も多いかと思いますが、相続実務の場では相続税の節税として利用されることが多い不動産です。
不動産は、預貯金や有価証券と違い、実際に売買される価格と相続税評価額との差が大きく、特に収益不動産ではご自身で利用できない分を相続税評価額の減額に利用できます。
とはいえ、お借入をして購入・建築するケースが多いかと思いますので、賃料と返済とのバランスが取れる収益物件をお選びいただかないと、節税した相続税以上にマイナスが発生してしまうこともありますので注意が必要です。
・農地
田や畑の農地も相続ではよく目にする機会があります。
大前提として、相続で受け取る場合を例外として、農地は農家さん(または農地保有適格法人)にしか売却・贈与することができません。
農地を農家さん以外に売却・贈与する場合は、農地を宅地等の地目に変更(農地転用)した上で所有権を移転する必要があるため、他の土地と比較して一手間が必要になります。
ただ、どの農地も地目変更ができるわけではなく、市街化調整区域にある農地は農地転用の許可が降りにくいケースが多いので、事前に農業委員会に農地転用が可能な農地なのかを確認していただくと良いと思います。尚、農地の中には農業振興地域に指定されているエリアがありますが、このエリアにある農地は原則転用が禁止されているため、転用の前に農業地区域からの除外を行う必要があり、より農地転用のハードルが難しい農地といえます。
【まとめ】
今回は相続によく登場する不動産を大まかに説明してみました。
相続財産に含まれる不動産をどの様に分けたら良いかといったお悩みや、相続した不動産をどうしたら良いかとお悩みの際に、一度その不動産がどの様な特性を持っているかご確認いただいてもいいと思います。
農地をどうしたら良いかというご相談をお受けすることも多いのですが、上記の通り農地は他の土地と違い、売却や譲渡で第三者に権利を移転することが難しい土地でもあります。
お子様が農家では無い場合は、早い段階からお子様とご相談頂き、場合によってはお子様に農地を相続させない対策も必要になるかと思います。
農地も含め、ご所有の不動産でお困りの際はお気軽に当センターまでご相談ください。