「親もいい年齢だし、そろそろ相続のことを話し合うほうがいいのかな。」
相続や贈与に関するニュースを耳にすると、何かしなければと思う方もいるのではないでしょうか。しかし、「元気な親に相続の話をするなんて気が引ける。」「どのようなタイミングで話を切り出せばいいのか。」など、一体何から始めればいいのか、わからない方も多いでしょう。
今回は、相続に関する話し合いのきっかけづくりについて、具体例を用いながらご紹介いたします。
具体例 遠方に住んでいる元気な両親と相続の話をしたい
30代後半のAさん。もうすぐ70歳を迎えるご両親は共に健康で、今のところ相続の話をしたことはありません。最近生前贈与ルールの改正をはじめ、相続税や贈与税に関するニュースを耳にするようになり、「そろそろ話し合いを始めたほうがいいのかもしれない」と思い始めたといいます。
Aさんのご両親は遠方に住んでおり、週に何回か電話で話す程度。趣味や旅行など、これからチャレンジしたいことを嬉しそうに語るご両親を前に「亡くなった後のお金の話をするなんて・・・。」と、なかなか話を切り出せない状態とのことです。
相続に関する話し合いは、ご両親が何歳になったら始めるべき?
そもそも、相続に関する話し合いはいつから始めるといいのでしょうか。「〇歳になったら」といった、どなたにでも当てはまる明確な基準はありませんが、「相続税」という切り口でいうと、相続に関する話し合いを始めるタイミングは早ければ早いほうがいいと考えられます。理由の1つとして挙げられるのが、長期的な計画の立てやすさです。
具体例を挙げて説明しましょう。現在の基礎控除額は【3,000万円+600万円×法定相続人の数】。例えば、配偶者と子2人がいる方の相続が発生したときの基礎控除額は【3,000万円+600万円×3人】、つまり4,800万円です。4,800万円より多い財産を持っている場合は、その差額に税金がかかることになります。
状況を早めに把握することで、相続が発生した際に税金がかからない水準まで財産の金額を抑えるための対策を講じることも可能です。例えば、現制度では贈与税は1年間あたり110万まで非課税とされているため、生前に少しずつ贈与することで、課税される財産を減らしていくことも方法として挙げられるでしょう。
相続の話の切り出し方
財産や相続の話は、早めにしておいたほうがいいといっても、切り出し方がわからない方も多いでしょう。まだ元気な両親に相続の話をするなんて…と思ってしまう方もいるかもしれません。特に遠方に住んでいて電話のみのコミュニケーションをとっていると、普段の会話の中で話題にするのはなかなか難しいものです。
ここでは、相続の話を切り出す具体的なタイミングを2つのパターンに分けてご紹介します。
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近しい方に相続が発生したとき
近しい方が相続を経験したときは、ご自身の家庭で相続の話を切り出す良い機会です。「Bさん家、相続でもめたんだって。」「前から話し合いで決めていたからスムーズだったらしい。」などと言えば、ご自身のご家庭でも相続に関する話し合いに前向きな雰囲気を作り出せるでしょう。
親御様ご自身が病気や介護を経験したときも同様です。「これを機に今後のことを整理してみない?」と話を切り出しましょう。
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年末年始やお盆など
ご両親の病気や介護、近しい人の体験もないという場合は、年末年始やお盆など、ご家族が集まる機会を活用しましょう。
きっかけづくりとして、おすすめなのがエンディングノート。エンディングノートとは、ご自身の終末(エンディング)に備えて、ご自身の希望を書き留めておくノートのことです。所定の形式がある遺言書と異なり、自由に書き記すことができます。書く項目はノートによって様々で、相続や財産に関することだけでなく、延命措置の希望や、残されたご家族やご友人へのメッセージなどを書き留めることが可能です。
エンディングノートは書店で購入できるもののほか、インターネット上、無料でダウンロード出来るものや、自治体で配布しているものもあります。最近では多くの種類のエンディングノートがありますが、お子さまからご両親へプレゼントする場合は、気軽に始められる薄いノートがよいでしょう。項目がいくつもあるノートだと、途中で嫌になってしまう可能性があるためです。まず大切なのは、お気持ちを相続のことに向けてもらうこと。簡単に始められるエンディングノートをプレゼントしましょう。
電話でいきなり相続の話を出すよりも、お互いに顔を合わせたときに「こんなエンディングノートを見つけたんだけど、試しにつけてみたら?」切り出すほうが、自然にスムーズに話を進められるはずです。
相続についてご相談されたい場合は
ここまで相続について考え始めるヒントを紹介してきましたが、とりまく事情や人間関係はご家族によって異なるもの。ご自身に合ったサポートを受けたい方も多いでしょう。そのようなときに活用したいのが相続の専門家によるサービスです。
相続について相談できる場所としては、行政の窓口から民間のサービスまで様々なものがあります。ここからは選び方のポイントを3点お伝えしましょう。
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無料よりも有料
無料よりも有料サービスのほうが、相談者が満足できるサポートを受けられることが多いです。無料サービスは気軽に受けられるメリットがある一方、中には相談するたびに担当者が変わるため、質の高いサポートを提供することが難しく、一般的なアドバイスの提供で終わってしまうものもあります。個々の状況に合わせたサポートを受けたい場合は、有料の、かつ先に見積を提示してくれるサービスを選ぶことをおすすめします。
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電話よりも対面
電話相談よりも、ご相談者様と担当者が直接顔を合わせる対面相談のほうがおすすめです。対面と電話では、意識しなくとも、使う言葉や内容も変わってくるもの。やはり直接顔を見るほうが、相談いただく側としても言葉以外の情報が入ってきやすく、よりご相談者様に対する理解を深められます。ご相談者様としても、担当者をそばで感じられるほうが安心できるでしょう。
もちろん遠方に住んでいらっしゃったり、感染対策の必要があったりと、なかなか直接顔を合わせることが難しい方もいるでしょう。その際は、オンライン会議ツールなどを活用するなど、臨機応変に対応してくれるサービスを選ぶことをおすすめいたします。
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複数のサービスを比較検討する
ここまで相談サービスを選ぶポイントを紹介しましたが、やはり料金やサポート内容、利便性、担当者との相性など、それぞれ特徴があり、どのサービスが合うかは人それぞれです。口コミで評判の良いサービスがご自身にとって良いサービスであるとは限りません。また、サービスを提供する担当者の知見や力量も様々でしょう。
相続相談は、ご家族の人生相談でもあります。他人には言いたくないことも、本音で話さなければならないシーンも出てくるでしょう。信頼できるサービスはどのサービスなのか、担当者との相性はどうなのか。後悔しないためにも実際にいくつかのサービスを試してみて、ご自身に合うサービスを見つけていくことをおすすめします。
まとめ
ご両親と相続について話し合いを始める一連の流れをご紹介しました。
まずは、ご両親の財産の状況や希望について話し合うことからすべては始まります。ご出産やご退職などと異なり、人がいつ亡くなるかはわからないもの。いざ相続が発生した際に「こんなに税金がかかるなんて」とならないためにも、財産の状況を把握しておくことをおすすめします。
「親も元気だし、まだいいか。」と先延ばしせずに、思い立ったその日から行動に移してみてはいかがでしょうか。
当コラムが親御様とのお話し合いの一助になりましたら幸いです。
執筆:泉山 馨
監修:さいたま幸せ相続相談センター 山中 学