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子2人家1つ、どうやって分ける?

「相続人は2人の子、引き継ぐ財産は自宅1つ」

相続の形は人それぞれです。自分に万が一のことがあったとき、自分の財産は2人の子供が相続するが、肝心の相続財産は自宅のみというパターンも考えられます。

今回は、具体的な事例を交えながら「子2人、家1つ」の相続で起こりうるトラブルやその解決方法についてご紹介いたします。

 

【具体例】

もうすぐ85歳を迎えるAさんには、2人の子(長男と次男)がいます。どちらも結婚して家庭を持っており、次男は遠方に住んでいますが、長男家族はAさん名義の自宅にAさんと一緒に住んでいます。

以前まではAさんの妻も一緒に暮らしていたのですが、2年前に亡くなってしまい、現在はAさんと長男、長男の妻、2人の孫の5人で暮らしている状況です。

次男は遠方に住んでいるため、なかなか会うことができませんが、家族全員で集まった時は仲良く話をするような仲です。

 

年齢とともに体力がなくなってきたAさんは、1人ではできないことも増えてきたため、長男と長男の妻に介護を頼むようになりました。初めは2人で介護を行っていたのですが、介護の必要な場面が増えてきたことから2人で全ての介護を行うことが難しくなり、週に何度か訪問介護やデイサービス等を利用するようになりました。

 

そんな中、Aさんが病気で倒れ、亡くなってしまいました。

長男と長男の妻、次男でAさんの遺品整理をしたところ、Aさんには遺言が残っておらず、主な財産も自宅のみであることが分かりました。

 

 

相続財産が自宅のみの場合に考えられるトラブル

今回の相談事例では、Aさんの財産を相続できる法定相続人は長男と次男の2人です。主な相続財産は自宅のみということですが、自宅は現金とは違って物理的に分けることができません。

このような場合、長男と次男で相続争いが発生する可能性が非常に高くなります。

では、相続財産が自宅のみの場合にはどのようなトラブルが考えられるでしょうか。

 

一番大きな課題となるのが「自宅を売るか売らないか」という意見の対立です。

Aさんが亡くなった後に住む人がいなければ、自宅を売ってそのお金を兄弟で分け合うことができるのですが、Aさんと同居していた相続人がいる場合には、簡単に売却をすることができません。

長男としては、「親と一緒に住んできた家に思い入れがあるし、家は売らずに今後も住み続けていきたい」と考えています。

しかし、次男としては「自宅を売って、少しでもお金が欲しい」と、自分の相続分を主張しています。もし、長男が自宅を相続すると、次男が相続できる財産がなくなり不公平な遺産分割となってしまいます。

このような場合には、「代償分割」という方法を活用した遺産分割を検討します。

代償分割とは、特定の相続人が財産をそのまま相続し、財産を相続した人以外の相続人に対して代償金を支払うというものです。

例えば、相続財産は自宅のみで、法定相続人が長男と次男の2人のケースを考えてみましょう。自宅の相続税評価額が2,000万円だとすると、長男と次男は1,000万円ずつ相続できるはずです。

しかし、長男が自宅をそのまま相続してしまうと、次男は相続分の1,000万円を受け取ることができません。そこで、自宅を相続した長男から次男に対して1,000万円の代償金を支払うことによって、公平な遺産分割が実現できるのです。

ただし、代償分割を利用するためには、長男に代償金を支払うだけの資力があることが要件となります。代償金の額については当事者間でよく話し合って決める必要があります。

 

なお、遺産分割には代償分割を含め4種類もの方法があります。

他の分割方法については、次の章でご紹介いたします。

 

また、自宅を売る選択をした場合にも、兄弟間で争いになる可能性が考えられます。

例えば、自宅が2,000万円で売却できた場合、譲渡所得税は考慮せず法定相続分通りに分けるとすると、長男と次男で1,000万円ずつ受け取ることができるのですが、ここで兄弟間の意見が対立します。

今回の事例では、長男はAさんと一緒に住みながらAさんの介護を行っていました。長男としては、「Aさんの介護を献身的に行ってきたのだから自分が多くもらうのは当然だ。」と主張するでしょう。また、長男の妻も出てきて「長男の意見に同感だ。」と口を出してくるかもしれません。

しかし、次男は「自分もAさんの子どもなのだから、半分ずつ分けるべきだ」と主張します。

これに関しては兄弟間で話し合って「いくらずつ相続するか」の妥協点を見つけなければなりません。争いが収まらなければ、遺産分割調停や審判を行い、裁判所を介して遺産分割をすることになります。

 

いくら仲の良い兄弟であっても、お金が絡むと争いに発展してしまうケースは珍しくありません。相続が発生する前に、自宅の相続について話し合い、争族対策をとっておくことが大切ですね。

自宅の相続について話し合いを行う際には、どのような分割方法があるのかを知っておくことも大切です。

次の章では不動産の分割方法についてご説明いたします。

 

 

不動産を分割して相続する4つの方法

家や土地などの不動産は物理的に分けられませんので、主な財産が不動産のみの場合には、遺産分割で不公平が生じてしまいます。

遺言で相続人が指定されている場合や、相続人全員が遺産分割に納得している場合は別ですが、そうでない場合は相続人同士で話し合って、不動産をどのように相続するかを決めることになります。

不動産の分割には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有」の4つの方法があります。

 

①現物分割とは

現物分割とは、財産をそのままの形で分ける方法です。

例えば、相続財産が家と土地の場合に、長男が土地を、次男が家をそのまま相続するのが現物分割です。

現物分割は最も多く利用されている方法ですが、財産が複数ある場合にのみ有効ですので、相続財産が自宅のみの場合には利用の難しい方法です。

 

また、自宅以外に財産がある場合でも、例えば相続税評価額1,000万円の土地と現金200万円の現物分割では、不公平な遺産分割になってしまいます。

現物分割は財産の種類と価額を考慮して利用しなければなりません。

 

②代償分割とは

先ほどもご説明したとおり、代償分割とは特定の相続人が財産をそのまま相続し、現物を取得した相続人が他の相続人に対して代償金を支払うことによって公平な遺産分割にする方法です。

 

例えば、相続財産が2,000万円の自宅のみの場合、長男と次男が法定相続分で相続したとすると、1,000万円ずつ受け取ることができます。

しかし、長男が自宅を相続してしまうと、次男はもらえるはずだった1,000万円が貰えなくなってしまいますので、その代わり長男が次男に対して1,000万円の代償金を支払います。

 

この方法は、「思い入れのある自宅を売らずに残しておきたい」「この後も自宅に住み続けたい」という場合に利用されることの多い方法です。

ただし、代償分割を利用するためには、財産を相続した人に代償金を支払うだけの資力があることが前提となります。資力がない場合は代償分割を利用することが難しくなってしまいますのでご注意ください。

 

③換価分割とは

換価分割とは、相続財産を売却して得たお金を相続人同士で分割する方法です。お金という分割しやすい財産に変えることで、法定相続人が何人いても公平に分割できるメリットがあります。

しかし、人気のないエリアの不動産を換価するは、売却代金が予想以上に低かったり、いつまでも売却できなかったりするケースもありますので、売却の際は慎重に検討を重ねる必要があります。

 

また、不動産の売却では「安くてもいいから早く売りたい」と「時間がかかってもいいから高く売りたい」という意見が対立しやすいです。あらかじめ相続人同士で話し合い、解決が難しい場合は相続に詳しい専門家に相談することをお勧めいたします。

 

④共有とは

共有とは、1つの財産を複数の相続人で所有し合うことです。これは分割というよりも、分けずに全員で持ち合っている状態です。

「遺産分割の話し合いがまとまらないから、とりあえず共有にする」という方もいらっしゃると思いますが、共有名義の不動産には様々なデメリットがあるのです。

 

例えば、自宅を長男と次男で共有し、持分をそれぞれ1/2ずつにしたとします。

共有では、不動産に必要な修理や補修などの保存行為は個人の意思で行うことができるのですが、当該不動産を他人に貸し出す等の管理行為は、持分価格の過半数の同意がなければ行うことができません。

また、共有不動産を売却したり大規模な修繕を行う変更行為には、共有者全員の同意が必要になります。

そのため、今回の事例では管理行為と変更行為には長男と次男の意見が一致している必要があるのです。

 

さらに厄介なのが、共有者に相続が発生した場合です。例えば、共有者である長男が亡くなった時、共有持分は長男の妻や子が相続することになります。このように、共有者がどんどん増えていき、最終的には顔も合わせたことのない人たちが1つの不動産を共有している状態になりかねません。

このような状態では、管理行為や変更行為のために同意を求めることが難しくなり、不動産を売却できなくなってしまうのです。

 

不動産の共有は相続手続きが済んだ後でも争いのもととなる可能性が高いですので、利用する際は慎重にご検討ください。

 

 

自宅の相続で争いにならないために

この記事では、相続財産が自宅のみの場合にどのようなトラブルが発生しやすいかについてご説明いたしました。

普段は仲の良い兄弟でも相続で争いになってしまうと、悪化した関係はなかなか元には戻りません。ですから、争いが発生する前に対策をとっておく必要があるのです。

ここでは、自宅の相続で争いを防ぐための具体的な方法をご紹介いたします。

 

遺言を書いておく

相続財産が自宅のみの場合に限らず、相続人同士で遺産分割について話し合うことが争いにつながる可能性が非常に高いです。遺産分割の話し合いで争いになると、なかなか遺産分割が決まらず財産の名義変更や移転などの手続きが遅くなってしまいます。

 

このようなことを防ぐためには、親が遺言を作成し、誰に何を相続させたいかを書き残しておくことが大切です。

今回の事例では、Aさんが長男に自宅を相続させる旨の遺言を残しておけば、次男も「親の意見なら仕方がない」と遺言の内容に納得してくれる可能性があります。

 

また、長男が自宅を相続する旨の遺言が残っていたとしても、次男は遺留分を請求することができます。

遺留分とは、遺言に関係なく、特定の法定相続人に保障された最低限の相続分です。遺留分は原則として、法定相続分の1/2とされていますので、今回の事例で次男が請求できる遺留分は、1/2(法定相続分)×1/2(遺留分)で1/4となります。

自宅の相続税評価額が2,000万円だとすると、2,000万円×1/4=500万円です。

 

結果として、長男はできるだけ少ない出費で自宅を相続することができ、次男は少しでもお金を受け取ることができます。

また、遺言を残しておくことで、名義変更の手続きをスムーズに行うことができます。残された家族が円満に相続手続きを終えられるように、元気なうちから遺言を書いておきましょう。

 

家族信託を活用する

遺言ではなく、家族信託を利用することによっても財産を渡したい相手へ引き継がせることができます。

家族信託とは、元気なうちに財産を信頼できる家族へ預け、管理してもらう制度です。財産を預ける人を「委託者」、財産を預かる人を「受託者」、信託した財産から発生した利益を受ける人のことを「受益者」といいます。

例えば、Aさんが元気なうちに長男に自宅を預け、受益者をAさんとしておけば、Aさんは自宅を長男に管理してもらいながら、亡くなるまで自宅に住み続けることができます。

また、Aさんが亡くなった時点で信託を終了し、信託財産である自宅を長男のものとする契約を結んでおけば、スムーズに自宅を承継することができるのです。

 

まとめ

「相続トラブルはお金持ちの家にしか関係がない」と思われがちですが、実は財産の少ない家庭の方が分け方が限られるため、トラブルになる可能性が高いです。

特に、自宅などの分けにくい財産がある場合は、売るか売らないかで意見が対立することがありますので、まずは不動産の分割方法について理解し、各相続人の事情を考慮しながら話し合いを進めていく必要があります。

また、自分が亡くなる前に遺言や家族信託を活用して、残される家族の争いを未然に防ぐことも大切です。遺言や家族信託を行う際は、相続に詳しい専門家に相談しましょう。

 

執筆:山形 麗  

監修:司法書士事務所T-リンクス 司法書士小川 直孝

 

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