さて皆様方は、日本全体で1年間に一体どの程度の相続財産が税務署に申告されているかご存じでしょうか?

 

国税庁の資料によると、平成30年度における相続財産取得額(申告ベース:債務控除後)は、約17兆9000億円となっており、その内訳では土地が約6兆8000億円(38%)、現預金が約6兆2000億円(35%)、有価証券が約3兆円(17%)を占めています。この3種類の財産だけで全体の90%程度になりますね。

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/sozoku2018/pdf/05_kazeijokyo.pdf

 

ところで同庁の資料では「有価証券」は以下の4種類に分類されています。

A :特定同族会社の株式及び出資(6900億円)

B :A以外の株式及び出資(1兆3400億円)

C :公債及び社債(2300億円)

D :投資・貸付信託受益証券(7400億円)

 

このうち上場株式(投資信託含む)に関連する財産としてはBとDの大部分が該当しそうですが、残念ながらこの資料だけでは上場株式に限定した正確な相続財産額は不明です。ただいずれにしても上場株式は、土地や現預金に次いで、相続財産の中でも非常に大きな額を占めているのは間違いありません。

 

また最近では、国の政策として推し進められた「株式の長期投資(NISA)」や「積み立て投資(つみたてNISA)」が徐々に浸透してきているうえに、スマートフォンの普及によって単元未満株の取引等が、盛んに行われるようになってきています。これらの事を鑑みると、これからは相続財産の中に上場株式が含まれているケースが相当増えてくると思われます。

 

しかし・・・残念ながら上場株式の相続手続きはとっても複雑で、私の経験上、すべての相続財産の中で、最後まで「相続人名義に変更できていない財産」として残っていることが非常に多いのです。これはなぜなのでしょうか?

 

その最大の理由として思い当たるのは、証券会社が相続手続きに関して、かなりの数の書類作成と提出を求めてくることにあります(口座開設書類には専門用語も沢山並んでいます)。また証券会社側からしてみても、相続手続きは複雑かつ、直接的な利益が上がりにくい事務作業であり、社員数も減少傾向であることから、人手を回しにくく、丁寧な応対が難しいのでしょう。もちろん相続人自身が株式取引を経験したことがないことも多いため、証券の知識が不足しているケースも見逃せません(せっかく相続人が証券会社に作成書類を提出しでも、「不備」で返送されるケースがとても多いようです)。

 

当コラムでは相続財産に上場株式が含まれていた場合の相続について、少しでもお役に立てるよう、これから様々な情報をご提供していければと考えています。

 

※監修 廣田証券 https://www.hirota-sec.co.jp