「親が亡くなり実家を相続したが誰も住む予定がない」

「埼玉の実家が空き家になってしまい、固定資産税だけ払い続けている」

相続によって空き家を取得するケースは全国的に増加しており、相続後にどのように管理していくか悩まれている方は少なくありません。国土交通省の調査(※)では空き家取得理由の約55%が「相続」によるものとされています。

そこで、本記事では、埼玉で相続した空き家を抱える方に向けて放置した場合のリスクや節税につながる法的制度まで、専門家の視点から丁寧に解説します。

参考:国土交通省住宅局 令和6年4月 空き家対策の現状について


埼玉県内における空き家問題

埼玉県内の空き家は、総務省が令和5年に公表した住宅・土地統計調査によると約33万戸、空き家率は約9.3%とされています。空き家数・空き家率はともに減少しており、全国平均(約13.8%)と比較すれば低水準です。しかし、人口規模が大きい埼玉県では、絶対数として非常に多くの空き家が存在することになります。

県内では熊谷・秩父などの郊外エリアでは、高齢化と人口流出が重なり、空き家が目立ちやすくなっています。一方、さいたま市・川口市などの都市部でも、相続を機に誰も住まなくなり「負動産化」するケースはあります。

参考:埼玉県 令和5年住宅・土地統計調査結果(埼玉県分)について-空き家数・空き家率は減少、空き家率は全国一低い9.3%-


「相続」が空き家につながる理由とは

冒頭に触れたように空き家の取得経緯として最も多いのが「相続」です。相続で取得した家が空き家になってしまう理由には、主に以下の理由が挙げられます。


① 居住ニーズがない

相続人がすでに自分の家を持っていたり、別の地域に住んでいたりする場合、取得した家に住む必要がありません。特に都市部に住む子どもが地方の実家を相続するケースでは、移住や転居が現実的でないため、そのまま放置されがちです。


② 活用・処分の判断が難しい

「親が長年住んでいた家を売るのは忍びない」という心理的な抵抗感から、売却や賃貸への転用に踏み切れないケースが少なくありません。また、相続人が複数いる場合は全員の合意が必要となり、意見がまとまらないまま月日が経過することもあります。


③ 判断を先送りにしてしまう

解体・リフォームといった手続きには、時間・手間・費用がかかります。特に老朽化した家屋の解体費用は高額になることも多く、「費用をかけてまで動かなくていい」と先送りにされる傾向があります。


④ 賃貸・売却市場での需要不足

地方や郊外の物件は、需要そのものが少ないため買い手・借り手が見つかりにくく、活用しようとしても思うように進まないことがあります。築年数が古い場合はさらにハードルが上がってしまいます。


空き家を放置するとどうなる?

空き家の増加は相続登記の義務化にもつながっており、国や各自治体も積極的に空き家問題を解消しようと力を入れています。空き家は放置してしまうと様々な問題に発展しやすいため、早急に解消することがおすすめです。そこで、本章では空き家を放置した際に起きてしまうリスクをわかりやすく解説します。


固定資産税が上がるおそれがある

現行の法制度では、住宅が建っている土地に対して「住宅用地の特例」により、固定資産税が最大で6分の1に軽減されています。しかし、空き家が市区町村から「特定空家等」や「管理不全空き家」に指定されると、この軽減措置が適用除外となり、固定資産税が一気に最大6倍まで跳ね上がる可能性があります。


空き家の固定資産税について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご参照ください。


近隣トラブルにつながる

人が住んでいない状態の建物は劣化しやすく、雨漏りや害虫・害獣の繁殖、草木の増加などのトラブルが起きやすくなります。定期的なお手入れを行うことでこうした問題は減らすことが可能ですが、近隣住民にも悪影響を与えてしまい近隣トラブルにつながるリスクもあります。


相続した空き家を賢く解決する方法とは

では、空き家を相続してしまった場合、どのような選択肢があるのでしょうか。本章では空き家問題を賢く解決する方法を解説します。


早めに売却する

空き家であっても固定資産税は発生し、納税負担が続くため早めに売却することが大切です。税金・維持費の負担もゼロになります。ただし、売却には仲介手数料などのコストが発生します。

また、立地や築年数によっては買い手が見つかりにくいケースもあります。埼玉の郊外エリアでは特に、市場性を事前に確認することが大切です。なお、後述する「空き家の3,000万円特別控除」を活用することで、売却益にかかる税負担を大幅に軽減できる場合があります。


賃貸として活用する

空き家は賃貸物件として活用することも選択肢のひとつです。収益を得ながら不動産を保有し続けられるメリットがあります。ただし、入居者募集・管理・修繕のコストと手間がかかるほか、空室リスクも考慮する必要があります。シェアハウスや民泊(条件あり)として活用するケースも増えていますが、法令の確認が必要です。


解体して土地として活用・売却する

建物が老朽化していて活用が難しい場合は、解体して更地にしてから売却または活用する方法があります。更地にすることで買い手が見つかりやすくなることもありますが、解体費用がかかり、前述のとおり住宅用地の特例が外れて固定資産税が増加する点に注意が必要です。


相続放棄・相続土地国庫帰属制度を検討する

相続財産に価値がほとんどなく、負担だけが大きい場合は、相続放棄を検討する方法もあります。ただし、相続放棄は原則として相続開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があり、すでに一部の財産を処分した場合など(単純承認)は認められないことがあります。

さらに、2023年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」では、一定の要件を満たした場合に相続した土地を国に帰属させることができるようになりました。建物がある土地は原則対象外ですが、要件の確認や活用可否について専門家に相談することをおすすめします。

 

知らないと損する「空き家の3,000万円特別控除」

相続した空き家を売却する際に非常に有利な税制特例が、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」、通称「空き家の3,000万円特別控除」です。

この特例を適用すると、空き家の売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できます。売却益が3,000万円以下であれば、譲渡所得税がゼロになる可能性があります。

令和6年(2024年)1月1日以降の売却からは、売主が売却前に耐震改修または取り壊す必要がなく、「買主が翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行うこと」を条件として売買契約に盛り込む形でも特例が適用されるようになりました。これにより、現実的に活用しやすくなっています。

ただし、相続人が3人以上の場合は、1人あたりの控除額の上限が2,000万円に制限される点にも注意が必要です。

詳しい適用要件については以下をご確認ください。

参考:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁


埼玉県の空き家支援制度も活用しよう

埼玉県および各市町村では、空き家に関するさまざまな支援制度を整備しています。代表的なものを以下に紹介します。


空き家コーディネーター制度(埼玉県宅地建物取引業協会)

埼玉県宅地建物取引業協会では、空き家に関する総合的な相談を受け付ける「空き家コーディネーター」制度を運営しています。売却・賃貸・解体・利活用など、方向性の整理から専門業者の紹介まで対応しています。

参考:公益社団法人 埼玉県宅地建物取引業協会 「空き家コーディネーター」にご相談ください!


各市町村の補助金制度

さいたま市、深谷市や越谷市など多くの県内の市町村では、空き家に対する様々な管理支援、リフォームや解体に対する補助金制度を設けています。補助率・上限額は自治体ごとに異なりますが、解体費用の一部補助を実施している自治体もあります。相続した空き家の所在地の市町村に確認しましょう。以下一例をご紹介します。

・さいたま市 シルバー人材センターによる空き家管理業務(その他にも空き家向けの支援あり、市のHPよりご確認ください。)

・越谷市「越谷市空き家の改修・除却費用補助金」

・深谷市「空き家に関する補助制度」


まとめ

相続した空き家は、放置すればするほど税負担や近隣トラブルのリスクが高まります。売却・賃貸・解体・国庫帰属など選択肢はさまざまですが、それぞれにメリット・デメリットがあり、どれが最善かはご状況によって異なります。

「何から手をつければいいかわからない」「売却すべきか、活用すべきか迷っている」そんな方は、ぜひさいたま幸せ相続相談センターへご相談ください。相続に精通した専門家が、税務・法務・不動産のトータルな視点からお客様に合った解決策をご提案いたします。



執筆:岩田いく実
監修:司法書士NK法務事務所 中嶋英憲 司法書士