成年後見制度が改正に向けて動いています。
2026年1月27日、法制審議会の部会において、成年後見制度の見直しに関する要綱案が示されました。

成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した方を支える重要な制度ですが、「一度始めると原則やめられない」「費用負担が大きい」といった理由から「利用しづらい」という声が多く上がっていました。

今回の改正は、こうした課題を踏まえ、制度をより柔軟で利用しやすいものにする方向性が示された点で注目されています。

そこでこのコラムでは、成年後見制度の改正内容のポイントや注意すべき点について、わかりやすく解説していきます。


成年後見制度が見直される理由

成年後見制度は2000年にスタートし、認知症の方が増加する高齢社会の中で重要性が高まってきました。

しかし、成年後見制度は原則一度始めたらやめられない終身制や、弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任された場合、月々の報酬が発生し続けることへの不安が成年後見制度の普及を妨げてきました。

さらに、本人の判断能力に応じて「後見・保佐・補助」に分類される仕組みが、現場では分かりにくく、柔軟に対応できないという指摘もありました。

そのため国は、成年後見制度を「使いづらい制度」から「必要な場面で必要なだけ利用できる制度」へと転換させる方向で、見直しの検討を進めています。


成年後見制度とは?仕組みをわかりやすく整理

成年後見制度の改正についてお話しする前に、まず現行制度の基本について、ご紹介しようと思います。

成年後見制度は障害のある方や、認知症の方の財産管理と身上保護をする制度です。

成年後見制度は次の表のとおり「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つに分かれます。

成年後見制度内容
法定後見制度本人の判断能力が不十分になった後に、本人の判断能力に応じて家庭裁判所により選任された ①成年後見人、②保佐人又は③補助人が本人を保護、支援する制度
任意後見制度本人が十分な判断能力を有する時に、任意後見人や委任する事務を契約で定めておき、本人の 判断能力が不十分になった後に、任意後見人が任意後見監督人の監督を受けつつ事務を行う制度

参照:厚生労働省 成年後見制度の見直し等について

成年後見制度について、詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご一読ください。


成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」に分かれますが、今回の改正の中心は「法定後見制度」です。

そのため、法定後見制度について、詳しくご説明していこうと思います。

成年後見制度の法定後見制度とは

法定後見制度は、認知症、精神障害または知的障害により、判断能力が衰えている方を、家庭裁判所から選任された成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)がサポートする制度です。

また法定後見制度は、本人の判断能力が衰えてしまった後に申立てをします。そのため、サポートされる本人が成年後見人等を指定することはできません。

例えば、介護施設の入所契約、預貯金の解約、不動産売却などは本人の意思確認が必要になるため、判断能力が不十分な場合は手続きが止まってしまいます。こうした場面で、成年後見人が本人を代理し、法律行為を行うことで生活を守る仕組みになっています。


後見・保佐・補助の3類型とは

現行の法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれています。

法定後見制度の分類対象
後見判断能力がほとんどない状態。後見人が包括的に代理する
保佐判断能力が著しく不十分な状態。重要な行為に同意が必要
補助判断能力が不十分な状態。特定の行為について支援を受ける

制度上は分かれているものの、実際の判断能力は日々変動することも多く、「どの類型が適切なのか判断が難しい」という課題がありました。

また、相続や不動産売却など一時的な支援だけ必要なケースでも、包括的な支援になりやすい点が課題とされてきました。


成年後見制度でできること(財産管理・身上監護)

成年後見制度で支援できる範囲は大きく2つに分かれます。

1つ目は財産管理です。預貯金の管理、不動産の管理・売却、遺産分割協議への参加などが含まれます。
2つ目は身上監護です。介護サービス契約、施設入所契約、医療契約など、本人の生活を守るための支援が対象となります。

ただし成年後見制度は「本人の生活を守る制度」であるため、家族が自由に財産を動かせる制度ではありません。


【2026年改正案のポイント】成年後見制度は何が変わる?

今回の要綱案では、成年後見制度について大きく4つの見直しが検討されています。

全体像は次の画像のとおりです。


ポイント① 終身制を見直して終了可能な仕組みへ

最大の注目点は「途中終了が可能となる仕組み」が検討されている点です。現行制度では、後見人等が選任されると本人が亡くなるまで続くケースが多く、途中で終了することが難しいとされてきました。

改正後は、家庭裁判所が「支援の必要性がなくなった」と判断した場合に、制度を終了できる仕組みが整備される可能性があります。もし実現すれば、相続や不動産売却など「目的が終われば終了したい」ケースでの利用がしやすくなるでしょう。


ポイント② 後見・保佐を廃止し補助に一本化へ

現行制度では「後見・保佐・補助」の3類型ありますが、権限の大きい後見と保佐を廃止し、補助に一本化する方向で検討されています。

補助はもともと、支援内容を個別に設定できる柔軟な類型です。

これを制度の基本形にすることで、本人の判断能力の程度だけで機械的に区分するのではなく、生活実態に合った支援が可能になります。


ポイント③ 代理権はオーダーメイド型に(支援範囲の限定)

改正案では、補助人に付与する権限を「個別の必要な行為に限定する」方向性も示されています。

例えば、

・遺産分割協議だけ代理してほしい

・不動産売却の契約だけ代理してほしい

・預金の解約だけ支援してほしい

といったケースに対し、必要な範囲で代理権を設定できる制度へと変わっていく見込みです。

従来のように「成年後見=全部任せる」という制度ではなく、本人の状況に応じて必要な支援内容を選び、必要な期間だけ利用できる「オーダーメイド方式」を導入する方針です。


ポイント④ 本人の意思・自己決定権の尊重

成年後見制度は本人保護を目的としますが、保護が強すぎると本人の自由が失われてしまいます。改正では、本人の意思を尊重し、自己決定権を最大限残す仕組みがより重視されると考えられます。

「本人の尊厳を守りながら支援する制度」に近づくことで、成年後見制度を利用するハードルが下がる可能性があります。


「途中終了できる成年後見」は相続の現場で何が変わる?

途中終了の仕組みが導入されれば、相続の現場で特に次のような影響が出ると考えられます。


遺産分割協議のために後見が必要になるケース

相続では、遺産分割協議書を作成するために相続人全員の合意が必要です。相続人の中に認知症の方がいると、その方は協議に参加できず、遺産分割が成立しません。

この場合、成年後見制度を利用し、後見人が本人の代理人として協議に参加する必要があります。ところが現行制度では、遺産分割が終わっても後見が継続し、報酬負担が長期化する可能性があります。

途中終了が可能となれば、遺産分割が終わった時点で終了できる選択肢が生まれ、制度を利用するハードルが下がり、利用する方が増えると考えられます。


不動産売却のために後見が必要になるケース

親が認知症になり施設費用を捻出するために自宅を売却したい場合、本人が売買契約を結べないため成年後見制度が必要になることがあります。

しかし現行制度では、売却が終わっても後見が続く可能性があり、「売却後もずっと後見人が関与するのか」という不安がありました。途中終了が可能となれば、売却という目的が終わった段階で終了できる可能性が出てきます。


終了できないことで起きていた費用・負担の問題

成年後見制度が「使いづらい」と言われる最大の理由は、制度が終わらず負担が続く点です。弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任されると、報酬が毎月発生する場合があり、10年単位で続くと大きな負担になります。

また、家庭裁判所への報告が必要である点や財産管理のルールも厳格であるため、家族が自由に動けないストレスも生じます。途中終了が可能となれば、こうした負担が軽減されることが期待されます。


途中終了(スポット後見)で注意すべき「取引の安全性」

成年後見制度がスポット型になっていく場合、今後課題になり得るのが「取引の安全性」です。

成年後見制度では、本人保護のために取消権が認められる場面があります。

そのため、契約が後から取り消される可能性がある場合、不動産取引や金融取引では慎重な判断が必要になります。

特に不動産売買は、買主・仲介業者・金融機関など第三者も関わるため、制度設計次第では取引が難しくなる可能性もあります。

改正によって制度が柔軟化する一方で、「本人保護」と「取引の安定」のバランスをどう取るかが、今後の注目点となるでしょう。


成年後見制度改正はいつから?施行時期と今後のスケジュール

今回の改正案の内容は、あくまで要綱案段階であり、今後は法案化され国会で審議される流れとなります。

報道では、2027年〜2028年頃の施行が見込まれる可能性も示されていますが、成立時期によって変動する可能性があります。

そのため「今すぐ制度が変わる」と誤解せず、今後の動きを継続的に確認することをおすすめします。


よくある質問(FAQ)

成年後見制度改正はいつから?

現時点では要綱案段階であり、法案成立後に施行されます。具体的な施行時期は今後の国会審議によって変動します。

成年後見制度は途中でやめられるようになる?

改正案では途中終了できる仕組みが検討されています。ただし自由に終了できるのではなく、家庭裁判所が必要性を判断する形になる可能性があります。

すでに後見を利用している人も対象?

改正法の経過措置がどうなるか、現時点では確定していないため、今後の情報を確認する必要があります。


まとめ

成年後見制度は、認知症社会において欠かせない制度である一方、終身制や費用負担の問題から利用しづらいという課題がありました。

今回の要綱案では、途中終了の導入、補助への一本化、支援範囲の限定化など、制度を柔軟化する方向性が示されています。

ただし、制度改正が実現するまでには時間がかかる可能性があります。だからこそ、相続や認知症対策は「いつか」ではなく「今」考えておくことをおすすめしています。

一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターでは、成年後見制度サポートをしています。

成年後見制度についてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。


執筆:成田春奈
監修:司法書士NK法務事務所 中嶋英憲 司法書士