皆さんこんにちは。

相続コンサルタントの久保田です。

良くも悪くも『争続』という言葉が浸透し、相続をきっかけにして家族や親族が揉めてしまうことがドラマや小説の中の話ではなく、身近に起こり得るものだと感じている方も増えてきているかもしれません。

私たちは団体名の通りできる限りしあわせな相続となるよう日々尽力していますが、一度揉めてしまうとしあわせな相続とは程遠い結果になってしまうことのほうが多いと思います。

そこで、今回は『争続』を予防する意味を込めて、実際に相続で揉めてしまうケースや予防方法をまとめていきたいと思います。


相続で揉めてしまうと・・・

相続で揉めてしまうケースは多種多様ですが、他の相続人等と揉めてしまった場合は、ご自身で対応するか弁護士に代理人として対応してもらうかのいずれかとなります。

相続についてはそれぞれ相続人の想いや考え方がありますので、お話し合いが平行線になってしまうことも多く、数十年に渡って解決できていないお話を伺うこともありますし、大切なご家族を亡くされた悲しみの中で、ご家族やご親族と相続の争いになると精神的にもご負担が大きく、当事者全員にとって辛い時間を過ごすことになると思います。

そこで代理人として弁護士へ依頼する方も多いのですが、大前提として弁護士に依頼したからといって必ずしも解決できるわけではないことと、ご自身の要望をすべて叶えられるわけではないことを覚えていただきたいと考えています。

それでも争続になってしまった際に弁護士へのご依頼をお勧めしている理由としては、相手方と直接やり取りをせずに済む精神的なご負担の軽減と、法律に沿った着地点を見つけやすくなることがあります。

争続では様々な要素が複雑に絡み合っていますが、感情面に解決を難しくしている原因があることが多く、ご家族・ご親族だからこそ感情的になってしまうのだと思います。

兄弟は自宅を購入したときに援助してもらっていた、兄弟の家族は旅行や食事に連れて行ってもらっているのに自分の家族は連れて行ってもらったことがない、兄弟は私立の学校だったのに自分は公立しか行かせてもらえなかった…小さな頃から知っているご家族だからこそ、これまでの不公平感を清算するタイミングとしては遺産分割協議が丁度よいことも理解できますし、私も相続人の立場になったら同じように考えてしまうかもしれません。

お互いに弁護士に依頼することで、直接感情をぶつけ合うことが無くなり、法律に沿った弁護士の見解を交えることで、全てとはいかなくとも満足できる着地点が見つかるかと思います。

もちろん、弁護士であれば誰でも良いというわけではなく、法律だけでなく依頼者の気持ちに寄り添っていただける弁護士にご依頼することも重要なポイントです。

遺産分割協議で揉めるケース

ここからはいくつかのパターンに分けて争続になってしまうケースを考えてみます。

争続の中で一番揉める可能性が高いのが、遺産分割協議で揉めるケースだと思います。

遺産分割協議は相続人全員で誰が何を相続するかを決める話し合いです。

相続人それぞれの感情がぶつかり合うことや、相続に対しての考え方(今も家督相続に近い考えの方もいらっしゃいます。)の違いによって遺産分割内容がまとまらないことがあります。

また、不動産のように分割が難しい財産が含まれて、他の財産でバランスが取れない場合は、各相続人が相続する財産の割合に不公平感が出てしまい、双方が納得する遺産分割方針が見いだせないこともあります。

不動産の分割の場合は、「共有」「換価分割」「代償分割」が遺産分割方法として考えられるものの、それぞれ一長一短がありますので、どの遺産分割方法が適切かはご状況を詳しく分析する必要があります。

加えて、過去に受けた贈与も遺産分割協議で揉めやすいポイントになります。

他の兄弟が贈与や援助等を受けていたのに自身は何ももらっていないとなると、遺産分割協議でこれまでの清算をしたいという気持ちが出てくるのも自然だと思います。

このような過去の贈与や援助を特別受益といい、遺産分割協議においては何年前の特別受益でも考慮できてしまうため、遺産分割協議を難しくさせてしまう要因になっています。

(ただし、家庭裁判所での調停や審判、後述する遺留分侵害額請求では、相続開始から10年が経過すると特別受益を主張できなくなります。)

また、遠い過去の特別受益は証拠が残されていないことも多く、ここでも感情面で折り合いがつけられるかが分かれ道になると思います。


遺言書で揉めるケース

被相続人が遺言書を作成している状況では、基本的に遺言書に則った遺産分割が行われることになります。

上記の遺産分割協議とは異なり、誰が何を相続するかが遺言書によって決められているので、分け方で揉めることはないのですが、各相続人が相続する財産のバランスが悪いと、遺留分で揉めてしまうことがあります。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分で、原則として法定相続分の1/2(直系尊属のみの場合は1/3)だった場合に差額を請求できる権利で、財産評価額の考え方の違いによって揉めてしまいます。

遺留分を請求する側としては、財産評価が高いほうが請求できる金額が増えますし、請求される側としては財産評価が低いほうが支払う金額を抑えられることになります。

相続財産の中で評価が分かれやすい財産としては不動産が挙げられます。

不動産は一物四価とも一物五価ともいわれ、一般的には評価額が低い順に、固定資産税評価額、相続税路線価、基準地価、公示地価、実勢価格と、それぞれの目的によって評価額が異なります。

不動産を売却することが決まっていれば実勢価格での評価で折り合いが付きやすいように感じますが、例えば遺留分侵害額請求を受ける側がその不動産に住んでいる場合は、すぐに売却することもできず、遺留分の支払原資をどのように捻出するかを考慮しながら、できる限り不動産の評価を低くする交渉をすることになると思います。

また、遺留分侵害額請求でも、遺産分割協議でも触れた特別受益を考慮することになりますが、何年前の特別受益でも考慮できてしまう遺産分割協議とは違い、令和元年の民法改正により、遺留分侵害額請求での特別受益では相続発生の10年前までと定められました。

法律で定められたからといっても、特別受益と遺言書による遺産分割によって、受け取れる財産額に大きな乖離が出てしまうと、相続手続きは完了できても仲違いしてしまう可能性は高いので、安易に遺言書の内容を決めず、ご家族関係までを考慮して遺言書を作成していただきたいと思います。

遺言書についてくわしく知りたい方は、こちらのコラムをご一読ください。


財産管理で揉めるケース

遺産分割協議や遺留分で揉めるケースの中に含まれますが、争続の中でよく出てくる争点です。

被相続人の財産を生前から一人の相続人が管理していると、他の相続人が相続財産の全体像を掴めず、もっと財産があるのではないか?といった疑念を持ってしまうことがあります。

そのような気持ちもわかるのですが、しっかりと財産管理を行ってきた側からすると、今まで何もしてこなかったのに急に相続の権利を主張してきたようにも見えてしまい、お互いの不満が出るきっかけになりやすいポイントでもあると思います。

財産管理を争続の火種にしないためには、お手間はかかりますが領収書やレシートをすべて保管して、いつ何に使った金額かを説明できるように管理していただくことをお勧めします。

また、財産管理の窓口としては一人で対応しながら、定期的に収支を共有して財産の推移を明確にしておくことも有効だと考えています。

ご両親とはいえ、自分以外の人の財産を管理することはご負担が大きいと思いますので、収支を共有しながらご家族に財産管理の方針を相談することで、争続を予防するどころか、相続をきっかけにして良い関係性を築くことにも繋がると思います。


争続を予防するためには

争続になるパターンとして、大きく遺産分割協議で揉めてしまうケースと遺言書によって揉めてしまうケースを説明しましたが、相続開始から解決までにかかる期間で考えると、まだ遺言書があるほうが争点を整理しやすく、解決までの期間は少なくできると思います。

それでも、遺言書で定められた相続分に大きな乖離があれば、財産が少ない相続人は納得しにくいと思いますし、実際に遺留分侵害額請求をすることで争う姿勢を示すことになるので、争続が解決した後もそれまでの関係性が変わってしまうこともあると思います。

そのため、遺言書を作成する際には、特別受益や遺留分を基にして、評価には表せないご家族関係を考慮した内容で作成していただくことをお勧めします。

加えて、遺言書を作成するタイミングでご家族にご自身の財産状況を説明して、それぞれのご意向を確認してもいいと思います。

よくあるお話とまではいかないものの、相続人が全員不動産をいらないと考えて、押し付け合うことで揉めてしまうケースもあります。

事前に相続人の意向がわかっていれば、終活の一環として不要な財産を整理して争続の火種を解消しておくことができると思います。

さて、ここまで読んでいただいた方は感じていただいていると思いますが、争続になってしまった場合は相続人が当事者なのですが、争続の予防をできる方は相続人ではなく、亡くなってしまう被相続人なのです。

当センターでも将来の相続に不安を持ったお子様からご相談をいただき、状況に応じた予防策のご提案をするものの、ご両親様にご協力いただけずに争続に発展してしまうケースもあります。

ご健康状態によっては対策ができないこともありますが、少しでもお子様が不安に感じているようであれば、「うちは大丈夫」「うちの子ども達は話し合いで解決できる」とご判断してしまわず、争続を予防するためにできることを少しずつでもご対応いただけると嬉しく思います。

一般社団法人さいたま幸せ相続相談センターでは、遺産分割についてのご相談を受け付けております。

相続についてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。