皆さんこんにちは。
相続コンサルタントの久保田です。
12月19日(金)に令和8年度税制改正大綱が公表され、相続税・贈与税対策について大きな影響を与える内容が盛り込まれていました。
※参照:自民党 令和8年度税制改正大綱
事前の噂や、具体的な資料としても令和7年11月13日に公開された説明資料〔財産評価を巡る諸問題〕でも詳細な説明がありましたので、相続対策をお手伝いしている方には直接お伝えできていたのですが、今回は令和8年度税制改正大綱の中から、「相続税等の財産評価の適正化」の項目を詳しく見ていきたいと思います。
※参照:国税庁 財産評価を巡る諸問題

令和8年度税制改正大綱には何が書かれているか
今回見ていく内容は、令和8年度税制改正大綱86ページの「(4)相続税等の財産評価の適正化」に記載されています。
要点をまとめると、貸付用不動産(収益不動産)の市場価格と相続税評価額との乖離を是正するために、
①課税時期前5年以内に購入・交換・新築した貸付用不動産については、取得価額の80%で相続税評価を算出すること(5年以上所有している土地に新築した家屋を除く)
②不動産小口化商品については、取得時期にかかわらず時価(課税時期の通常の取引価格)で評価すること
の2点が書かれています。
いずれもこれまで相続税対策として幅広く利用されてきた方法が、令和9年1月1日以降の相続・贈与で利用しにくくなることがわかります。
大きく相続税対策を講じる際に不動産は評価減をしやすい資産でしたし、購入する不動産でバランスを取ることで分割対策にも不動産を利用していたので、今回の税制改正を発端に相続税・贈与税の税金対策だけでなく、相続対策全般に影響を与える税制改正になると思います。
貸付用不動産の相続税評価はどう変わるのか
次に、今回の税制改正が改正前のルールとどのような違いがあるかを見ていきます。
まず一棟マンション・アパートのような貸付用不動産の相続税評価は下表のような違いがあります。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 土地 | 相続税路線価または倍率評価 | 課税時期の取引価格の80% |
| 家屋 | 固定資産税評価額 |
場所や物件名は控えますが、埼玉県内にある具体的な物件を例に改正前・改正後で相続税評価額を計算すると、以下のようになります。
<物件概要>
- 売買価格:2億2,000万円
- 地積:266.00㎡
- 相続税路線価:270D
- 家屋固定資産税評価額:約3,450万円
<改正前>※取得後5年以上所有
- 土地相続税評価額 266.00(地積)×270,000円(相続税路線価)=約7,180万円
- 建物相続税評価額 約3,450万円(=固定資産税評価額)
- 合計 約7,180万円(土地)+約3,450万円(家屋)=約1億630万円(約52%評価減)
<改正後>
- 土地建物相続税評価額 2億2,000万円(時価)×80%=1億7,600万円(20%評価減)
このように、令和9年1月1日以降は、同じ物件でも所有期間が5年以内だと相続税評価額が約7,000万円増加してしまいます。
ちなみに、相続税対策で不動産を購入する方の多くは、金融機関からあえて借入をすることで、相続財産全体から借入額をマイナスして相続税評価額を減少(圧縮)していましたが、上記の不動産の売買代金を全額借入で購入した場合、借入による相続税圧縮効果は、-1億1,370万円(改正前)から-4,400万円(改正後)に減少します。
売買価格の20%は相続税評価が減少し、厳密にいうと、購入時の経費(仲介手数料、登記費用等)分も相続財産から減少するため、不動産を利用した相続税対策を完全な封じ込める改正ではありませんが、実際に計算結果を見てしまうと今回の税制改正は相続税対策が必要な方にとっては大きなインパクトがあるかと思います。
不動産小口化商品の相続税評価はどう変わるのか
不動産小口化商品は、一般的に規模の大きな不動産や都心部のような高価な不動産の権利を細分化して、1口100万円程度で購入できる金融商品で、これまで贈与を中心に利用されてきたと思います。
似たような金融商品にREITがありますが、REITは他の有価証券と同様に相続・贈与時点の時価評価だったのに対し、不動産小口化商品は上記の現物不動産と同様に相続税評価の圧縮効果が得られるため、現金で贈与するよりも小口化商品を贈与したほうが贈与税を削減しながら短期間で贈与できる資産として人気の金融商品でした。
今回の税制改正では、所有期間にかかわらず課税時点の時価評価になるとのことなので、REITと同様の評価になるといえると思います。
贈与税については、令和5年度税制改正でも法定相続人への暦年贈与した財産を相続税の計算に持ち戻す期間を3年から7年に延長されましたし、贈与を相続税対策に利用させにくくする意味で今回の税制改正は自然な流れなのかもしれません。
こちらのコラムでは、暦年贈与持ち戻しルールを7年に変更について詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
これからの相続対策で不動産は利用できないのか?
上記のように貸付用不動産は相続税評価額の圧縮効果が減少し、不動産小口化商品は贈与に利用しにくくなりますが、不動産が相続対策に利用できなくなるわけではないと考えています。
お子様やお孫様がご自身で居住するための自宅用不動産を購入・建築することも有効かと思われます。
令和8年度税制改正大綱では、あくまで貸付用不動産の評価しか定められていないため、自宅用不動産については上記の改正前の評価方法の通り路線価+固定資産税評価で相続税評価額を算出することになります。
ご自宅を持ってないお子様やお孫様のご自宅を購入することで、元々相続する不動産がなかった相続人への分割対策にもなりますので、購入前にしっかりとご家族で話し合って、みなさんが納得したうえで自宅用不動産を購入してください。
ただ、貸付用不動産の場合は賃料で借入の返済ができますが、自宅用不動産では賃料収入がないので、借入で自宅用不動産を購入する場合は、しっかりと返済計画を検討してから購入するようにしてください。
加えて、お孫様の自宅用不動産を購入する場合は、状況によってお孫様の相続税が2割加算の対象になることがあります。
せっかく対策のために自宅用不動産を購入したのに、2割加算によって「思ったよりも相続税が課税されてしまった…」とならないように、事前に税理士に相談していただくことをお勧めします。
貸付用不動産は今回評価方法が変更されることで従来よりも相続税対策効果が薄れてしまいますが、それでも売買価格を現預金で持っているよりも20%も評価を下げられるので、積極的に相続税対策を行いたい方にとっては引き続き有効な手段になると思います。
相続財産は不動産をはじめとして、現預金・有価証券・自動車・貴金属・美術品・骨董品…と多岐にわたりますが、不動産以外はいずれも基本的に相続時点の時価で相続税評価を算出することになります。
貸付用不動産は従来よりも相続税対策効果が薄れるものの、購入後5年以内でも20%評価減できると考えれば、他の相続財産と比較して相続税対策効果が得られる財産だといえます。
尚、法人の株価評価では、取得後3年以内の不動産を時価で評価するルールがあります。
相続税評価では明言されていませんが、安全策を取るのであれば取得後3年以内は時価評価、5年以内は時価評価×80%、5年以上は路線価+固定資産税評価と相続のタイミングによって評価が変わっていくことを覚えておくことをお勧めします。
また、令和8年度税制改正大綱に記載がなかったため、ここまで割愛してきましたが、貸付用不動産で小規模宅地等の特例や貸家建付地評価・貸家評価が適用できるかは注目していきたいポイントです。
小規模宅地等の特例は3年以上貸付を行うことが要件になりますが、土地の評価を50%減できる特例なので、土地評価額が高い場合は大幅な相続税対策につながります。
貸家建付地評価・貸家評価は貸付用土地を約20%評価減、家屋を70%評価減できるルールなので、今回の税制改正で時価×80%での評価に変わっても、貸家建付地評価・貸家評価を適用できれば、相続税対策効果は得られるといえるかもしれません。
まだ令和8年度税制改正大綱が公表されたばかりで様子見の状況のため、新たな情報が出次第追記していきたいと思います。
さいたま幸せ相続相談センターでは、初回無料の相続税申告相談を随時承っておりますので、ご興味をお持ちいただけましたら、まずは一度お気軽にご相談ください。





