皆様こんにちは。さいたま幸せ相続相談センターの白石です。お正月が終わり、日常生活のリズムに慣れたころかと存じますが、いかがお過ごしでしょうか。

前回は、親族内承継時に必要な手続き等についてご案内しましたが、今回はそもそも「事業承継自体をどこに相談すれば良いか?」についてご紹介します。

さいたま市は人口130万人を超える中核都市であり、企業の99%以上を中小企業が占めます。特に卸売業と小売業は合わせて全体の1/4を占めるほど盛んで、「商業のまち」としての特色が強いですが、その他製造や建設、飲食、サービス業など多様な産業が地域経済を支えています。

しかしながら経営者の高齢化が進み、埼玉県の後継者不在率は55.8%と全国平均(52.1%)よりも高いです。
参照: 株式会社 帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2024年)

いざ「承継」となると相談先が分からず、先を見据えた準備ができない経営者が多い現状があります。

このコラムでは、さいたま市の中小企業がどこに相談すればよいかを、次の4つのカテゴリーに分けて詳しく解説します。4つの相談先の「得意分野」を理解し、自社の状況に合わせたベストな布陣を組むことが成功への第一歩です。

4つの相談先とそれぞれの強みについて

相談先が豊富だからこそ、どこに相談すれば良いか分からない経営者が多いと見受けられます。最適な相談先は、承継方法や事業内外を取巻く環境により様々ですので、ご自身に合った相談先を検討しましょう。


公的機関(埼玉県事業承継・引継支援センター等)

各都道府県に設置されている公的窓口にて、専門家から、事業承継の計画策定やM&Aのマッチングに関するアドバイスを受けることができます。地域活性化に貢献する中立的・公平的な立場であることや、原則相談料は無料で無理な勧誘がないことから、安心して相談することができます。

一方で、直接的な売買仲介等は行っていないため、最適な担当先を紹介された後は、機関によるサポートが終了してしまうことがあります。「初めの相談先」としてご認識いただければと存じます。


金融機関(都市銀行・地方銀行・信用金庫など)

既に特定の金融機関と、関係性を構築されている経営者の方も多いのではないでしょうか。これまでの経営情報や資金繰りなどを把握しているからこそ、的確な助言を受けられます。

金融機関に依頼する最大のメリットは、やはり融資が受けられることです。事業承継に必要な資金を調達しやすくなる点や、膨大な情報量、ノウハウを持っている点で強力なサポートが期待できます。

一方で、専門的な分野(法務・税務など)への対応は、外部の士業などにゆだねられていたり、M&Aの売却先を銀行のネットワークから選ぶ必要があったりと、一定の制限がかかる場合があります。相談者にとって不利な条件で話が進んでしまわないよう、留意して話を進めていく必要があります。


 士業(税理士・中小企業診断士・弁護士など)

事業承継を行う上で、士業による財務・経営・法務などの対応サポートは欠かせません。経営者の方ご自身が税務申告をしたり、契約書を作成したりすること自体は合法であるものの、知識不足等を原因とした不手際により、結果的に周囲に損害を与えてしまったり、逆に損害を被ったりしてしまうリスクがあります

では、それぞれの専門家の役割について見ていきましょう。

税理士

資金や節税面からサポートする税理士は、事業承継における専門家として最重要と言っても良いでしょう。
どの承継方法(親族内承継、従業員承継、M&A)を取る場合でも、事業承継では株式の承継(株式譲渡、株式の相続など)の方法が多いと存じます。自社株式の価値算定や、株式の譲渡・相続した際の税額計算などを行う必要があり、その際に支えになるのは、まさに税理士です。
税理士が行うサポート例として、下記の内容があります。

  • 税務上の株式評価
    親族内承継の場合は、相続・贈与税額の負担をできるだけ軽減する形で、株価算定することを目指します。これに対して、M&Aの場合には、売主サイドは、売主側に課税される税負担にも留意しつつ、企業の価値をきちんと反映した額で売却できるように目指します。

  • 事業用資産の算定
    株価同様、引き上げ・引き下げのいずれかを目指します。資産価値が株式価値に影響するため、節税対策のための資産運用や、のれん代加算などについての対策を考えます。

  • 事業承継税制の活用
    先代が後継者に対して、事業資産や株式を承継した際に発生する相続税や贈与税の納税を、猶予または免除をする制度です。当制度については別コラムにて触れていますので、併せてご確認ください。

事業承継については、こちらのコラムもご参照ください。

中小企業診断士

事業計画作成や後継者育成、経営改善のコンサルティングなど、事業承継サポートを幅広く包括的に行います。独占業務はありませんが、金融機関や他の士業との橋渡しを行い、ハブ的な役割を担います。

中小企業診断士が行うサポート例として、下記の内容があります。

  • 後継者の選定と育成
    従業員承継時には、先代と後継者候補を引き合わせ、「先代の価値観を尊重できるか?」「中小企業の現場と馴染めるかどうか?」など診断士の目線で判断します。後継者決定後は、企業に定着できるよう人材育成支援をします。

    ※中小企業診断士は、人材紹介業者ではないため、別途資格がない限り単独で紹介手数料を受取ることはできません。許認可を得た人材紹介会社に発注書を提出し、先代の希望に見合った人材紹介を依頼します。

  • 総合的なコーディネート
    企業の問題点や改善点を抽出し、問題解決に向けたコンサルティングを行います。事業戦略の再設計や、中長期的な事業計画の作成などを通し、企業の発展のためのプロセスを構築します。

  • 各分野の専門家との連携
    課題解決が必要な分野が明確になると、顧問として適切な専門家(税理士・司法書士・弁護士など)を選定します。専門家と企業の連携を支援し、全体を取りまとめるチームのリーダー的役割を担います。

弁護士

事業承継を行う過程においては、いくつもの意思決定や交渉、契約等が発生するため、トラブルや紛争が起こる可能性は十分あります。リスク回避のための対策や予防をすることで、後継者が安心して経営に専念できるよう、環境づくりサポートをします。

弁護士が行うサポート例として、下記の内容があります。

  • 契約書作成、既存契約書の確認
    会社売却後や後継者への引継完了後に契約書の不備が見つかると、法的紛争に発展してしまう可能性があります。そのため、株式譲渡契約書や秘密保持契約書、事業譲渡契約書など法律文書を作成すると同時に、既存の社内書類に不備がないか精査し、未然に紛争予防に努めます。

  • 法務調査(DD)への対応
    買い手側(M&A)や後継者から法務調査をされる際、社内の機密事項を開示しますが、相手側からの質問に対して、売り手側が不利にならない回答を予め準備します。また、社内に欠点(隠れた負債や適切でない労務管理など)が残っていないか調査し、見つかった場合は事前に修正しておきます。

  • 交渉や訴訟の代理対応
    法律問題に関する交渉や、訴訟の代理は弁護士の独占業務です。無資格者が行うと、非弁行為にあたる可能性があります。コンサルタントや他の士業では受けられませんので、顧問弁護士をつけておくと安心です。


コンサルティング会社(経営コンサル・M&A)

コンサルティング会社の中には、クロージングまでのスピードを重視している業者や、売却を最終目標としている業者も多いです。担当先を決める際は、「承継・売却後も、先代のその後の資産運用や節税対策へのフォローなどを続けてくれるかどうか」「ワンストップでサービスを提供してくれる業者かどうか」を見極めることが重要です。

一方で、コンサルティング会社は、数の買い手ネットワークを持っており、複数の買い手候補を競わせることができます。また、投資ファンドや上場会社、士業との繋がりがあったり、過去の実績から豊富なノウハウを持っていたりする点が強みです。

後継者が見つからず、事業を手放す場合はコンサルティング会社に依頼すると良いですが、親族間承継や従業員承継を希望する場合は、まずは税理士や公的機関に相談した方が良いでしょう。

パターン別の最適な相談先の選び方

前項では、相談先別の特徴や、得意分野についてご説明しました。本項では、承継方法別に、相談に適した機関の組み合わせをご紹介いたします。

※あくまでも一つの目安としての組み合わせですので、必ずしも最適解であるとは限りません。各相談内容に応じて変わります。予めご了承ください。


親族内承継をしたい場合

〇優先すべき相談機関→税理士+公的機関

理由:親族内承継では、贈与税や相続税の問題が切り離せません。税負担軽減のための対策や、適応される優遇制度については税理士に相談されると良いでしょう。

しかし、「いきなり士業に相談するのはハードルが高いし、気が引ける」と思われる方は、まずは公的機関窓口に無料相談に行ってみることをお勧めします。事業承継税制や、事業承継を行うプロセスなど、基本事項について聞いてみましょう。


従業員承継をしたい場合

〇優先すべき相談機関→税理士+金融機関

理由:従業員が後継者になる場合、6割以上の株式を承継することになりますが、自社株を取得する資金力がないことが多いです。金融機関からの融資サポートが必要となります。

株式取得が大きな課題になる上で、最適な取得方法(買い取り・譲受など)も考える必要があるため、税理士の助言は受けたほうが良いでしょう。


M&A(第三者承継)をしたい場合

〇優先すべき相談機関→コンサルティング会社+金融機関+弁護士

理由:前章でお話しした通り、売却をしたい場合は、コンサルティング会社に依頼することで、幅広く買い手候補と交渉できるでしょう。また、売却時の企業価値(株式価値)向上に向けた対策サポートにも手厚いです。

長年、地方銀行と取引をしている中小企業の経営者が多数だと思われますが、後継者不在で困っている時こそ、地方銀行の強いネットワークで、買い手候補を探すこともできます。また、売却時に有利となるリファイナンスや、法務調査費用の面での資金サポートを受けられる場合もあります。

また、第三者承継(M&A)では、会社内部のことを詳しく知らない者に承継することが多いので、「承継後に帳簿にない債務が見つかった」「決算書の内容に不正があった」などのトラブルから、法的紛争に発展するリスクもあります。トラブル防止のため、弁護士に契約書の作成や、既存の社内書類の内容確認依頼をすると安心です。


親族間で揉めた場合

〇優先すべき相談機関→弁護士+(コンサルティング会社+中小企業診断士+税理士)

理由:既にトラブルが発生している場合は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。意見が対立する親族との間に、他の士業やコンサルタントが介入できない場合があるからです。

弁護士が代理で親族とやり取りを行い、法的根拠や判例に基づいた解決策を提示することで、感情的になっている相手を制止します。「法律の専門家が言っているから」納得してもらえる内容もあるでしょう。

弁護士相談にハードルの高さを感じてしまう場合は、トラブル対応や、相続・事業承継に関する全てのお悩み相談窓口となっている民間コンサル会社に行ってみることも一つの方法です。(中小企業診断士も窓口となっていることが多いです。)相談内容から問題分野をあぶり出し、必要に応じて弁護士や税理士、司法書士などの士業を紹介できますので、現状を正直に伝えてみると良いでしょう。

また、親族間承継では株式承継や相続問題は避けて通れませんので、まずは税理士に相談し、内容によっては弁護士を紹介してもらうことも良いでしょう。


よく分からない場合は、とりあえず民間コンサル会社に相談

「どこに相談したらよいか分からない」「いきなり士業事務所に行くのが怖い」と思われる方は、一旦民間のコンサル会社にお問い合わせください。


各専門家へのハブ機能

解決したい内容(相続・企業価値算定・法務調査対策など)によって、解決すべき分野の専門家をご紹介します。また、紹介するだけではなく、やり取りや調整サポートも行います。


ワンストップでのサービスを行います

後継者への承継・売却プランの設計から、完了後のサポートまではもちろん、その後の派生サービスまでワンストップで行います

サービス例

  • 事業承継完了後の資産運用と節税の両立についてアドバイス

  • 過去の税務・法務処理に関する問い合わせへの対応

  • 個人保証や担保提供の解除確認

  • 買い手や後継者からの法的措置に関する対応

書面上の手続き完了後は、関係を終了してしまう業者も少なくありません。先代の「その後」についても支援してくれるコンサルタントを見つけられるかどうかが大切です。

結局最後は・・・組織ではなく「人」

これまで散々選ぶべき機関についてお話してきましたが、最終は組織ではなくどのような担当者と巡り合えるかどうかが、事業承継成功の鍵となります。

組織のブランド名だけで選ぶと、経験が浅い担当者から、教科書通りの回答しか得られない場合もありますが、大手組織だからこそ、手腕や人徳に優れた担当者と巡り合えることもあります。

となると、「結局どうすれば良いんだ」「運じゃないか」と思われてしまいますが、偶然を必然と変えるのはたった一つです。

納得がいくまで様々な担当者候補と直接会って話をし、「知識だけではなく、あなたの孤独な感情面にも寄り添い、親族間の感情のもつれも解決しようとしてくれる、誠意ある担当者を見つけ出す」ことです。口コミを鵜吞みにしたり、紹介だけを頼りにしたりするのではなく、少し時間や手間をかけてでも、いろいろなところに足を運んでみて、ご自身と合う担当者に相談してみてください。

当センターでは、個人の相続だけではなく、事業承継に強いコンサルタントから税理士や弁護士といったメンバーがワンストップでサポート可能な体制を整えています。

埼玉県・さいたま市の事業承継で少しでもお困りのことがありましたらさいたま幸せ相続相談センターまで気軽にお問い合わせください。

事業承継については、こちらのコラムもご参照ください。

執筆:白石智恵子
監修:CLOVER法律事務所 中島一郎 弁護士