ご相続が発生してから、ご相続人の方々が心配されることの一つに「相続税」があります。
実際に相続税がかかる人は全体の10%程度ではありますが、相続税の申告の手続きや納付については相続人の方々の頭を悩ませるものです。
相続税の申告手続きについて「わざわざ専門家に依頼するのも手間だから、自分でやってみようかな?」「専門家に依頼すると報酬が高くなりそう」とお考えになる方もいらっしゃるかと思います。
相続人の方がご自身で相続税申告書を作成し、手続きをすること自体は可能です。しかし、相続税の申告は大変複雑であり、節税や税務調査のリスクを考えると、安易に「自分でできる」とは言い切れません。
当センターでは、相続専門の税理士とタッグを組み皆様のサポートをさせて頂いておりますが、ご自身で手続きをするか、相続税専門の税理士に申告手続きを相談するかのどちらを選択するか悩まれる方もいらっしゃいます。
本コラムでは、ご自身で申告する際のリスクと、税理士に依頼するメリットについて解説します。ご自身のご状況によって、自分に合った手続きの方法を選択していただければと思います。

税務署で作成方法を教わることはできる?
ご自身で申告手続きをしようと考えた場合、身近な相談場所として税務署があります。
税務署では、申告書の書き方や手続きの方法については親切に教えてくれます。
しかし、以下の2点については、税務署は助言やサポートをしてくれませんので、注意が必要です。
①節税策は教えてくれない
相続税の申告には、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」といった、税額を大きく減らせる特例があります。
その他にも、特に不動産などについては、様々な評価方法を用いることで適切に評価額を減らし節税できるポイントがあります。
しかし、税務署はあくまでも公平な機関であることから、納税者が最大限に節税できるアドバイスをする立場にはありません。
その為、税務署に行っても申告書の記載方法などは教えてくれますが、具体的な節税策などは教えてもらえません。
②間違えて多く納税していた!? 相続税の過払いのリスク
もし、計算を間違えて相続税を多く支払っていた場合、税務署からお知らせなどあるのでしょうか?
答えはNOです。
単純な計算ミスはもちろんのこと誤った評価をしてしまった場合も教えてくれません。また、申告者にとって有利に働く特例があったり、本当は適切に評価を減らすことができたとしても、税務署は教えてくれません。ある程度ご自身で相続税の知識を身に付けることが求められます。
結果的に、使える特例を利用できたらもっと相続税の負担が軽減されていたといったように本来納めるべき税額よりも多くの相続税を気が付かずに納付してしまっていることになってしまわないようしっかりと確認をする必要があります。
相続税申告については、こちらのコラムもご参照ください。
不動産の評価はとっても複雑
ご相続された財産に不動産がある場合には、特に慎重になるべきです。
不動産の評価は基本的には、不動産の所在地の道路に付された「路線価」もしくは「倍率方式」に基づき評価することが定められています。
計算方法としてよく知られていますが、「路線価」に専有面積をかけて評価額を算出することができます。しかし、実は不動産の評価はそれほど単純なものではありません。
① 適切に評価をすれば不動産評価額を抑えることができる
実際には不動産評価の「減額要因」を考慮することで評価額を減額することが可能です。
例えば、相続した土地の形状が不整形地であった場合には、特別な計算式を用いて評価減をすることができます。道路に対する間口が狭い土地や奥行きがある土地なども同様に評価を減額することが可能です。
上記で紹介した以外にも、不動産の特徴に応じて複数の評価方法があります。 これらの減額要因を適切に用いることで、不動産評価額を適切に下げることができるかが、相続専門の税理士の腕の見せ所といっても過言ではありません。
②分譲マンション・タワーマンションに新ルールが設けられた
昨今は分譲マンションやいわゆるタワーマンションをご相続される方も多くいらっしゃいます。マンションについては、より複雑な評価方法が求められており難易度が高くなると言えます。2024年に評価方法の改正があり、新たな補正が必要となりました。
2024年の改正は、これまでは市場価格と相続税評価額に乖離があったことを問題視され新たに設置された新ルールとなります。
その為、この新ルールに則り適切に評価がなされずに申告した評価額が市場価格と極端に低いと判断された場合、税務署から評価根拠を問われるというリスクもあります。
③相続専門税理士をおすすめする理由
同じ税理士であっても、法人税務などを主に行っている税理士の場合、相続税については慣れていない方も実は多くいらっしゃいます。
相続税の特に不動産の評価については、高い専門性が求められる領域ですので不動産が複数ある方や不動産の評価額が高くなりそうな方は、相続専門の税理士に相談されることをお勧めしています。
追徴課税・税務調査のリスク
ご自身で相続税の申告を行った場合、その申告の内容についての責任はすべてご自身で負うこととなります。たとえ、税務署で記載方法を教えてもらいながら申告したとしても税務署は責任を負いません。
本来の納税額より申告した額が少なかった場合には不足分を徴収されてしまうリスクがあります。万が一、誤って財産の申告に漏れがあったり、計算ミス等があった場合には、過少申告加算税や延滞税が課せられてしまうため注意が必要です。
また悪質とみなされた場合には、重加算税という重いペナルティが課せられてしまいます。
多く支払ってしまった場合には税務署からお知らせはないのですが、少なかった場合にはペナルティがあるという、なんとも厳しいものです。
①税務調査のリスク
税務調査と言われる、税務署の職員が直接申告内容について調査を実施することがあります。
国税庁の統計によると、税務調査の実施率は約6%です。 また税務調査を実施されると約8割以上の方が、何らかの不備を指摘され追徴課税のペナルティが発生しています。
意図的ではない申告漏れやミスであっても、追徴課税は免れませんので注意が必要です。また、財産の意図的な隠蔽で悪質な不正であると判断されると35%または40%のペナルティを課せられることもあり、大きな負担となります。
②こんな財産が申告対象になるとは・・・
申告漏れがないようにしっかり申告をしたつもりでも、本人も気づかない思わぬ落とし穴があるのが相続税です。相続税という納税者が資産を管理していた本人ではないという特殊な税であることがひとつの要因と言えます。
本来税金はご本人の所得や収入などに対して課税されるため、おおむね本人が把握していることに対して課税されます。
しかしながら、相続税の納税者は本人ではなく相続人となります。その為、多くの相続人の方はご本人の相続財産の調査から始めることが一般的です。相続財産の全容を把握すること自体が素人では難しいものです。
亡くなる直前に行われた現金の移動や相続人に贈与をしていたことを把握していなかったといった、本来は相続財産に含めなくてはならない財産を見逃していたといったことは多々発生するケースです。
名義預金(家族名義の預金口座だが、実質は亡くなられた方が管理していた財産)なども税務調査などで指摘されやすい財産と言えます。
税務署は、銀行など金融機関への独自照会を行う権限を持っており、申告書に記載されていない口座情報なども把握することができます。
こうした権限をもとに税務署は調査を行い、家族全員の過去の収入や入出金の履歴を照会し様々な観点で厳しくチェックを行います。
追徴課税と聞くと、意図的な不正があった場合に追徴課税が発生する印象をお持ちの方もいらっしゃると思います。税務調査で発覚するのは、意図的なものではなく、単純な見落としや知らなかったということも多いのが実情です。
相続税の考え方は複雑ですので、勝手に相続税の対象にはならないと判断せずに税理士にご相談いただくことをおすすめします。
また、経験豊富な相続税専門の税理士であれば、これまでの実績から上記のような見落としがちの遺産のパターンなどもしっかり経験上インプットされています。
追加で調査にならないよう、できる限りの調査を税務署に申告する前に税理士で行うことができるので、その点でもご安心いただけるかと思います。
③税務調査の対応
実際に税務署から税務調査が入ることになった場合、税理士に相談していた場合、依頼者のために重要な役割を果たしてくれます。ここでも調査経験の豊富な税理士を見つけることが重要になります。
税務署とのやりとりについて、税理士は納税者に代わり窓口となって対応を行ってくれます。事前の調整や調査日当日の質疑、調査後の交渉などを行います。
税務署とのやりとりなど非常に神経を使いますので、税理士が対応をしてくれることは大きな安心感になります。調査官からの質疑や指摘についても、不用意な発言をしないよう税理士に対応を任せることができると安心です。
税理士が専門知識を用いて、指摘の妥当性を税理士の視点で適切判断し、不当な指摘や異議が生じる場合には税務署へ対し主張を行うこともできます。
賢い選択とは?
ここまでご紹介した通り、相続税申告に関してはとても複雑かつ慎重に行う必要のあるもので、当センターでも相続専門の税理士にて申告を行うことを推奨しております。
税理士への報酬は発生しますが、手続きの負担を軽減するだけではなく、減税となったり、将来のペナルティを回避できるといった安心感と比較していただくとよいと思います。
もし仮にご自身で申告するのであれば、相続財産に不動産がない方や、現金が主で財産が単純な方などであれば比較的リスクが小さく対応できるケースもあるかと思います。
ご自身のご資産の状況などを考慮して賢い選択をしていただければと思います。
そして、税理士への報酬を払うのであれば、相続の申告経験も豊富な相続専門税理士にご相談いただくことをお勧めします。
さいたま幸せ相続相談センターでは、初回無料の相続税申告相談を随時承っておりますので、ご興味をお持ちいただけましたら、まずは一度お気軽にご相談ください。
執筆:相続コンサルタント 馬渕かなみ
監修:税理士法人ブライト相続 戸﨑貴之 税理士





