今回は不動産鑑定士らしく、土地の価格についてお話しいたします。
昨年度の税制改正において「地積規模の大きな宅地の評価」という制度が新たに導入されました。「地積規模の大きな宅地の評価」とは一定の要件を満たす規模の大きな土地について、補正率を用いてその評価額を下げるというものです。土地の評価額が下がれば、それに基づいて算出される相続税も下がるので嬉しい制度といえます。
では、なぜ土地の規模が大きくなると、その評価額が下がるのでしょうか。
それは、一般に土地は規模が大きくなると単価が安くなるためとされています。
どういうことかというと
例えば、1㎡当たり10万円の土地があったとしましょう。その土地が100㎡であれば総額1,000万円となり、一般的な戸建住宅の用地として、この土地を購入しようとする需要者は相当数存在するといえるでしょう。しかし、同じ土地がもし1,000㎡あったとすると、総額は1億円と高額所得者層でなければ購入することは難しい価格となり、需要者が限定されてしまいます。そのため通常より安めの価格に設定して、お得感を持たせる必要が生じてきます。
また、このような大規模な土地は一般消費者の他に不動産業者等が需要者となってくるのですが、不動産業者等は土地を購入したのち、適正な規模に分割するなどしたうえ、利益を乗せて売却することになるので、やはり割安な仕入れ値として購入することとなります。
このように、規模の大きな土地については一般的な価格水準では売却が難しいことから、割安な価格水準になることが多いのです。そして、このような市場原理を反映し、相続税の評価上も「地積規模の大きな宅地の評価」として評価額を下げています。ただし、一方で容積率が大きいビル、マンション、ホテル等の用地になるような土地は、規模が大きい方が高くなる傾向があり、「地積規模の大きな宅地の評価」は適用することができませんので注意が必要です。
さいたま市内で500㎡以上の土地をお持ちの方は、相続税の申告にあたって「地積規模の大きな宅地の評価」の特例を適用することができる可能性があります。適用の可否については、一定の要件に該当しているか判別する必要があり、また、「地積規模の大きな宅地の評価」の特例を適用することができない場合でも、他の特例等により相続税の評価額を下げることができる場合がありますので、相続税の申告にあたっては是非とも相続税に強い税理士に相談することをお勧めいたします。
地積規模の大きな宅地の評価について
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4609.htm