令和7年(2025年)3月18日、国土交通省は「令和7年地価公示」を発表しました。
全国的な地価の動向を見ると、4年連続の上昇という結果となっています。全用途平均・住宅地・商業地のいずれも上昇しているため、上昇幅が拡大しました。外国人観光客が多い観光地など上昇幅が大きいエリアもありますが、令和6年能登半島地震の影響で大きく下落しているエリアもあります。
本記事では令和7年最新版の地価公示を基に、地価公示の概要や相続への影響を徹底解説します。
※参照: 国土交通省 令和7年地価公示

地価公示とは
地価公示とは、国土交通省が毎年1月1日時点の全国の土地価格を調査し、3月下旬に公表するものです。一般の土地取引の指標となるほか、公共用地の取得価格の算定基準や、固定資産税評価、そして相続税評価額の基準などにも活用されます。
この章では地価公示の概要を詳しく解説します。
地価公示の概要
日本国内の土地評価においてもっとも広く活用されている「地価公示」は、地価公示法に基づいて毎年3月下旬に国土交通省が公表しているものです。
地価公示は全国26,000カ所にも上る標準地を、毎年1月1日時点を基準日に不動産鑑定士などが2名以上で鑑定評価を行い、評価を基に正常な価格を土地鑑定委員会が判定した上で公表されています。
地価公示は一般的な土地取引の価格の指標となっているほか、公共事業用地の取得価格算定の規準、相続税評価額の算定にも利用されており土地の適正な価格を知るために欠かせない存在です。
※参照: 国土交通省 地価公示
令和7年最新版の地価公示を徹底解説
地価公示はすでに解説のとおり毎年公表されているものです。毎年変動しているため、不動産市場や相続にも大きな影響を与えます。そこで、この章では令和7年最新版の地価公示について、徹底解説します。
全体的に上昇傾向が続く
令和7年の地価公示をまとめると、全国的に地価が上昇傾向にあります。前年比2.7%の上昇です。
これは、新型コロナウィルスの打撃を受けていた日本経済がゆるやかに回復していること、都市部への人口集中で大都市圏を中心に需要が拡大を続けていること、そして低金利環境などが複合的に影響していると考えられます。
特に、利便性の高い住宅地や商業地は需要が堅調であり、地価を押し上げる要因となっています。加えて、海外観光客の増加によってインバウンド需要が継続しており、人気観光地にも上昇傾向が継続しています。
ただし、後述するように、地域や用途によって上昇幅には大きな差が見られます。
三大都市圏の動向
東京圏、大阪圏、名古屋圏の「三大都市圏」では、昨年同様に地価の上昇基調が続いています。特に都心部や駅周辺など、利便性の高いエリアでは需要が強く、高い上昇率を示しています。子育て支援制度が充実している都市は特に人気が高い傾向です。
東洋経済によると、本年度日本で最も高い公示地価首位は東京都中央区銀座4丁目の商業地で、驚くことに1平方メートル当たりの地価は6050万円に上ります。都内は23区内も堅調な伸び率です。
※参照:東洋経済オンライン編集部 【2025年版】全国「地価」ランキングTOP505地点
地方四市の動向
札幌市・仙台市・広島市・福岡市の地方四市においても、引き続き地価の上昇が見られます。これらの都市は、地方経済の中心地としての役割を担っており、住宅地、商業地ともに堅調な伸び率です。
ただし、個別のエリアで見ると、大都市圏の周囲では人口減少やテレワークの縮小によって伸び率は鈍化しています。
その他押さえておきたいポイント
今回の地価公示では、上昇率が特に大きかったエリアと、下落率が大きかったエリアには以下の傾向が見られます。
- 上昇率が高かったエリア
変動率高い上位のエリアには、長野県の有名観光地「白馬村」などインバウンド需要があるエリアが挙げられます。外国人観光客の増加が著しい観光地や、再開発が進むエリアなどで、地価が大幅に上昇しています。また、北海道千歳市は大手半導体メーカーの進出が決定しており、上昇率が高くなっています。
- 下落率が高かったエリア
令和6年の能登半島地震の被害が大きかった地域では、地価が大きく下落しています。
※参照:国土交通省 【令和7年3月19日】令和7年地価公示を公表しました
相続に地価公示はどのように影響する?
地価公示は相続にも大きな影響を及ぼすことはご存じでしょうか。この章では相続税への影響を中心に詳しく解説します。
相続税への影響
相続財産に「土地」が含まれる場合、土地の評価額は納税額を大きく左右します。相続税における土地の評価額は、基本的に「相続税路線価」と呼ばれる価格で計算されます。路線価は、国土交通省が毎年1月1日時点の全国の土地価格を調査し、7月に公表されるもので地価公示とは別のものです。
しかし、相続税路線価は地価公示の価格の「80%」を目安に設定されており、まったく関連しないものではありません。
地価公示が上昇すれば路線価も上昇し、相続税の評価額が高くなる可能性があります。
逆に、地価公示が下落すれば、路線価も下がり、相続税の評価額が低くなる可能性があります。
なお、地価公示の公表後に自然災害などの影響で、土地の価値が大幅に下落した場合は相続税路線価の減額補正が行われています。
相続の生前対策への影響
地価公示は相続の生前対策にも影響します。令和7年度の地価公示では地価の上昇傾向が前年同様に続いていることから、来年以降も引き続き伸びることも予想されます。
地価公示が高くなれば、将来的な相続税負担の増加も高くなるおそれがあります。そのため、相続税対策を進めたい場合は、早めの生前対策が重要になります。
例えば、生前贈与を活用して早めに財産を移転する、相続税評価額が高くなる可能性がある土地を賃貸化し、収益をあげられる資産にすることもおすすめです。
納税額が気になる場合は早めにシミュレーションを行い、生命保険を活用して納税資金を準備するなどの対策も考えられます。
地価の動向を注視し、適切なタイミングで専門家に相談しながら、有効な生前対策を講じることが、将来の相続税負担を軽減する上で不可欠です。
令和7年度は埼玉県内の相続税は高くなる?

令和7年度の地価公示で、埼玉県の公示価格はどのような傾向だったでしょうか。
埼玉県発表の令和7年埼玉県における地価公示結果の概要を見ると、県内は住宅地や商業地、工業地のいずれも堅調に上昇を維持しています。特に商業地や工業地は前年よりも高い上昇率です。
相続税路線価は毎年見直されるため、来年以降の相続税路線価も上がることになります。
※参照:国土交通省 令和7年 地価公示結果の概要
相続における土地の評価の注意点
相続時の土地の評価は、地価公示以外の要素にも左右されるため注意が必要です。そこで相続における土地の評価時の注意点を簡潔に紹介します。
土地の評価は変動するため注意
地価公示や相続税路線価は変動するものであり、相続税のシミュレーションを行ったとしても、その後変動することも知っておく必要があります。将来的に上昇が続く可能性もあれば、人口やインバウンドの減少とともに下落する可能性もあります。
売却・土地の承継のいずれにも土地の評価は重要な要素となるため、変動には常に関心を持っておくことが大切です。
相続時の土地の評価方法は複雑
相続税における土地の評価方法は、路線価方式や倍率方式など複数の方式があり、土地の形状や利用状況、面積などにも左右されるため大変複雑です。
また、小規模宅地の特例など税負担を軽減するための特例も存在します。正確な土地の評価額を把握し、有利な特例を適用するためには、税務の専門家である税理士の知識と経験が不可欠です。
相続税に与える影響が大きい
相続財産の中で土地は一般的に大きな割合を占めるため、土地の評価額が相続税額に与える影響は非常に大きくなります。
土地の評価額が数百万円、数千万円単位で変動することも珍しくありません。土地の評価を適切に行い、必要に応じて生前から有効な相続税対策を講じることは、相続税の負担を大きく左右する重要なポイントとなります。
まとめ
この記事では令和7年度の地価公示について、最新版の数字をもとに解説を行いました。都市部では上昇が続いており、埼玉県内にも同様の傾向が見られます。ただし、土地の価格は常に変動しているため、定期的に動向を注視されることがおすすめです。
さいたま幸せ相続相談センターでは、土地を含む相続に関するお悩みにも対応しています。生前からの相続税対策や、相続税申告に関するご相談も可能です。まずはお気軽にお尋ねください。
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執筆:岩田いく実
監修:税理士法人ブライト相続 戸﨑貴之 税理士